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ふぃるきしゃ(FILUKISJA)
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人工言語コンペ 2026年冬 (第14回) 提出作品

この記事は人工言語コンペ2026年冬 (第14回) 提出作品です。


お題

特定の身分や職業や立場の人が用いている言語を作ってください。架空の身分や職業でも構いませんし、言語を話せるならば人間でなくても可。


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骸機語

骸機語とは、ラグロウ民主共和国機獣対策庁が保有する機獣駆除用有人人型兵器「骸機」を操るための言語である。


機獣

機獣とは、制歴184年にラグロウ領内に飛来した隕石から発見されたナノマシン「機胚」によって変異した生物である。肉体の一部が未知の金属繊維から成る機械構造に置き換えられ、身体能力・生命力が著しく増大している。体長は10m以上にも達し、非常に獰猛。イノシシ、クマ、ヘビなどの他、魚類や昆虫類が機獣となった例も報告されている。機獣による犠牲者は制歴184年だけでも数十万人に上り、機獣によって壊滅した都市も存在する。

機胚は当初、国立宇宙戦略研究所によって回収・分析が進められていた。だが、生物を変異させる性質が判明すると、軍事転用を画策する陸軍との間で所有権を巡る内輪揉めが発生した。その過程で機胚は何者かによって持ち去られ、外部に流出してしまったと推測される。だがこの一連の背景は情報監査局の統制により秘匿されている。


骸機

骸機は機獣に対抗すべく、機獣対策庁によって開発された有人人型兵器である。全長は約20mに達し、表面は機獣と同質の金属繊維と装甲材に覆われている。以下は、骸機の中でも最も優秀な機獣駆除実績を持つ機体「ディエリ」の全体像である。

Image

骸機は、中枢機能を破壊し無害化した機獣に操縦ブロックを埋め込んで建造された兵器とされている。だがこれは情報監査局により流布された偽りの情報であり、実際に素体とされているのは機獣化した人間である。機胚により機獣と化してしまうのは人間も例外ではない。だが他の生物と比べて理性・知能がある程度維持されることが確認されている。それに目をつけた機獣対策庁は、機獣に変貌する初期段階の人間を回収し、操縦ブロックの移植等の処置を経て有人兵器「骸機」へと転用する技術を確立したのである。情報監査局の情報統制により、この事実を知る者はいない。外部に情報を漏らそうものなら、直ちに事実歪曲罪に問われ、人権停止・生命途絶処分を下されてしまうからだ。


騎骸士

骸機のパイロットは「騎骸士」と呼ばれる。騎骸士は、骸機となる前の人間と最も親しかった者が強制的に任命される。例えば上記の骸機「ディエリ」には、その恋人であったピラネが任命された。その他、親子やきょうだい、友人、夫婦など関係は様々だが、彼らは彼らが愛する者の成れの果てに搭乗し、機獣と戦わなければならない。そうしなければ骸機は解体(事実上の生命途絶処分)、彼ら自身も人権停止の憂き目に遭うからだ。

なぜ親しい者しか騎骸士になれないのか? それは骸機の操縦方法に原因がある。骸機のコクピットには操縦桿もレバーもスイッチもなく、操縦は後述する「骸機語」による口頭の指示で行われる。だが骸機となった者は少なからず知能の低下が起こっており、まるで幼子のように、安心できる相手からの指示しか受け入れることができないのだ。また、わざわざ外部からでなくコクピットに乗り込んで操縦するのも、親しい者の存在によって彼らを安心させる目的でしかない。


骸機語

骸機語は、骸機と化した人間が理解できる唯一の言語である。これは、元の母語がいずれの言語であっても同様である。その原因は未だ明らかになっていないが、一説には、機胚を生み出した外宇宙生命の言語なのではないかと言われている。骸機は頭部の他にコクピット内にも発声器官を持ち、搭乗者である騎骸士とコミュニケーションをとることができる。骸機の口腔の形状は人間のそれとは大きく異なるため、人間が彼らと全く同じ音声を出すことはできないが、近似の発音に置き換えることで骸機と意思疎通を取る方法が確立されている。

ここでは骸機語の概要を簡単に解説する。


音韻
骸機語は、以下の3つの短母音とそれに対応する長母音、また短母音を組み合わせた6つの二重母音を持つ。

表記 音素 表記 音素
a /a/ ai /ai/
i /i/ au /au/
u /u/ ia /ia/
ā /aː/ iu /iu/
ī /iː/ ua /ua/
ū /uː/ ui /ui/

子音は以下の21種類である。破裂音・破擦音は有声・無声・帯気を区別し、摩擦音には有声性や帯気性の区別はない。共鳴音は流音のみであり、鼻音はない。

表記 音素 表記 音素 表記 音素
p /p/ b /b/ ph /pʰ/
t /t/ d /d/ th /tʰ/
k /k/ g /g/ kh /kʰ/
z /t͡s/ ź /d͡z/ zh /t͡sʰ/
c /t͡ʃ/ ć /d͡ʒ/ ch /t͡ʃʰ/
s /s/ š /ʃ/ x /x/
rr /r/ r /ɾ/ rh /ʀ/

