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プカリカスの文章(天帝時代まで)

プカリカス(pucaricas)とは

プカリカス、あるいはプカル人とは主にプカルテポ語(pucartepo)を話す民族である。
多くの場合宗教として蛇教(alperpie)または、パタエルカ教(alpicupla)を信仰しており、言語話者の多くは歴史的背景から天帝方言やそこから派生した方言を用いる。

プカリカスは、歴史において大きな存在感を示し続けた民族であり、その歴史は奥深く、興味深く、味わい深い。
今日は文章、文学や資料について注目してみよう。というわけです。
話の概要もお書きします。


目次

  1. 口承文学と、古代の文学

  2. 平定時代の文学

  3. パタエルカ時代の文学

  4. 天帝時代の文学

口承文学と、古代の文学

まだプカルテポ語に正書法の無い時代。この時代で最も有名な口承文学は…
「古神紀(rusialpakitoco)」や「輝ける姫君(tirikipero)」でしょう。

古神紀

古神紀は人類の起源について書かれた神話です。
「神には常しえがあり(ataa)、人には常しえがない(lei ataa)」この一文から始まり…
人間がどこから来たのか、蛇神や神の山をなぜ信仰するのか、神の山がどれほど高く尊いのか……そういった事への理由付けです。
「大いなる蛇神が、旅の最中見つけた神の山に登り、そこで見つけた女神との子をもうける。それが人間の先祖である。しかし蛇神はその身を濯がずに山に入ってしまったために、永遠に雪が降り積もるほどの高く尊い山になった。」と。
しかし、古神紀について目を見張るところはその文章ではありません。
口承が書き写された対象です。
一本の大木から作られた精巧な蛇の彫刻に、頭から尾に向かって一文字ずつ文字が書かれているのです。
蛇教に対する偏執じみた信仰がここにある、ということ。恐ろしいですね。

輝ける姫君

これはもっと娯楽じみた話です。
古神紀よりもあとの時代、神と人がまだ交流していた時代のことです。
父親をなくしてしまったとはいえ、とても美しく、素朴な雰囲気あふれる…
「輝ける姫君」がお生まれになった。
輝ける姫君を娶りたい人間と神が、神の山で弓や歌、舞いや会話の上手さで争いをする……
全六部に分けられて描かれたこの作品。歌物語の性格があるのはもちろんのこと、圧倒されるほど諧謔表現が多いです。
輝ける姫君のほかに神と人間あわせて六人が登場しますが、全員愛嬌があり、憎めない。いい文章ですよ。
(ちなみに筆者はtelipokirteが好きです。弓や楽器は上手いけれど歌は駄目で……神の山の怪物におののいて撃てばいいのに弓を置いて逃げてしまう。
愛嬌ありますよね?)

平定時代の文学

平定時代というのは、プカリカスが南下して異民族を平定し、異民族に蛇教を信仰させた時代です。
この時代、プカル人は多くの戦争を行ったため、それまでのルペオ(rupeo)とよばれるかんなぎ(聖職者)ではなく豊富な土地や金銭を持つアルペティル(alpetir)、つまり貴人が勢力を拡大しました。
また、戦争物や貴族社会を描いた物語があらわれ、絶対量も莫大に増えました。

アルクセオ戦記

作者未詳ながら、プカル人の「アルクセオ平定」を生々しく描いており、傑作と評価されながら、生臭すぎるという評価もある作品です。
力強い文体で克明に戦争を描いています。
アルクセオとはクルタル人という系統不明の民族が住んでいた都市です。
プカル人はこれを平定して蛇教に改宗させ、クルタル人から多くの技術を得ました。
「プカル人は当時、神の山の麓にあるタルタリスト(tartaristo。大都市の意味)に住んだが、南下を画策していた。
されど大峡谷を越えねばならず、峡谷先のクルタル人は教化を拒む。
死にに行きたい人間はいない。隣家のカルポ(※人名)は兵役逃れのために、小指を切り落としたという」
「この谷の向こうにクルタル人が多くいる。奴等は黒光りする金属の剣、鎧、道具を用いて谷を守る。弓を用いないが、金属の弾を大きな音とともに飛ばし、攻撃されたものは尽く重傷を負う。戦士はみな、神の業前だと戦いている。
谷に落ちれば土葬できない。弔われないことも士気を低下させた。
セロキルテ、大将たる貴人はsipislo(※語義不明)と誹られている」
このようにアルクセオ平定について、作者の視点から詳らかに書かれています。

