2023.07.16追記:結構多くの方に見ていただいたようでとても嬉しいです!
申し訳ありません、この記事の画像の単語の綴りに誤りがありましたので訂正させてください。
✗din lau mai muin win
→din lau mau muin win
→修正版の画像に差し替えました。
はじめに
こんにちは。satemo(stm530)と申します。Migdal初投稿です。
先日(といっても、これを書いている間に月日は流れ、結構前になってしまいました)Twitterを中心に大きな話題となったパニパニですが、この言語について色々なことを考えていました。
少し学習してみて、簡単な文章を作ろうとした段階で、「さすがに17語では表現に支障が出すぎてしまう」と感じました(もちろん、これは意図的にそうされているのであり、究極のミニマルを体現しているという言い方もできます)。
とはいえ、「単語を17語まで削って、言語として形になる可能性があったとは」とたいへん驚きもしました。
120以上の単語があるトキポナでさえかなり少ないと感じ、意外と文法が厳しいので表現も難しいのに・・・
ここでトキポナのコンセプトについて簡単に説明すると、トキポナは「人間の思考過程をそのまま言語化する」という所に重きをおいています。
これがどういうことかというと、複雑な概念を説明したい時でも決まった複合語に頼らず、自らの視点で、ピントを合わせていくように語を連ねて意味を絞り込んでいきます。
したがって、トキポナにおける複合語は人により、状況により、千差万別となります。
かねてより私は「トキポナは自分が伝えたいことを書いたり話したりすることより、読んだり聞いたりして意味を汲み取る方が難しい」ということを主張しているのですが(これは語彙の知識が求められる自然言語と逆で、語彙がないからこそその場で考えて展開する必要がある)、それは相手が練成した文を相手の視点に寄り添って読み解くことが求められているためだと思われます。
トキポナの表現が「人間の思考過程をそのまま言語化する」であれば、トキポナの読解は「言語から話し手の思考過程をエミュレートする」ことなのです。
トキポナは一見習得しやすいように思えますが、高い言語処理能力が都度求められるので、一筋縄ではいきません。あくまで初期コストが抑えられているだけであり、会話ごとに自然言語以上のコストが求められるという図式です。
その結果、トキポナ話者は単語を増やそうとしてみたり、決まった組み合わせの複合語が広く常識となっていたり、様々な工夫で読解の負担を減らそうという志向が見られます。
ということで、これらの問題に妥協点を見つけたいと考えました。
トキポナのコンセプトに反する形にはなりますが、あらかじめ熟語を持たせて解釈問題を減らし、ついでに単語をさらに削り(さすがにパニパニよりは多めに)、なおかつ表現の豊富さをある程度持たせることも、工夫次第では可能なのではないか?
言語、作ってみた
ということで、以下の特徴を持つ言語を作ろうと決め、実際に作ってみました。
参考にした言語はトキポナ、あとベトナム語です。
- 単語数は50くらいを目安に、そのうち機能語は5個程度
作っているうちにちょっと増え、5657単語になりました。それでもトキポナの半分以下です。
- 語は名詞、動詞、形容詞(一部の語には前置詞、間投詞も)それぞれの意味を(必要に応じて)持っており、文中の場所によって品詞が異なる
トキポナやパニパニにも同様の特徴が見られます。これはミニマル寄りな言語を作ろうとすると避けて通れない道だと思っています。
- 「単語を組み合わせて熟語を作る」というところをトキポナ比でより重視し、熟語をあらかじめ多く用意する
熟語のもととなる単語が60程度しかないので、それらに個別の単語を用意するよりは記憶の負担が小さくなると予想されます。
- 単語が組み合わされていることをわかりやすくするため、基礎単語をすべて単音節にする(個人的に、このルールが一番のミソです)
なおかつ、すべての単語の頭に子音が立つようにすることで、聞き取りやすく、音節の切れ目が単語の切れ目となるようにします。
また、音素も相当少なくなっています。末子音はnのみ、子音クラスタ(複数の子音が連続すること)もなしです。
- 熟語を用意することにより、トキポナの複合語を作る際のピントを合わせるような作業を軽減し、また、熟語による単語の結びつきを利用した読解がしやすくなる(と予想される)
たとえば A B C D という並びがあったとき、 A B と C D が熟語として存在するなら、AB と CD の複合語として捉えればよいのだということに気づきやすいと考えています。これは第三者に文章を読み取ってもらって、意見を聞かないと分かりませんが・・・
- 数詞をなんと贅沢にも0から9まで個別に用意!
トキポナで数字を言いづらすぎる問題を華麗に解決します。「作っているうちにちょっと増え」たのは主にこいつらです。
言語の概要
言語的な特徴は以下のとおりです。
言語名:bia muin(ビアムイン)
→biaが思考、muinが組み合わせる、といった意味なので、「組み合わされた思考」というような意味が元となっています。ちなみに「言語」はwi bia(音/声+思考)です。
形態論的分類:孤立語(語形変化は一切しません)
基本語順:SOV-NA(主語-目的語-動詞、名詞-修飾語)
→前置詞句に関しては、主語、目的語、動詞、それぞれと境目がはっきり分かる形であれば、基本的にどの箇所に付けても良いようにする予定です。
モユネ分類:INT/EXP/PHI/REA/CIN/GEN/SON/LIT/SER/TOL/FIX
→FIX(作者の承認のない言語変化を許容しない)の分類に関しては迷っています。各人が好き勝手に熟語を練成して、意思疎通の妨げになる可能性があるので、とりあえず入れています。
その他、あと辞書があります
その他詳細に関しては、zpdic onlineのbia muin辞書のトップページに記載しています。
https://zpdic.ziphil.com/dictionary/biamuin
この辞書はまだまだ不完全です。現時点での単語はすべて収録済みですが、熟語はまだ全然足りません。
自分でもどんどん増やしていくつもりですが、まだ作られていない概念を発見した際は「造語依頼」からガシガシ送って欲しいと思っています。
Migdalの影響力というものはよくわかっていませんが、もし一人でもbia muinに興味を持っていただける方がいらっしゃったら嬉しい限りです。
単語・熟語一覧はこちら↓
https://zpdic.ziphil.com/dictionary/biamuin
最後に、bia muinで簡単な文章を書いて締めたいと思います。
ya. da si Sa Dai Mau.
(こんにちは。私はsatemoです。)
da si bia muin bua si wi bia muin bua si muin.
(私はビアムインという人工言語を作っています。)
da si wi gan hu bai si muin wau.
(私はもっと多くの熟語を作る必要があります。)
wau bua ya bai si bia muin si bia yan bua da si si yan bia.
(もしみなさんがビアムインを気に入ってくれたら、私は喜びます。)
↓bia muinの全単語が書かれた画像です。wi gan sian ba bia muin とは、bia muinで「ビアムインのすべての単語」という意味です。
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