実はグロバサ版のりんご文は以前から存在していたようなのですが、成立年代がかなり古いらしく、現在では使用されていない語形や構文なども見られます。そこで、今回は原文に註釈を添えて修正しつつ、新たに解説を付け足しました。
こんにちは。
Salom.
Xanti.
- salom は「挨拶(する)」の意味で、出会いの挨拶に使用されます。
- xanti は「平和」を意味する名詞で、出会いの挨拶や別れの挨拶として使用できます。
私はXXX(あなたの名前を入れて下さい)です。
Misu name sen XXX.
- misu は「私の」です。「私」は mi です。
- sen はコピュラ(繋辞)で、名詞、形容詞、前置詞などの語句を導きます。
- name は「〜という名前だ」という意味の動詞として使用できるので、Mi name XXX. という文も可能です。
これは何ですか?
Hinto sen keto?
- hinto は「これ」。近接を表す hin と無生物を表す to からなります。
- keto は「何」。疑問を表す ke と無生物を表す to からなります。
- 疑問文でも語順は通常通りです。Keto sen hinto? も文法的には可能ですが、「何がこれですか?」という感じになります。
これはリンゴです。
Hinto sen pingo.
- pingo が「林檎」です。中国語の苹果を主たる語源としているので p から始まっています。
これは大きなリンゴです。
Hinto sen day pingo.
- day は日本語の「大」などと同源で、「大きい」の意味です。
- 形容詞は修飾対象の名詞に前置されます。
これはあなたのリンゴですか?
Kam hinto sen yusu pingo?
- 肯否疑問文は kam を文頭に置くことで形成されます。
- yusu は「あなたの」です。yu が「あなた」。
これは私のリンゴです。
Hinto sen misu pingo.
- 「これ」が hinto。
(私から近いところを指して)このリンゴは小さい。
Hin pingo (sen) lil.
- hin を単独で使用すると「この」という意味になり、名詞に係ることができます。hinto「これ」との使い分けに注意してください。
- lil は「小さい」です。英語の little などを語源とします。
- 形容詞や前置詞を導く sen は、肯定文の場合には省略することができます。
(あなたから近いところを指して)そのリンゴは大きい。
Den pingo (sen) lil.
- den は遠くのものを表す表現で、「あの、その」に相当します。hin の同類です。
(私からもあなたからも遠いところを指して)あのリンゴはとても大きい。
Den1 pingo (sen) daymo day.
- daymo は「非常に、大いに」という意味です。形容詞や副詞などが他の形容詞や副詞を修飾する場合、 -mo という接尾辞をつける必要があります。
リンゴは果実である。
Pingo sen fruta.
- fruta は「果実」。「フルーツ」から。
とあるリンゴは大きい。
Un pingo (sen) day.
- un は「ひとつの」です。この文脈では代わりに ban 「特定の」を使うほうが適切かもしれません。
一般的にリンゴは甘い。
Umumi, pingo (sen) day.2
- umumi は「一般的な、一般的に」です。ここでは文頭に置くことで副詞的に使用されています。なお、グロバサでは形容詞と副詞が原則として同形なので、文頭の副詞はカンマで区切ってあげる必要があります(そうしなければ名詞に係る形容詞と区別できない)。
風が吹く。
Hay vento.
- hay は「ある、いる」ですが、この例文のように、気象に関する表現をつくることもできます。
- vento は「風」です。
- グロバサは基本的に SVO 語順ですが、hay についてはこのような比較的自由な語順も許容されています。無論、規則的に vento hay. と表現しても正しいです。
リンゴが落ちる。
Pingo sokutu.
- sokutu が「落下(する)」です。
リンゴが私の前にある。
Hay pingo fe fronta de mi.
Pingo feya fronta de mi.
- fe fronta de が「〜の前面に、〜の前面で」です。英語の in front of に近い構文。
- fe はさまざまな用法のある前置詞ですが、ここでは位置関係を示すために使用されています。
- feya は「〜の場所にある」。sen fe と同義です。一般に、前置詞に -ya をつけると、「sen + 前置詞」と同じ意味の動詞をつくることができます。
私はリンゴを掴む。
Mi bujo pingo.
