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Fafs F. Sashimi
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リパライン語に取り入れられたユーゴック語たち

突然だが、あなたは私が属する「悠里」の語源を知っているだろうか?

「悠里」は元々、有理と書かれていたものが変換の利便性に従って、「悠里」になった経緯がある。それでは、元の表記の「有理」とは何なのだろうか。
答えは簡単で、それぞれユーゴック語(有語)とリパライン語(理語)の略である。悠里の創設がそもそもユーゴック語作者のKPHT氏とリパライン語作者の私の創作協力から始まったことから、この名前が付いた。
故に、ユーゴック語の存在は悠里的には非常に重要で、リパライン語にも大きな影響を与えている。今回はそんなユーゴック語の存在感をリパライン語を通して見ていきたい。

ユーゴック語とは?

ユーゴック語は、KPHT氏が中心に制作している悠里世界の言語の一つである。惑星及びウェルフィセルであるカラムディアのハタ王国に居住するユーゲ人が話す。ユエスレオネ連邦のユーゲ系移民も母語として話すことが多く、リパライン語とは相互に影響を与え合う関係になっている。
異世界の関係にあるファイクレオネとの公式の接触は、ユエスレオネ革命以降だが、それ以前に中世頃にデュインに侵攻したXelkenがハタ王国の反王政系氏族であるハフリスンターリブと協力し、ユーゲ人を拉致して古典リパライン語を強制した経緯がある。当時ウェールフープ研究では最先端を行っていたXelkenが使うユーゴック語の隠語は流行に乗って拡散し、現代標準リパライン語にまで定着するような借用語を形成している。
ここらへんの話は、詳しくは「リパライン語と言語行政と文化」の3.2.1, 4.4., 5.3.3.1などを読むと良いかもしれない。

リパライン語に取り込まれたユーゴック語

PDIC理日辞書にあるユーゴック語由来単語は386語根である。これは全体8277語根の約4.7%を占める。2018年の語源統計によると、LIY(リパラオネ語根からの派生語)とLIE(古典リパライン語)が過半数を超えている。これ以下がリパラオネ直系ではない借用語の比率だが、最も多いのはやはりユーゴック語だ。この統計から4年経過して、単語も増えたので状況は変わっているだろうが印象的にはヴェフィス語とユーゴック語の借用数が多いのは間違いないだろう。ヴェフィス語も一応はリパラオネ直系の言語であるため、これも除けばユーゴック語がリパライン語の純粋な(?)借用語の上位一位を取っているのは間違いない。

それでは早速、ユーゴック語由来の単語を一部ご紹介しよう。

単語(理語) 原語(有語) 解説
cam, alu sam, aru "cam" は多神教の神(複数居る神)を指し、"alu" は一神教の神(唯一神)を指す。リパライン語の固有語では、「神」はどちらでも "tonir" である。リパラオネ教が一神教であるのに何故、区別してこなかったのかというとリパラオネ人は古代多神教を信仰していたからである。また、リパラオネ語族では厳密な「複数」がなく、複数標識と呼ばれている "-ss" も厳密には多数性を表しているだけであるため、もしかしたらリパラオネ人自身が単数・複数に大した興味がなかっただけかもしれない。とにかく、ユーゴック語の接触時にこれを分ける言い方をリパライン語は得ることになった。
adelbanes aderban 「自害する」を意味する語、原語にリパライン語の動詞化語尾 -es がついたもの。実は人民語運動の中でヴェフィス語由来の witma という語と入れ替わり、現代では古風の言い方とされる。借用語が古風とされる珍しい一例。
canishehonal sanisehonar 「連邦の犬」を意味する俗語、原語ではsanis「サニス」-eho「~をする」-nar「者」の意。ここでのサニスは連邦とハタ王国が締結したサニス条約のことを指す。即ち、連邦を盲信しているような人間のことを揶揄する暴言なのだが、連邦国民がユーゴック語でのこの言葉を隠語的に借用して定着したもの。
idhaltz izarta 「大虐殺」を意味する語、元はハタ王国の大都市イザルタを指すのだが、移民系が起こした虐殺事件の名前がそのまま大虐殺を示す単語になったもの。語の成立の感覚は、現世だと「ヴァンダリズム」が近いだろうか。なお、ユエスレオネ連邦とハタ王国が接触して以降もイザルタは王都たるネステルに並ぶ大都市であり、こっちのほうの地名はちゃんと idhalta と呼ぶ。
jarr yaar 「四日」を表す語、何故四日という中途半端な日に短い語が対応しているのかというと、これには暦が関わっている。詳細は省くが、ユーゲ人が用いる宗教暦・トイター暦では一週間に当たる単位の日数が四日ということになっている。ファイクレオネで主に用いられるピリフィアー歴では7日、リパラオネ人の伝統暦である修正理暦では5日(変動あり)なので、この語は特異的に受け取られたのだろう。
kuntoitaktei kuntoitaktei 「カラムディア出身の人々」を指す語、元々はトイター教の一派であり、更にそれを信仰する一氏族である「クントイタクテイ」を指す語なのだが、ファイクレオネが最初に接触したカラムディア人がユーゲ人であり、多くの信仰者を有するクントイタクテイの語は名字として何度も接する機会があった。このため、一般名詞化した「クントイタクテイ」はカラムディア人を広く指すようになったのだった。
fhistirl fistir 「ぴすてぃる」、この語にこれ以上の説明は必要ないだろう。

まとめ

リパライン語に借用されているユーゴック語は他にもあるが、今回はこんなところにしておこう。
「いせにほ」でも描かれた異世界と異世界の接触は、その昔から言語に大きな影響を与えてきた。しかも、それは現代標準リパライン語で借用語と意識されずに使われる単語があるほどに浸透している。
借用語として意識されないと言えば、私の継承語タミル語での経験が言える。日常的に使っていたஜன்னல்「窓」という単語は、調べてみれば実はポルトガル語由来だったのだ。固有語だと思っていた私はwiktionaryを見ながら、とても驚いたものだった。
リパライン語における「早期借用」と呼ばれるユーゴック語は、それに似たくらい話者の中に浸透して使われている。
時には、「いせにほ」に登場するリパライン語の語源言語に思いを馳せて辞書を引いてみるのも一興なのかもしれない。

Top comments (2)

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Atridott

面白そうな記事なので明日読みます

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Fafs F. Sashimi

ありがとうございます!