貴人伝

「ある場所に全く好色めいた気が無い貴族の男がいた」
この書き出しから始まる三部構成の物語文です。現実を元に書かれたフィクションとされ、第二部にはアルクセオ平定が描かれています。
かなり娯楽性の強い話なので歴史資料にはならないと言われていますが…
それぞれのさわりを見ておきましょう。
なぜかって?筆者が好きだからです。
第一部
「全く好色めいた気のない男」は後継ぎをもうけようとせず、従者を困らせていた。従者は様々な立場の女をあてがい、女達に様々な身の上話をさせる。
しかし、男はどの女も娶らず神の山に逃げ登る。
そこで素晴らしく気品のある女性を見つけ、女性から出された試練を攻略して男は女性を妻として迎え入れる。
第二部
貴人と女性の間に乙女が生まれた。娘は男勝りな性格をしていたので、ひそかに男子として育てられる。
そしてこの乙女はアルクセオ平定に大将として出征することになるが、アルクセオ平定は厳しい戦いだった。
乙女は自分の身体に悩みながらアルクセオに攻め進めるが、部下の貴人に性別の秘密を暴かれてしまう。
その貴人に関係を迫られるが、アルクセオの町の近くで腹違いの兄を見つけた乙女は、兄を代役にして危機を乗り越え、アルクセオも平定した。
第三部
父親はいないが気品の溢れる男がおり、砂漠を渡り歩きながら毛皮商を営んでいた。
老いさらばえた母親のために父親を探す男はあるとき、アルクセオという大都市が異民族に平定されたという噂を聞く。
アルクセオという大都市は知らなかったが、そこになら父親も居るかもしれない。様々な境遇の人間を引き連れながら砂漠を旅する。
旅の途中で出会いや別れを経験しながら、アルクセオにたどり着き自分の父親の死を知る。
アルクセオで流行っていた宗教に改宗し、宗教の教義を広めるため砂漠への帰郷を志す…

空気たるポシル

ペラルコル人が、ポシル教と呼ばれる自らの宗教を残すために書いた資料です。
そもそもペラルコル人とは、クルタル人よりも南部に住む民族であり、この民族もクルタル人と同様にプカル人によって平定されました。
ペラルコル人は独自の宗教を信じていたのですが、それが理由で殆どがプカル人によって根絶やしにされ、山間部に住んでいた数少ない人々はその宗教を捨てさせられました。
ペラルコル人の司祭で、セクテースと呼ばれる者は自らの宗教をまとめ後世に残そうとしました。
現在はポシル教を信仰することも自由であり、教義の理解に関してこの資料の功績は大きいとされています。

パタエルカ時代の文学

パタエルカとは?

パタエルカとはタルタリストでうまれ、アルクセオで熱烈に信仰された宗教の開祖であり、後世にはアルピクプラ(alpicupla。尊い教えの意味)とよばれることになる思想を伝えました。
葬儀も土葬から火葬に切り替わり、蛇の神を信じるのでなく神の山そのものを信じるようになりました。
筆者も信徒です。

パタエルカにまつわる文章

この時代はプカルテポ語の正書法が確立され、筆記技術も向上したことにより、様々な文章が書かれました。
パタエルカの出現から(パタエルカは親もなく、神の山から降りてきたと主張している)三度死亡したのち、アルクセオで眠りにつくまでを描いた「アルプカル」(alpucar。聖人の意味)、パタエルカが民衆に語った思想の「アルピクプラ」(alpicupla)など…
パタエルカ教の聖典だけでなく、自らの身体を谷を支える柱にした「柱上人」や、楽器の演奏で多くの人間の病を治療した「管弦上人」など…
民衆に奉仕したパタエルカ従者の伝説も豊富です。
またアルクセオに、パタエルカの物語を題材にした壁面彫刻が数多く彫られたことにより、アルクセオは壁面彫刻の町とよばれることになります。

流行病録

パタエルカが出現する前、タルタリストとアルクセオは共に流行病に冒されました。アルクセオの流行病はパタエルカの渡来と共に収束しましたが、タルタリストでは多くの死者が出ました。
これはタルタリストの様子を描いた散文や叙事詩であり、絶望に溢れた詩や歌、散文が集められています。
「昨日まで会話をしていたあによめが、肌が青白なって膿が出る。ため息も腐ってしまう」
「朝起きると耳が遠くなっていて、自分の病に気づく。腕を掻くと、青白い肌がぼろぼろと剥がれ落ち、脚を掻くと、腐肉の臭いを放つ」
「パタエルカは土葬を認めず悍ましい、しかしこの体もみぐるしい。燃やしておくれよこの体。」
悲惨極まるのですが、このときタルタリストがアルクセオに医者を送るよう何度も救援を求めました。
それがアルクセオの反タルタリスト感情を招き、天帝時代が始まります。