- bujo が「掴む」です。
私はあなたにリンゴを渡す。
Mi gibe pingo tas yu.
- gibe は「与える(英語の give)」。
- tas は「〜に」で、間接目的語などを表します。
- yu は「あなた」。なお、英語と異なり、単数の二人称しか指しません(複数形は uyu)。
私が渡すリンゴをあなたは食べる。
Yu yam pingo hu mi gibe da tas yu.
- 関係詞の hu と da を使用した構文。
- Yu yam pingo. と Mi gibe [den pingo] tas yu. を合体させた形。
- [den pingo] が入るであろう部分に「関係代名詞」の da を入れることで関係節を作ります。
(あなたは含まない)我々は(習慣として)リンゴを食べる。
Imi (du)yam pingo.
- imi は「私たち」です。聞き手を含んでも含まなくてよいです。
- 習慣相を表す du- が存在しますが、使用は任意です。
- yam が「食べる」です。
あなたがたは(習慣として)リンゴを食べる。
Uyu (du)yam pingo.
- uyu は「あなたたち」です。
(あなたを含む)我々は(習慣として)リンゴを食べる。
Imi (du)yam pingo.
- 既に述べたように、imi は聞き手の包摂関係を気にせずに使用されます。
彼は(かつての習慣として)リンゴを食べていた。
Te le (du)yam pingo.
- te は三人称の有生物の代名詞です。性を問わず、人間、動物、アンドロイドなどに使用できます。
- 過去時制は le を動詞に前置して表現します。
彼女はリンゴを(習慣的に)食べるだろう。
Te xa (du)yam pingo.
- 既に述べたように、te は性を問わずに使用できます。
- 未来の表現は xa を前置して作ります。
あなたはリンゴを食べ始める。
Yu xoru na yam pingo.
- xoru が「始める」です。
- na は不定詞を作る助詞で、ここでは na yam pingo で「林檎を食べること」という句を作ることで、xoru na yam pingo 「林檎を食べ始める」という表現を作っています。
あなたはリンゴを食べている。
Yu nun yam pingo.
Yu nun nun yam pingo.
- 現在の出来事を表現するには nun を使用します。特に現在の出来事である旨を強調しない場合、これは通常省略されます。
- 2番目の例文における 2 つめの nun は進行相をつくるもので、「〜している」の意味です。より一般に、le(過去)、nun(現在)、xa(未来)という時間表現の助詞は、時間表現の助詞や na などに後続することで、動詞の相を表現できるようになります。le は「してしまった」(完了)、nun は「している途中だ」(進行)、xa は「しそうなところだ」(将然)を意味します。
あなたはリンゴを食べ終える。
Yu fini na yam pingo.
- fini が「終える、終わる」です。
彼はリンゴを食べ始めるだろう。
Te xa xoru na yam pingo.
- 既に述べた通り、未来の表現は xa で作ります。
彼はリンゴを食べ始めた。
Te le xoru na yam pingo.
- 言う事なし。
彼はリンゴを食べている。
Te nun yam pingo.
- 進行のニュアンスを更に強調するなら Te nun nun yam pingo. としてもよし。
彼はリンゴを食べ終えるだろう。
Te xa fini na3 yam pingo.
- 言う事なし。
彼はリンゴを食べ終えていた。
Te le nun xoru na3 yam pingo.
- 過去を表す le と進行相を表す nun を併用した例。
このリンゴは小さかった。
Hin pingo le sen lil.
- 既に述べた通り、コピュラの sen に形容詞や前置詞などが後続する場合、 sen を省略できることになっているのでした。しかし、今回の例文のように le などによって sen が修飾されている場合には省略できません。
このリンゴは小さくない。
Hin pingo no sen lil.
- no は「〜ない」で、否定する対象に前置されます。
- no が sen に係っているので sen を省略できません。
このリンゴはもっと大きくなるだろう。
Hin pingo xa sen maxmo day.
