(この記事は書きかけであり、逐次更新されます)
概要
レスゲム語の曲用は語根の母音交替と語末子音の交替、そして接尾辞の付加によりなされる。この記事はそれぞれを独立した章に分けて解説した。主に規則変化について扱うので不規則変化は別の記事を参照すること。
母音交替
概論
レスゲム語の名詞にはアプラウトと呼ばれる裸形態の時現れる形態以外に一部の格の時取る特別な形態が存在する(以下前者をA, 後者をBと呼ぶ)。また、格接尾辞によっては更に語根の母音とウムラウトを引き起こすものもあり、その影響を受けて変化した形態をC, Dと表記する(それぞれA, Bと対応する。)
アプラウト
アプラウトに於いては語根のアクセントの位置が最終音節に移り、元アクセントのあった位置の母音が弱化し、最終音節の母音が強化される。(この弱化、強化という用語は音声学, 音韻論のそれとは異なる)ただし、アクセント位置がもとより最終音節にある場合は変化しない。
強化
最終音節の音節核が母音であるとき、原則は以下の通りである。
元 | 後 | |
---|---|---|
o | → | e |
ɔ | → | ε |
e, ø | → | i, y |
ただし、ts, dzに後続する位置ではε, e, øは変化せず、ウムラウト母音が存在する音節の次の音節ではoは変化しない。
次に最終音節の音節核が子音であるときについて解説する。
その子音がm, nの時は変化が起きず、r, l, ʁの時は当該子音の前にeを挿入する。また、その前の音節にウムラウト母音が存在するときはeではなくoを挿入する。
例外
以下に頻繁に現れる例外を挙げておく。
場所を表す-onで終わる名詞は-unに強化される。
弱化
原則的には以下のように対応する。
元 | 後 | |
---|---|---|
e | → | o |
u | → | o |
ε | → | ɔ |
i, y | → | e, ø |
ā,ε̄ | → | a |
また、r, l, ʁの直前の母音が弱化するとき、その母音は脱落する。またこの脱落で生じた/nr/, /tl/, /dl/, /sl/は/dr/, /kl/, /gl/, /ʃ/に変化する。
ウムラウト
最終音節の母音を次のように変化させる。
元 | 後 | |
---|---|---|
a | → | ɔ |
e | → | ø |
ε | → | œ |
i | → | y |
子音交替
接尾辞が付加されるとき、語末の子音が交替したり、新たな子音が現れたりする場合がある。以下に主要な例を挙げる。
語末子音の有声化
元 | 後 | |
---|---|---|
p, t, ts, k | → | b, d, dz, g |
f, s | → | v, r |
子音の挿入
語末が母音であるものは、接尾辞が付加されるとき-ʁが挿入される。また語末が長母音である場合は-ʁが挿入されると同時にそれが短母音化する。
子音クラスタなど
破裂音二つによる子音クラスタは両方が有声化される。(e.g. -kp→-gb-)、摩擦音+破裂音による子音クラスタは破裂音のみが有声化される。(e.g. -st→-sd-)。また、長母音+子音で終わるものは有声化の影響を受けない。
その他
子音交替の影響でvが現れた時、その直前の音節の母音はウムラウトの影響を受ける。また、r, ʁが生まれた時、その直前にアクセントのない母音が置かれていた場合、その母音が脱落する。またその際に/nr/が現れた場合/dr/として実現される。
接尾辞
接尾辞は母音の接触によるウムラウトを引き起こす場合がある。
強変化
定形の曲用は第一規則曲用に挙げたものと同一である。
第一規則曲用
大半の名詞がこのタイプに属する。
格 | 不定生物 | 不定無生物 | 定生物 | 定無生物 |
---|---|---|---|---|
主格 | A-∅ | A-e | A-a | A-i |
対格 | A-on | A-∅ | A-ø̄n | A-e |
属格 | A-ot | B-uk | A-ø̄t | B-jūk |
与格 | B-ena | B-en | B-jen(a) | B-jēn |
奪格 | B-iʁ(a) | B-i | B-eiʁ(a) | B-ei |
具格 | B-uka | B-jūka | ||
共格 | A-ok | A-ok | A-uk | A-uk |
第二規則曲用
ts, dzで終わる名詞の多くがここに属する。また一部のs, nで終わる名詞も属する。アクセントが最終音節以外にあり裸形態が母音で終わる名詞またはアクセントが最終音節にありそれが長母音である名詞のうち、最終母音がa, ε, e, iのもの及び一部のɔ, o, uのものがここに属する。
格 | 不定生物 | 不定無生物 |