他、以下のような音韻規則がある

  • 軟口蓋音・口蓋垂音の後では、/i/ は [e]、/u/ は [o] として発音される。対応する長母音や、二重母音の初めの i や u も同様
  • 音節構造は CV または CVC のいずれかである
  • 破裂音は、調音点が同じもの同士、有声性・帯気性が異なるもの同士は連続しない
  • 破擦音同士、摩擦音同士、流音同士は連続しない。破擦音と摩擦音も連続しない
  • 摩擦音は、後続の破裂音の有声性に同化する

文法概要
骸機語は総合的言語であり、動詞に主語の人称や相・時制、態などを表す接辞が付加される。

baidathisī rraxkhūgaugrrā?
baid-a-this-ī rrax-khūg-aug-rrā
敵-(緩衝母音)-近称-対格 できる-倒す-二人称単数.未来-疑問
あなたはこの敵を倒すことができるか?


動詞
動詞には以下の順に接辞が付加される。

様性-語幹-人称.数.時制-法

人称・数・時制語尾は、以下の通りである

主格人称 現在形 過去形 未来形
一人称単数 -īź -iaź -iuź
二人称単数 -āg -aig -aug
三人称単数 -ui -ua
一人称複数 -īb -iab -iub
二人称複数 -āch -aich -auch
三人称複数 -ūdi -uidi -uadi

命令形
骸機語は主に騎骸士から骸機への指示に用いられるため、命令形の使用頻度が最も高い。命令形では、人称語尾を取り除く。

gāš!
前進せよ

phūg!
後退せよ

diurr!
止まれ

thirh!
飛べ


方向を表す接辞
動詞には、方向や様態を表す接頭辞が付加される。方向の指示には、クロックポジションが用いられ、それぞれの方向に接頭辞が割り当てられている。

12時方向 barr- 6時方向 xaź-
1時方向 dius- 7時方向 rrauzh-
2時方向 rhap- 8時方向 gāx-
3時方向 khīth- 9時方向 riz-
4時方向 ćūk- 10時方向 diub-
5時方向 phiarh- 11時方向 źukh-

khīthagāš!
khīth-a-gāš
3時方向-(緩衝母音)-進む
3時方向に進め

xaźduibgāš!
xaź-duib-gāš!
6時方向-方向転換-進む
6時方向に方向転換して進め

rizachīkadu baida.
riz-a-chīk-a-du baid-a
9時方向-(緩衝母音)-上-(緩衝母音)-ある 敵-主格
9時方向上空に敵

barrthaućaiš buaxdū baida.
barr-thauć-aiš buax-du baida.
12時方向-ビル-処格 後ろ-ある 敵-主格
12時方向ビルの後ろに敵


名詞
名詞は以下の順に接辞が付加される。

様性-語幹-定性と数-格

格語尾は以下の通りである。

主格 -a
属格
対格
与格
処格 -aiš
具格 -iukh

骸機語はOVS語順の頻度が最も高い。直接目的語、主語以外の要素は主語の後ろに置く。

Dīrirī phiachū Piranira
Dīri-r-ī phiach-ui Pirani-r-a
ディエリ-(緩衝子音)-対格 愛する-三人称単数.過去 ピラネ-(緩衝子音)-主格
ピラネはディエリを愛していた。

būzui Dīrira daithrataiš.
būz-ui Dīri-r-a daithrat-aiš.
死ぬ-三人称単数.過去 ディエリ-(緩衝子音)-主格 戦い-処格
ディエリは戦いで死んだ。

Ragrūrī khūgua Piranira khiabathisiukh.
Ragrū-r-ī khūg-ua Pirani-r-a khiab-a-this-iukh.
ラグロウ-(緩衝子音)-対格 倒す-三人称単数.未来 ピラネ-(緩衝子音)-主格 文書-(緩衝子音)-近称-具格
ピラネはこの文書でラグロウを打倒する。


コピュラ文
最後に、コピュラ文を紹介して終わりとする。コピュラは、動詞 du である。「A は B だ」の A を主格、B を与格とする。

durīź Piranirū.
du-r-īź Pirani-r-ū.
ある-(緩衝子音)-一人称単数 ピラネ-(緩衝子音)-与格
私はピラネだ。


警告

当文書は情報監査局により重大虚偽文書に指定されています。当文書を流布することは事実矯正法に抵触し、人権停止や生命途絶処分を招くことになります。

なお、当文書の執筆者であるピラネ・エンフェドヤには10月31日付で人権停止命令が下されており、身柄を拘束次第、生命途絶が執行される予定となっています。

制歴187年11月
ラグロウ民主共和国情報監査局

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