- maxmo は「より大きい程度だけ」。ここでは day という形容詞に係るので -mo のついた語形が使用されています。
「彼はリンゴを食べていた。」とあなたは言う。
Yu loga ki "Te le nun yam pingo."
- loga は「言う、語る」。モノローグのローグの部分です。
- ki は節を導きます。今回の例文では「〜と言った」の「と」にあたります。
彼はリンゴを食べていたとあなたは言った。
Yu le loga ki te le nun yam pingo.
- 和文のニュアンスがよくわからないのですが、解釈次第では Yu le loga ki te nun yam pingo. でもよいかもしれません。
彼はリンゴを食べているとあなたは言った。
Yu le loga ki te nun nun yam pingo.
- nun を2つ重ねることによる現在進行形の例。
彼はリンゴを食べるだろうとあなたは言うだろう。
Yu xa loga ki te xa yam pingo.
- 言う事なし。
彼はリンゴを食べるだろうとあなたは言った。
Yu le loga ki te xa yam pingo.
- 言う事なし。
私はリンゴを食べられる可能性がある。
Ible, mi (sen) abil na yam pingo.45
Ki mi (sen) abil na yam pingo (sen) ible.4
- ible は「可能性がある」です。第一例文では副詞として、第二例文では形容詞として使用されています。
- abil は「する能力がある、することができる」を意味する助動詞です。助動詞は形容詞としても使用することが可能であるため、sen と併用できます。
- 第二例文においては、ki は ki mi (sen) abil na yam pingo「私が林檎を食べることができるということ」という巨大な名詞句を形成する役割を果たしています。
もしリンゴが食べられるならば、嬉しい。
Mi ger sen6 hox eger mi (ger)7 (sen) abil na yam pingo.
- ger は仮定法の助詞です。文法的には le, nun, xa などに近いふるまいをします。
- hox は「幸福な、幸せな」という意味で、ここでは形容詞です。
- eger は「もし…なら」で、ここでは「もし私が林檎を食べられるなら」という意味の節を作っています。なお、先ほど説明したばかりの ger は eger に由来する縮約形態素です。
- 和文のニュアンス次第ではありますが、ここでは abil よりかは ible を使って … eger mi (ger) (sen) ible yam pingo. とするほうが自然かもしれません。
私がリンゴを食べられないのは必然である。
To sen blokunenible, ki mi no (sen) abil na yam pingo.89
Ki mi no (sen) abil na yam pingo (sen) blokinenible.8
- to は三人称無生物の代名詞として使用されます。第一例文においては ki 以下の文を受ける虚辞の代名詞として機能しています(英語の it is … that … のような構文)。
リンゴが食べられたら良いのになぁ。
Mi xiwon ki mi (sen) abil na yam pingo.
- xiwon が「希望する」。
リンゴを食べなければならない。
Mi (sen) musi na yam pingo.
- musi は「せねばならない」という意味の助動詞で、形容詞としても使用できる(ので sen とも併用できます)。
リンゴを食べたほうが良い。
Yu (sen) ingay na yam pingo.
- ingay は「するのがよい、するほうがよい」という意味の助動詞で、形容詞としても使用でき、したがって sen と併用できます。
リンゴを食べるか食べないか選択できる。
Mi (sen) abil na seleti kama mi yam pingo (kam mi no yam pingo).
- seleti は「選ぶ」です。
- kama は「〜かどうか」を表す節を作ります。なお、これは疑問文の文頭に置かれる kam 語源としています。
- kama 節は kama A kam B で「A するか B するか」という意味になります。もっとも、基本的には kam 以下は省略されます。
- kam 節の部分は単に … kam no. としたり、…kam mi no. としたりできると思います。
リンゴを食べない方が良い。
Mi (sen) ingay na no yam pingo.
- na と no を併用する場合は na が先に来ます。
リンゴを食べてはならない。
Yu (sen) musi na no yam pingo.
- na no yam pingo「林檎を食べないこと」をしなければならないので「林檎を食べてはいけない」という解釈になります。仮に Yu no (sen) musi na yam pingo. とすると「林檎を食べることをせねばならないわけではない」→「林檎を食べなくともよい」という意味になります。
私は(能力的に)リンゴを食べられない。
Mi no (sen) abil10 na yam pingo.