---|---|---|
主格 | A-∅ | A-e |
対格 | A-en | A-∅ |
属格 | A-et | B-uk |
与格 | B-ena | B-en |
奪格 | B-iʁ(a) | B-i |
具格 | B-uka | |
共格 | A-ok | A-ok |
第三規則曲用
一部の子音で終わる名詞がここに属する。p, b, m, n, lで終わるものでこの分類に属するものは少ない。アクセントが最終音節以外にあり裸形態が母音で終わる名詞またはアクセントが最終音節にありそれが長母音である名詞のうち、最終母音がœ, ø, yのもの及び一部のɔ, o, uのもの、もしくはアクセントが最終音節にありそれが短母音のœ, ø, yで終わるものがここに属する。母音で終わる形態に接尾辞が接続される場合-v-が挿入される。
格 | 不定生物 | 不定無生物 |
---|---|---|
主格 | A-∅ | C-ve |
対格 | C-on | A-∅ |
属格 | C-ot | D-uk |
与格 | D-ona | D-on |
奪格 | D-viʁ(a) | D-vi |
具格 | D-uka | |
共格 | C-ok | C-ok |
第四規則曲用
一部の名詞がここに属する。また、最終音節の音節核がm, nであるものは大半ここに属する。
格 | 不定生物 | 不定無生物 |
---|---|---|
主格 | A-∅ | A-e |
対格 | A-on | A-∅ |
属格 | A-ot | B-ōk |
与格 | B-ēna | B-̄ēn |
奪格 | B-īʁ(a) | B-ē |
具格 | B-ōka | |
共格 | A-ok | A-ok |
第五規則曲用
アクセントが最終音節にあり裸形態が母音で終わる名詞またはアクセントが最終音節にありそれが短母音である名詞がここに属する。
e型
最終音節がa, ε, eで終わるものがここに含まれる。また、語末のeも含めて接尾辞とした。
格 | 不定生物 | 不定無生物 |
---|---|---|
主格 | A-{a, ε, e} | A-ē |
対格 | A-ēn | A-{a, ε, e} |
属格 | A-ēt | A-ōk |
与格 | A-ēna | A-ēn |
奪格 | A-ēʁ(a) | A-ē |
具格 | A-ōka | |
共格 | A-ōk | A-ōk |
o型
最終音節がo, ɔで終わるものがここに含まれる。また、語末のoも含めて接尾辞とした。
格 | 不定生物 | 不定無生物 |
---|---|---|
主格 | C-{o, ɔ} | C-vē |
対格 | C-ōn | C-{o, ɔ} |
属格 | C-ōt | C-ōk |
与格 | C-ōna | C-ōn |
奪格 | C-vēʁ(a) | C-vē |
具格 | C-ōka | |
共格 | C-ōk | C-ōk |
i型
最終音節がiで終わるものがここに含まれる。また、語末のiも含めて接尾辞とした。
格 | 不定生物 | 不定無生物 |
---|---|---|
主格 | A-i | A-ī |
対格 | A-jēn | A-i |
属格 | A-jēt | A-jūk |
与格 | A-jēna | A-jēn |
奪格 | A-īʁ(a) | A-ī |
具格 | A-jūka | |
共格 | A-jūk | A-jūk |
u型
最終音節がuで終わるものがここに含まれる。また、語末のuも含めて接尾辞とした。
格 | 不定生物 | 不定無生物 |
---|---|---|
主格 | A-u | C-vī |
対格 | C-ōn | A-u |
属格 | C-ōt | A-ūk |
与格 | C-ōna | C-ōn |
奪格 | C-vīʁ(a) | C-vī |
具格 | A-ūka | |
共格 | A-ūk | A-ūk |
弱変化
弱変化の語尾は母音で終わる語幹に接続される際も母音融合の影響を受けない。
格 | 不定生物 | 不定無生物 | 定生物 | 定無生物 |
---|---|---|---|---|
主格 | -∅ | -∅ | -e | -e |
対格 | -a | -a | -ea | -ea |
属格 | (H構文) | (H構文) | (H構文) | (H構文) |
与格 | -honon | -en | -enon | -ejen |
奪格 | -hone | -i | -ene | -ei |
具格 | -honuk | -uk | -enuk | -øuk |
共格 | -honuk | -uk | -enuk | -øuk |
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