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しろすけ2号
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パニパニ - 誕生秘話 -

この記事は、語学・言語学・言語創作 Advent Calendar 2023 の10日目の記事です。


今回が初めての参加となります。

何について書こうかな、、と考えておりましたが、ちょうど良いお題を長らく書かずにサボっていたので、これについて書いていこうと思います。今回は少し長くなりそうです。


『パニパニ - 誕生秘話 - 』

〜 パニパニを産んだ言語たち 〜


目次

1. リサトプ語との出会い

2. パニパニを産んだ言語たち

        ・ラ・エラ語 (la’ela’n palula)

        ・ティドリア (tidriaalakia)

        ・カカルール (qaqaruur)

        ・マルタマ語 (Tapa u marutamun tu)

        ・各言語がパニパニに与えた影響

3. おわりに



1. リサトプ語との出会い

私がパニパニをつくる上で大切にしたのは、「可能な限り学習コストを低くする」ことでした。そしてパニパニをつくる前にも、実は似たような目的でいくつかの言語をつくっています。

この「可能な限り学習コストを低くする」という目標を持って言語をつくるようになったのは、「リサトプ語 (lisatopa)」と出会ってからでした。

「人工言語の歌ってなんかないんかな...?」と思いながらYoutube を見ていると、この曲に辿りつきました。リサトプ語の作者、LΛMPLIGHT さんの歌です。

私が人工言語を作り始めたのが2020年のはじめ、Twitter で活動を始めたのが 2022年の9月なので、私がまだまだ人工言語など知らない時代の歌ですね。Twitter で「リサトプ語」と検索すると、当時この界隈がリサトプ語で盛り上がったことが伺えます。(古参の方は懐かしい...?)

この記事を書くのにリサトプ語について調べていると、

  • リサトプ語のホームページが閉鎖されていること
  • 現存する資料はほとんどないこと
  • リパライン語に訳された文法書が存在すること

などがわかり、この言語がこの界隈で伝説となったことを知りました。
「伝説の言語」っていいですよね、かっこいい。
リパライン語訳の文法書もいつか読んでみたいです。

それでリサトプ語に触れたことがある方ならご存知だと思いますが、リサトプ語の文法は非常に単純につくられていて、習得が容易なんですよね。作者は大学での翻訳機の研究をきっかけにこの言語をつくったということで、たしかに規則的な語形変化が言語設計の基礎にあるリサトプ語は、翻訳の研究向けにつくられたと言われると納得できます。

リサトプ語の文法を話すと今回の本題から逸れますし、私も語れるほどリサトプ語について詳しくないので話せませんが、私はこの言語の簡潔さと合理性に感銘を受け、「自分もこんな言語をつくってみたいなぁ、、」と思うようになりました


2. パニパニを産んだ言語たち

前述のとおり、私はパニパニをつくる前にもいくつか同じような言語をつくっています。そしてこれらの言語の構想が、パニパニをつくる際の土台になったと思います。
今回はその中でもパニパニの制作に大きめな影響を与えた言語たちを紹介しようと思います。

1 ) ラ・エラ語  (la’ela’n palula)

制作開始日 : 2022年2月20日

ラ・エラ語は2022年の2月に作りはじめた言語です。友人に広める目的で設計しました。私にしては珍しくアポステリオリです。文法の概要を挙げると、

  • 名詞は -a, 動詞と助動詞は -i, 修飾詞は -e で終わる。(形容詞と副詞は区別せず「修飾詞」という品詞がある)

  • 代名詞

一人称 la  近称  lila
二人称 ya  中称  lola
三人称 ana  遠称  ala

複数は -’ela で表す。名詞も同様。

おおむね日本語に一致する。(主題標識はない)

主格 無標
対格 -'lon
属格 -'n
(日本語における) ニ格 -'nin
(日本語における) カラ格 -'lan
(日本語における) デ格 -'den

 

などなど

lila anima. 「これは動物です」
lila’ela anima. 「これらは動物です」

lila anime. 「これは活発です」
lila’ela anime. 「これらは活発です」

のように読むことができます。格の表し方などに若干不満も残りますが、今見てもなかなかかわいい言語だと感じます。


2 ) ティドリア  (tidriaalakia)

制作開始日 : 2022年10月1日

そしてティドリアです。ティドリアは2022年の10月1日に制作を始めた言語です。
ティドリアについては私のツイートを遡ればごろごろ出てくると思います。この言語は私がTwitter で人工言語界隈に入ったときに、てきとうに作り始めたものですね (いや、他のも大体てきとう)。

公開する予定は今のところないですが、人工言語の制作を始めた2020年から一貫して作り続けている言語があります。

(見た目はこんなの。現在Twitterのヘッダにしているのもこれで書かれたものです。)
Image description

 

