Migdal

スライムさん
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朕は猫である

本記事は第14回人工言語コンペ参加作品です。


朕は猫である。名前はまだない。
どこで産み落とされたかとんと検討がつかされておらぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣かれていた事だけは記憶されている。ここで始めて人間というものが朕によって見られた。しかも後で聞かされたがそれは書生という人間中で一番獰悪な種族であったそうだ。この書生というのは時々朕の同族を捕まえて煮て食うという話である。しかしその当時は何という考もなかったから別段恐しいとも思われなかった。ただ彼の掌に載せられてスーと持ち上げられた時何だかフワフワした感じがあったばかりである。掌の上で少し落ちつかせられて書生の顔が見られたのがいわゆる人間というものの見られ始めであろう。この時妙なものだと思われた感じが今でも残っている。第一毛をもって装飾されべきはずの顔がつるつるしてまるで薬缶だ。その後だいぶ多くの猫が逢われたがこんな片輪には一度も出会された事がない。のみならず顔の真中があまりに突起している。そうしてその穴の中から時々ぷうぷうと煙を吹く。どうも咽せぽくて実に弱らされた。これが人間の飲む煙草たばこというものである事はようやくこの頃知られた。


coi rodo mi'e .slaimsan.
どうも、スライムさんです。
いきなり『吾輩は猫である』の改変文章から始まりましたが、これは第14回人工言語コンペの参加作品です。

まずは今回のお題の内容です。

特定の身分や職業や立場の人間たちが用いている言語を作ってください。
架空の身分や職業でも構いませんし、言語を話せるならば人間でなくても可。

人工言語で比較的手薄になりがちな社会言語学の分野に踏み込んだ良いお題ですね。さて、このお題に対して私が設定した言語はこれです。

神のような最上位の立場の存在が用いる言語

一番偉い人が使う言語ということですね。普通、偉い人に話しかける時は、敬語を使いますね。そして王様のように一番偉い人は、なんと自分に対する敬語「自尊敬語」を使います。というわけで、今回は、この自尊敬語としての言語を考えようと思いました。
……しかし、一から作る余裕はなかったので、日本語を利用することにしました。ただ、次に述べる方針は、多くの人工言語に適用できる話だと思うので、もしよければあなたの言語に適用してみてください。

方針

人称

まず、一人称は専用のを使うことにしましょう。日本語では「朕(ちん)」がありますね。英語では I の代わりに we を使って自尊になるそうです。こういう風に自分が偉いことを人称で表すのは基本でしょう。

動詞

偉い人は、「自ら何かをする」ということは無いのではと考えました。神様なんて万能なので、「光あれ」と世界に命じただけで光が現れるんですよ。自ら何かする代わりに世界に対して何かを望めば、その通りになる、くらいの気概でいるのではないかと。この精神を文章にも反映させましょう。
すなわち、「偉い人は、主語にならない」というルールを設定してみました。これにより「偉い人が何かをする」という文章が書けなくなるわけです。
じゃあ「偉い人が何かをする」という文章はどうするのか? ここは、受動態を使って形式上の主語から外してしまいましょう! 「偉い人がリンゴを食べる。」ではなく、「リンゴが食べられる(偉い人によって)。」とするわけです。

ところで、現代日本語で受身を表す「れる/られる」って、古語では尊敬とか自発の意味で使いますよね。「尊敬と受身が同じ?」と高校生の時に思ったのですが、もしかしたら、今回の設定のように、偉い人が直接何かするというのが無粋に見えて、尊敬の表現というのが生まれてるのかなと妄想しました。これが、今回の発想の原点です。

コピュラ文

主語に偉い人を使わないというのは、大体の文章で可能なのですが、コピュラ文だけはどうしても避けられなかったです。この記事の冒頭がそうですね。もう、これは仕方ない。コピュラ文の時は主語として使ってよい。その代わりに自尊の人称を使用する、というルールとしました。

なぜ猫にしたのか

ネコと和解せよから、猫を思いつきました。そして猫が一人語りしてる『吾輩は猫である』が使えるではないかと。
え、猫は話さないって? 話してるやろがい
だからヨシ

Latest comments (2)

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friedrice

このコメントは朕により書かれた。
自尊敬語というものは基本好かれぬ。しかし、この言語は素晴らしいと見られた。
slaimsanという人間が作る言語はいつも素晴らしいと思われる。

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slaimsan profile image
スライムさん

ありがたく感じられます!