天帝時代の文学

パタエルカ亡き後、アルクセオを統治する貴人の一家で、親は蛇教を信じているが、子どもはパタエルカ教徒のルペオ(rupeo。信心深いの意味)という男が生まれました。
ルペオは、病が収まらず不甲斐ないタルタリストを嘆いており、アルクセオの東にある砂漠からの異民族襲来を防げないアルクセオの他の貴人に鬱憤を溜めていた。
故にこの男は父の後を継いですぐに、他の(、とくに親タルタリストの)貴人をアルクセオから追放し、タルタリストから独立しました。
そして自らを天帝と名乗り、パタエルカ教を広めつつ、東方の砂漠を破竹の勢いで平定していくことになります。

東方平定記

天帝が自身で東方への遠征を描いた記録。
天帝は東方の砂漠にいるあらゆる異民族と戦争をおこない、常勝無敗で領土とパタエルカ教を広めてきました。
これは戦況報告で、平定のまでの損害や出来事が書かれています。
とはいえ、破竹の勢いで平定していくので乾いた笑いが出ること、出ること…

宗教録

天帝はどんどん異民族を平定していきましたが、対面した相手に三つの選択肢を与えました。

  • パタエルカ教を信仰し従属して、一部の免税と自由な旅行の権利を得る

  • パタエルカ教を信仰しないが従属はする

  • 従属せず戦争する

天帝の目的はあくまで教化ではなく異民族の平定でした。
しかし天帝は同時に、パタエルカ教を信仰させれば、パタエルカの遺体はアルクセオに所在するので、アルクセオに敢えて反抗しなくなるだろうという思惑がありました。
なので天帝は上のような選択肢を与えたというわけです。
逆に天帝は、パタエルカ教を信仰しない人々は反抗する可能性があると他の宗教とその信仰者を監視追跡させました。
そういう理屈で他の宗教がまとめられたものが、この書籍「宗教録(rertea。宗教の意味)」です。
天帝が統治した領土にある様々な宗教がまとめられています。
「ポシル教(posir)は特定の神ではなく、空気そのものを信仰する。多くの信徒は空気の精霊の子どもを崇める」
「医者教(pelcocupla)は特定の神を崇め、その血液を飲むことで尊い存在になろうとする」
「旅行教(rocupla)は定住を是とせず、信徒は彷徨する。殆どの信徒にはパタエルカ教を信仰させたが、本心は確かでない」
天帝が如何に多くの民族を組み敷いたか分かる物です。

浮橋(epta)

この時代の大傑作。
「神には常しえがあり(ataa)、人には儚さがある。(eptaa)」
この一文から始まる物語文で、パタエルカ教以前の時代から、この時代までを生きてきた神との混血者が主人公の物語です。
「epta」とは一時的にかけるちっぽけな橋を指す語で、そこから儚さや、人の命を表現します。
混血者が自らの人生を回顧し、それを綴っていきます。
親を知らずに育ち肌が突然白い鱗に変わってしまって、人々から恐れられたこと。
気品溢れる乙女を見つけ恋をして口説くが、その乙女が消息を絶ってしまったこと。
戦争と疫病で多くの人が死んでしまって、あまりの多さに埋めて葬ってやれないこと。
身体は人のように老いさらばえたのに、神のように見苦しく永遠に生きること。
混血者はこのようなことを嘆き悲しみます。しかし、混血者は自らの人生を憎むことはなく、むしろ愛していると表現しました。
そしてこの混血者は彫刻家となり、人々のために歴史や物語を伝えていく…

これは人間性を愛する文章であり、パタエルカ教的だと評価されています。
パタエルカは生まれながら尊いことよりも、人間としての幸福や享楽を説きました。まさにそういうところです。

大分裂時代へ

栄華を誇った天帝は、アルクセオで爆殺され、その子どもや部下が後継者を名乗ることになります。
それにより天帝の領土は分裂し、「大分裂時代」が始まります。
そこから多くの書籍が生まれるとはいえ、書き始めると長くなってしまうので、今回はここでお開き。
tipirla taa.それでは!(しっかりと良くあれ。の意味)


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