あるときこの言語において、複数の単語間での語源の整合性がとれなくなりました。

そこで「ちゃんと語源が辿れるような言語をつくりたいなぁ…」と思うようになり、ティドリアの構想にもこの考えが反映されています。現在は制作を中止していますが (そういえば発表していなかった)、Migdal でも「ティドリア語を話そう」というシリーズで記事を書いていたりします。

ティドリアはダイアクリティカルマークをいっぱい使うので、これを改善したティドリア2の制作を始めるなどとつぶやいていましたが、ティドリア2より先にパニパニができてしまいましたね笑


3 ) カカルール  (qaqaruur)

制作開始日 : 2023年1月21日

カカルールは、2023年1月につくりはじめた言語です。この言語は「コンピューターに擬似的な感情を与える」ためにつくりました。まあ、この当時も今もAI をつくれるほどのプログラミングの腕はないので、半分はSF な気持ちでつくったものですが。

感情はホルモンによって左右されるため、「単語ごとにホルモンの分泌量を定義して文単位で計算させたら、チャットボットで感情の挙動再現できるんじゃね...!?」という発想から制作しました。実際の会話では話題や文脈によって感情が変わってくるところもあるので、そう単純な話でもないとは思いますが、ベースとなる発想はそんな感じです。

(文法書一部抜粋)
Image description

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カカルールでは、各単語に「感情値」が設定されており、感情値1, 2, 3, 4 の4次元で表します。これらが各ホルモンの分泌量になります。なおホルモンの種類や各ホルモンの作用については詳しく知らないので、感情値の設定などはかなりガバガバです。

また、世の中に数多ある自然言語のように、1,000語とか10,000語とか造語していたら感情値を設定する手間がはかり知れず、その計算も複雑性を増すので、単語数は極力少なくしようと試みました。カカルールの総単語数は62です。


4 ) マルタマ語  (Tapa u marutamun tu)

制作開始日 : 2023年2月16日

マルタマ語は2023年の2月につくられた言語です。
マルタマ語では、「単純な文法構造」に加えて「文法構造の明示」「少ない文法事項」を目標に掲げ、エスペラントの「16条の文法」にならって「マルタマ10条の文法」という形で文法をまとめました。

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しかしこの言語は、制作者自らの手によって封印されることとなりました。
というのもマルタマ語はカッコ構造を発達させているのですが、このカッコ構造によって単純な一文も無駄に冗長に、難解になってしまったのです。よかれと思ってやることも、やってみるまでわからないものですね…笑;ちなみにこの当時はProgate でHTML を触っていた時期だったと思います。カッコ構造は多分その影響です。

Image description


5 ) 各言語がパニパニに与えた影響

まとめると、このようになります:

言語 与えた影響
ラ・エラ語 直接的な関係はないが、ティドリアの構想のもととなった部分が多くある。
ティドリア 代名詞のミニマルさ!前置詞まわりのミニマルさ!
カカルール 単語数の少なさ!語彙のミニマルさ!
マルタマ語 文法事項の少なさ!文法のミニマルさ!あとはカッコ構造。

 

代名詞に関しては、こちらの方面ではそもそもラ・エラ語の時点で代名詞が6つのみと、かなりコンパクトな設計を好んでいますね。ティドリア・カカルールで3つに絞り、最終的にパニパニで "na" 1つになった感じでしょうか。

ティドリアにおける前置詞の概念は、ほぼそのままの状態でパニパニにとり込まれました。

語彙数の節約ではカカルールが大きな役割を果たしましたね。総単語数62、約0.5tp(1tp = トキポナの総単語数 = 120)となっています。

マルタマ語はカッコ構造によって自滅しましたが、「カッコ構造」という発想自体はパニパニにも受け継がれています


3. おわりに

長い記事になりましたが、読んでいただきありがとうございます!6月以来で、久々の投稿となりました。
パニパニ関連もそれ以外もやりたいことは山積みなので、これから数年かけて消化していこうと思います

それではまた!

Asta, kispa ! (リサトプ語)
sati ! (ティドリア)
a ! (マルタマ語)
qara ! (カカルール)
na sai ! (パニパニ)


(おまけ)

「ティドリアの制作はどうなった…?」

そもそもティドリア自体、「界隈の人に低学習コストで習得していただいて、界隈内で使っていただけるような言語をつくる」という目標で制作を始めた言語なので、正直パニパニでその目標は達成しているんですよね;
まあ今後気が向いたらリメイクとかするかもしれません。

古い順のコメント(2)

たたむ
 
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みかぶる

リサトプ語私も好きです、よく曲を聴いていました

たたむ
 
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しろすけ2号

サイトが現役だったころに出会えなかったのが悔やまれます、、!