Migdal

スライムさん
スライムさん

投稿

2025年春(第11回)人工言語コンペ 投稿作品

coi rodo mi'e .slaimsan.
どうもスライムさんです。今回もお題に基づいて人工言語を作っていきたいと思います。

0. お題

苛烈な気候によって、歴史的に独特の言語や文化が形成されてきた……とある地域。過酷な気候を持つその地域は、特殊なエネルギー源によって産業革命を成し遂げ、高い生活水準を手に入れたという。
さて、産業革命によってこの地域の言語や文化はどのように変質したのでしょうか?

  • 過酷な地域の様相について。(ケッペンの気候区分のA区分,B区分,E区分など)
  • 気候によって形成された独特の言語や文化。
  • 特殊なエネルギー源の詳細。
  • 産業革命による言語や文化への影響。 これらを説明してください。

Oh……地理の知識が必要なやつですね……地理も地学も取ってないから、この分野弱いんですよね。まぁ、頑張りましょう。

1. 方針

ケッペン区分とか地図帳で見たくらいで詳しくは分からないから、サイコロ振ってどの気候にするか決めよう。Wikipediaによると30区分ありますね。では、100面ダイスを振って出た目を30で割った余りで決定しましょう。
はい! (コロコロ…71)えーっと、余りが11だから、Cwa…温帯夏雨、温帯冬少雨とも…ふむふむ。
ヤバい。過酷さが足りない!農業も割と有利らしくてイージーモードじゃん!この環境!えーっと、まあいいや、とりあえずこの気候でどんな環境が作れるか検討してみましょう。
後、最近作ったモユネ分類タロットで、言語に課す制限も決めてみよう。とりあえず3枚くらい引いてみればいいかな。(ドロー! ドロー! ドロー!)EXP, PHI, GEN…割と普通の言語だな…まぁいいや、この制限でやっていきますか。

2. 地域設定

2-1. 気候

夏は大雨で洪水が起こるほどの多雨で、冬はほとんど雨が無く乾燥し水不足に陥る。夏の内に雨を上手くため込んで冬の乾燥に備える必要のある過酷な気候。そのため人々はダムを作って夏に降った雨を貯めこんでおき、次の夏までその水で過ごす暮らしをしていた。

2-2. 農業など

夏に降った雨を上手く使って人々は米、小麦、芋など豊富な農作物を育ててきた。また、収穫した作物を保存する目的で、穀物の多くを発酵させて酒にしてきた。これは水を貯蔵する意味もあった。場合によっては、水よりも酒の方が安いこともある。そのため、貧乏人は真水を飲むことができず、代わりに酒を飲むしかない状況となっている! 過酷! 何たる過酷! (なんとかして、過酷な環境にしないといけないので…)そしてアルコール分解能力のない人は淘汰されてきたため、ほとんどの人がアルコールへの強い耐性を持っている。

2-3. 産業革命

世界的にバイオエタノールの活用が増えている時期であったため、アルコールをエネルギー源として使うことが検討され始めていた。もともと酒を量産していた地域だったため、アルコールを活用しやすい状況だった。そのため、バイオエタノールへ転用することで産業革命が起きた。多くの機械類が酒を燃料として動く状況となった。

3. 気候・風土による言語への影響

以下のような特徴がみられる。

  • 「酒」の方が基本語彙となっており、「水」の方が複合語になっている。
  • 酒にまつわる言い回しが多い。
  • もともと動物と非動物の区別がある(更に、自発的に変化する「植物」と変化しない「大地」の区別もある)言語であるが、機械類は人間と同じく「酒を飲んで動く」ため、動物扱いとなっている。モユネ分類のPHI的な要素をこの辺に入れてみる。

4. 言語の実装

4-1.音素

今回、色々ランダムに要素を決定しているから、音素もランダムに選びたいところ。あー、こういう時にIPAカードがあればいいのに、持ってないんだよな…仕方がないので、ダイスロールしてIPAの表で左上から順に数えた音素を鍵となる音素として、他は上手く埋めることにしよう。肺気流以外の子音は今回は無視します。ごめんね。というわけでダイスロール(ころころ…59)足りるかな。1, 2, 3…ん、丁度、表の最後の音素だ。なんだこれ、えーっと軟口蓋側面接近音、聞いたことない音だ。なになに、パプア・ニューギニアのカニテ語で知られるようになった音素。うわ、難。kの摩擦音であるxの位置で側面接近音をすればいいのかな…(ラーラーこんな感じかな?)うーん、そこの音があるなら摩擦音のxもあるだろうし、kもあるだろうな。有声音は…ありにしよう。gはあると。他の側面接近音との弁別性はあるだろうか? 無いと横着できちゃうから他の側面接近音を入れよ。うん。
子音の表はこんな感じでどうでしょう?

