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XePtF₆/かばやなぎ/S.
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ピジン悪魔語【第10回人工言語コンペ】

君が、今日就任した新しい我が教団の幹部かい?
...そうか、そうだと思ったよ。よろしく頼む。
ところで君は、「ピジン悪魔語」という言語を知っているか?
...知らなくてもまあ無理はない。
なんせこれは、「隠された言語」だからな。
ピジン悪魔語...いや、tɓeʔ͡Ꙫɡ͡ʘ̪͡ꙮk͡ǃeŋ͡ǀ̼は、君のように我が教団の上部にまで上り詰めた人間のみが用いることができる、悪魔とのコミュニケーションのための言語だ。
我々と悪魔は、当然だが別の世界に住んでいて、それぞれで別の言語を話している。それを繋ぐ架け橋がtɓeʔ͡Ꙫɡ͡ʘ̪͡ꙮk͡ǃeŋ͡ǀ̼だ。
...ん?なんで悪魔の言語を直接話さないのかって?...
人間には話せないからだ。
悪魔の言語は悪魔にしか話せない。だからこの言語が生まれたのだ。

悪魔語

音韻

まずtɓeʔ͡Ꙫɡ͡ʘ̪͡ꙮk͡ǃeŋ͡ǀ̼の元になった、悪魔語(tɓeʔ͡Ꙫθ̼baħ)の説明をしよう。
まずは音韻からだ。幸いにも悪魔の口の構造は人間とある程度似ていて、我らが人間が発話不可能な音素は子音に3種類、母音にはない。

両唇音 唇歯音 舌唇音 歯茎音 そり舌音 軟口蓋音 口蓋垂音 咽頭音 声門音
鼻音 /m/ /ɱ/ /n̼/ /n/ /ɳ/ /ŋ/ /ɴ/
破裂音 有声 /b/ /d̼/ /d/ /ɖ/ /g/ /ɢ/
無声 /p/ /t̼/ /t/ /ʈ/ /k/ /q/ /ʔ/
ふるえ音 /ʙ/ /r/ /ʀ/
はじき音 /ⱱ/ /ɾ/ /ɽ/
摩擦音 有声 /v/ /ð̼/ /z/ /ʐ/ /ɣ/ /ʕ/
無声 /f/ /θ̼/ /s/ /ʂ/ /x/ /χ/ /ħ/ /h/
側面接近音 /l̼/ /l/ /ɭ/
吸着音 有声 /g͡ʘ/ /g͡ʘ̪/ /g͡ǀ̼/ /g͡ǀ/ /g͡ǃ/* /g͡ǂ/* /g͡ǁ/*
無声 /k͡ʘ/ /k͡ʘ̪/ /k͡ǀ̼/ /k͡ǀ/ /k͡ǃ/* /k͡ǂ/* /k͡ǁ/*
鼻音 /ŋ͡ʘ/ /ŋ͡ʘ̪/ /ŋ͡ǀ̼/ /ŋ͡ǀ/ /ŋ͡ǃ/* /ŋ͡ǂ/* /ŋ͡ǁ/*
入破音 /ɓ/ /ɓ̪/ /ɗ̼/ /ɗ/ /ᶑ/ /ɠ/ /ʛ/

*図の簡略化のために一部の位置を変えている。詳しく知りたい人は各自IPAを調べるように。
【調音方法不明】

また、これら3種類の子音は他のすべての子音との同時調音が確認されている。
さらに、悪魔が2つ口がついており、数多くの子音を同時調音することが可能である。
え?難しすぎるって?まあ落ち着け。次の母音は簡単だ。なんせ/a//e//i//o//u/の5種類しかないからな。
二重母音もeiとouの2種類しかない。
ただ、4種類の声調がある。

a/˩/ ā/˥/ á/˩˥/ à/˥˩/

の4つだ。下記の場合を除き基本的にすべての単語に声調はつかない。(すなわち、/˩/である。)

文法

次は悪魔語の文法だ。
まず、悪魔語には薄々気づいているだろうが文字がない。彼らにはそんなもの必要ないからな。彼らの脳は構造上好きなように記録し、好きなように抹消することができる。
ここでは簡易的に国際音声記号に一部文字を追加し、4つの声調記号を用いて表記することにする。
どうやら悪魔語は過去何らかの形で大規模の整備されたようで、非常に人工言語らしい文法となっている。
語順はV͡OS、口に①(メインの口)と、②(サブの口)という番号をつけて表現するとすると①V S②Oだ。この時点で人間には無理だ。なお間接目的語はSと同時調音される。これらの特徴は別の単語をそれぞれ発音しているというよりも、認識的には抱合語のそれにどちらかというと近いようだ。