- abil na yam pingo「林檎を食べられる」の否定形。仮に Mi (sen) abil na no yam pingo. などとすると「私は林檎を食べないことができます」という意味になります。
この大きくてかつ甘いリンゴを私は食べる。
Mi yam hin day ji tami pingo.
- hin「この」と形容詞を併用する場合、hin のほうが前に来ます。
- ji が「かつ」。英語でいう and に相当するもので、複数のものを並べる場合に使用される。
- tami は「甘い」。
私はこのリンゴまたはそのリンゴまたは、その両方を食べる。
Mi yam hin pingo or den pingo(, or moydua).
- or は「または」。複数のもののうちいずれかを指す表現です。
- moydua は「両方、2つとも」で、moy「全ての」と dua「2」からなります。
彼は、大きいリンゴまたは甘いリンゴのどちらか一方のみを食べる。
Te yam day pingo or tami pingo, mas no moydua.
- mas は「しかし」です。逆接。
あなたがそのリンゴを食べるならば、またその時に限り、私はこのリンゴを食べる。
Eger (ji sol eger) yu yam den pingo, mi yam hin pingo.
- ji sol eger は and only if で、英語などと同様の構文。
彼があのリンゴを食べるかどうかに関わらず、私はこのリンゴを食べる。
Juikal tem kama te yam den pingo, mi yam hin pingo.11
- juikal は「注意しない、気にしない」で、ここでは文頭で使用されることで副詞扱い(「〜を気にせず」)に。
- juikal は jui「注意」に -kal「〜がないような」を接続した形。
残念なことに、ここにリンゴはない。
Fe asif, no hay pingo hinloka.
Fe asif, no hay pingo fe hin loka.
- fe asif「残念ながら」は慣用句。このように、一部の名詞は fe と併用することで慣用句を作ります。
- hinloka「ここに、ここで」は近接の場所の相関詞。文法的には副詞という扱いになるので、(名詞句を導く前置詞である)fe を併用する必要はありませんし、してはいけません。
- 対して、fe hin loka「この場所で」では hin loka「この場所」は普通の名詞句なので、fe を使用する必要があります(し、せねばなりません)。
さようなら。
Weda.
Xanti.
- weda は「お別れ(をする)」という意味の名詞または動詞です。
- 既に述べた通り、xanti は「平和」を意味する名詞で、出会いまたは別れの際の挨拶として使用されます。
-
原文では dento になっていますが、文法的におかしいので修正しました ↩
-
原文では Pingo (sen) (umumi) day. とされているのですが、umumi が day に係るので、ここでは umumimo とする必要があります。いずれにせよ、現在では文頭副詞を使用して表現するほうが一般的であるという印象があります。 ↩
-
原文だと na が抜けていますが、文法上必要なので修正しました。 ↩
-
原文では ible の代わりに ibil が使用されていますが、これは古い語形で、abil との区別が難しいために廃れました。 ↩
-
原文ではカンマの直後に ki が置かれていますが、現在の文法でもこのまま使えるかどうかは怪しそうです。To sen ible, ki … という形にするなら可能か。 ↩
-
原文では括弧書きされていますが、ここのsen には ger が係っているので省略できません。 ↩
-
原文では記載がありませんが、入れようと思えば入れられるので書き足します。 ↩
-
原文では blokunenible ですが、これは古い語形。 ↩
-
原文では To sen が無く、blokunenible から文が始まっていましたが、これも註5と同様に、現在の文法では許容されないと思います。 ↩
-
原文だと abilpul になっているのですが、これはかなり古い語形です(かつて abil は形容詞ではなく名詞扱いだったので、接尾辞 -pul がないと形容詞として使用できなかった)。 ↩
-
原文では juikal tem の代わりに fe na no kolyo という 表現が使用されています。これは古い表現ですが、現在でも文法的には正しく、「〜かどうかを考慮することなく」という意味になります。 ↩
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