唇音 歯音 軟口蓋音 声門音
破裂音 b t d k ɡ ʔ
摩擦音 f s x h
鼻音 m n ŋ
側面接近音 l ʟ

軟口蓋側面接近音の存在から、何となく喉の方で発音する音を重視する言語なのかなと思い、アラビア語っぽい雰囲気に寄せてみました。pの音がfに変化して消失しているあたりもアラビア語っぽさをイメージしました。

ラテン文字転写としては、

ラテン文字 音素
q ŋ
r ʟ
' ʔ

で、後はIPA記号と同じ文字にしましょう。
母音もアラビア語っぽい雰囲気で、でもちょっと違う感じで次のようにします。

短母音

ラテン文字 音素
a æ
i ɪ
u ʊ

長母音

ラテン文字 音素
aa
ii
uu
ai ɛː
au ɔː

基底の母音は3種類で、それらが組み合わさったときに長母音化して二次的な母音が派生したという設定にします。それに合わせてラテン文字は母音字は3種類しか使わないようにしています。これは近代に入ってから、国語学者が「3母音説」と言うのを唱えて、これに基づいた綴り字改革が入ったためという設定にしてみます。この辺にEXPの要素を出してみました。ふぅ…自分で自分に課した制限をクリアしていくの大変だわ…

5. 文法

5-1. 語順

語順はSOV-NAとします。動詞を一番最後にしたのは、動詞来ると文章が終わった感が出て座りが良いとペルシャ語をやった時に思ったからです。NA順にしたのは、この後説明する格の表示と相性が良いからそうします。

5-2. 名詞と冠詞と格

名詞は前述のした通り、自発的に動くことができる「動物クラス」と、自発的に自分の状態を変えることができる「植物クラス」と、自ら変化はしない「大地クラス」に分類されます。この用語自体は近代に入ってから国語学者が付けた名前ということにします。
名詞のクラスは冠詞によって表されます。また冠詞は格によって変化します。名詞自体は格変化をしないため、格の表示は冠詞が担っています。また前置詞を使う言語で、しばしば前置詞と冠詞が複合した形になります。この冠詞の部分を覚えてしまえば、格の情報はマスターできてしまうということですね。便利ですね。(この仕組みがNA語順にした理由です。)

5-3. 代名詞

実は冠詞がそのまま代名詞として通用します。というか、代名詞が発達して冠詞になったということにします。(架空の国語学者がそう囁いています。)

5-4. 動詞

動詞は完了と未完了の対立があることにします。普段使いで一番重要な区別がこの部分だと常々思っているからです。時制はなくしちゃいましょう。面倒なので。必要があれば時を表す副詞を添えれば時制なんて表せるんです。(大分思想が強くなってきた。)

6. 例文

Ri na autau sun kaulii dau gibaanuu.
あの車は多くの酒を飲む。(あの車の燃費は悪い。)

ri - 動物クラス主格の冠詞。
na - 冠詞の直後に接続して「遠称、遠いもの」を表す。
autau - 車。動物クラスであることに注意。
sun - 植物クラス対格の冠詞。
kaulii - 酒。植物クラス。酒は穀物に由来するため。
dau - 形容詞「多い」
gibaa - 動詞「飲む」の語根。
nuu - 動詞の未完了形の語尾。


ここに出てこなかった語彙

rin - 動物クラス対格冠詞。
su - 植物クラス主格冠詞。
gu - 大地クラス主格冠詞。
gun - 大地クラス対格冠詞。
tau - 冠詞の直後に接続して「近称、近いもの」を表す。
lai - 動詞の完了形の語尾。

人気順のコメント(0)