名詞、動詞の基本構造

まず悪魔語の単語は、語根に様々な接頭辞や接尾辞がつく事で表現される。基本的に語根は1音節(C)CCVCで表現される。なおこの際必ず子音クラスタが発生するが、大量にある接頭辞、接尾辞には子音クラスタが現れないことからこの子音クラスタがあることで語根を見分けているといわれる。また、語根を二つ並べて新たな単語を作るという造語法も盛んであり、こうして作られた単語を複数語根語という。
そして語根(複数語根語の場合は最後の語根)の次には必ず確率を表す母音(以下、確率母音)が入る。悪魔語において否定はこの一種とされる。
i:100%そう(肯定、疑問文の際は必ずこれになる)
e:75%そう(多分肯定)
a:50%そう(肯定か否定かわからない)
o:25%そう(多分否定)
u:0%そう(否定)
なお肯定の場合かつ後ろに何もつかず、声調もつかない場合は基本的に省略される。
また、確率母音の後に語根を入れることでその語根を形容詞として用いることができる。
次に時制だ。時制は語根の時制だ。基本的に名詞だろうが形容詞だろうが悪魔語においては時制があり、語根の声調で表される。
現在:a
過去:à
未来:á
これだけで簡単な例文がすでに作れてしまう。早速作ってみよう。必要な単語は書いておくので、「私は青かった、果物でないものを食べる予定だ(未来)。」を訳してみてくれ。黒塗りになっている部分にカーソルを合わせたら答えを見ることができる。
私:pmiɗ 食べる:ɭdak͡ǀ̼ 青い:plos 果物:ʂᶑat
①ɭdák͡ǀ̼ pmiɗ ②ʂᶑatuplòs
ほかにも、語根の前に母音をつけることで証拠を表すこともできる。(以下、証拠母音)
a:感覚
i:推論
e:引用
o:伝聞
u:伝聞推論
の5つだ。

名詞

次に名詞のみに重点を当てていこう。まずは数だ。数は確率母音の声調を変化させることで表される。
単数:a
双数:ā
小複数:à
大複数:á
次に格だ。悪魔語の格は基本的な格、場所的な格に分けられ、声調によって区別される。基本的な格は1種類しかなく、気にする必要もないので飛ばす。
なので場所的な格を解説する。悪魔語の場所的な格には16もの種類があるのだが、それらは証拠母音の声調で表される4種類の方向と確率母音の声調で表される4種類の系列の組み合わせで表現される。
証拠母音で表現

静止 起点 着点 通過
a ā á à

②で表現

周り
á a ā à

また、場所的な格の名詞はSのさらに後ろに置かれることで表される。

動詞

次に動詞、まずは相について解説しよう。
相は確率母音の声調で表現される。

起動 継続 完了 全体
á ā à a

次に法だが、これは証拠母音の声調で表現される。

直説 命令 希求 仮定
a á ā à

ピジン悪魔語

歴史

ほかにも規則は数多くあるのだが、そろそろ飽きてきた頃だろう。さあついに次はtɓeʔ͡Ꙫɡ͡ʘ̪͡ꙮk͡ǃeŋ͡ǀ̼の説明をしよう。何の話からするべきか、と言ってももうすでに話すことはあまりないのだが...
まずはこの言語の歴史から話そうか。
悪魔とのコミュニケーションと聞いて君は驚いたことだろう。まずはその説明をしよう。君も知っての通りこの教団は教祖様が悪魔から厄災で信じるものだけは救ってやるという啓示から始まった。ただ表向きは悪魔と会うことには成功していないことになっている。表向きは、な。
そうだ、教祖様は悪魔を召喚する呪文の啓示を受けた。
なぜ秘匿にするかって?私利私欲のために呪文を習得するものが現れては困るからだ。教祖様に忠誠を誓った我々幹部のみが呪文を知り、悪魔と話すことができる。
ただもちろん悪魔だって暇じゃない。悪魔を召喚できるのは悪魔の都合がいい時のみ。そこを覚えておくんだ。
...え?その呪文はって?まあ焦るな。ここで伝えてしまっては実際に悪魔を呼んでしまうだろう。辞書に載っているから、後で見ておくように。
そうして悪魔とのコミュニケーションを取れるようになった我が、我らが教団だが、使用する言語をどうするべきかの議論がなされた。今までは天啓も英語であったし英語で話していたのだが、次第に悪魔への忠誠を示すために悪魔の言語を話すべきではないかとの話が広まった。しかし悪魔の言語は人間には使用できない、そこで悪魔と共同で作られた言語として生まれたのこそこのtɓeʔ͡Ꙫɡ͡ʘ̪͡ꙮk͡ǃeŋ͡ǀ̼だ。
なお悪魔は我々よりも圧倒的に上位の存在、最大限悪魔ごとの変更点は音韻を含めて少なくなっている。
歴史的経緯からしても厳密なピジン言語の定義には当てはまらないが、呼び名にこだわっても仕方ない。言語の特性を見ていこう。

特性

まずは音韻からだが、調音不可能な部分を除いて完全に同じだ。
...なぜ難しいのにそのままなのか?それはさっきも言った通り、圧倒的に上位の存在へひれ伏す意を示すためだ。
では、調音不可能な部分をどのように発音するのか?
それは、

拍手 足踏み ジャンプ

この表の通りだ。そう、手足を用いることで同時調音を可能としている。
これで音韻面は解決だ。
次に文法だ。
文法は①→②→①→②という感じで、単語ごとに悪魔語の2つの口を交互に言うと言うことになっている。
まあこんなところだろう。え?短いって?まあ仕方ないだろう。悪魔への忠誠を示すためだ。なるべく簡易的なんだよ。
え?悪魔だろって?まて、その呪文は...何をするつもりだ...やめろ...やめるんだ!!

...


辞書
plos 青い
pmiɗ 私
qtaʀ 意味不明、召喚の呪文として用いられる
tɓeʔ͡Ꙫ 言語
ɡ͡ʘ̪͡ꙮk͡ǃeŋ͡ǀ̼ 信奉者
ɭdak͡ǀ̼ 食べる
ʂᶑat 果物
θ̼baħ 悪魔

いやー上手くいかんね。ピジン悪魔語の方の文法説明もうちょっと長くしたかった。本当になんかバランスが悪い。誰も僕には入れないだろうけど、まあ初めてだし経験も浅いし文才もないし仕方ないね。次回頑張ります。

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