エスペラント祖語からアルカイカムエスペラントムとLingunaへの変化を書く。
前段
アルカイカムエスペラントムとLingunaは一見文法が離れているようにも見えるが、格変化が多様であることや人称変化が豊富であることなど似通った性質を持つ。
文法が離れている言語動詞でも似通った単語が多く存在することから、エスペラント諸語では基礎語彙含めて大量の語彙を方言借用し合っていると考えられる。その上で、借用しづらい文法接辞でレーベンシュタイン分析を行い、系統を作るとアルカイカムエスペラントムとLingunaは非常に近い数値を示す。
おそらくは両者の言語の時代が違う(アルカイカムエスペラントムは古語であり、Lingunaは現代語とする)ことやアルカイカムエスペラントムが基層言語による強い影響を受けたことが原因となって一見離れた系統に見えるようになっていると考える。
そこで、これらが共通祖語を持つものと考え、祖語構築を行う。
Arcaicam-Linguna祖語の発音と名詞の変化
音韻変化
アクセント規則
祖語では高低アクセントと強弱アクセントを併用していたが、全て強弱アクセントとなる。そのため、強勢のない高音アクセントは第二強勢となる。
全体的な音韻変化
エスペラント祖語に存在した長短の区別により、母音は次のように変化した。
eː>eː
e>ɛ
i>ɨ
iː>iː
o>ɔ
oː>oː
u>ʊ
uː>uː
また、tʃ>ts、ti>tsiの変化が起きる。
アクセントより後ろの音韻変化
第一強勢より後ろは次のような変化が起きる。
issn>iːsn>iːnn
第二強勢より後ろではさらに次のような変化が起きる
al>aː
a>ǝ
awl>aːw>au
rj>i
lj>j
ǝj>iː
ell>øl
さらにその後ろ(第二強勢の二つ後)の音節では次のような変化が起きる。
k>h
nl>nn
n>Ø
文法の変化
格変化
斜格から対格の意味が無くなり、具格の意味となる。分格が対格を表すようになる。不定奪格から属格が生まれる。定属格は接地詞de、不定奪格は設置詞ɛlで表すようになる。また、内格は奪格に吸収され、そこから奪格が場所の意味も表すようになる。
名詞は単数主格の-sが無くなる。複数は格変化が無くなり-iのみになる。
祖語の与格定形が形容詞となり、後置定冠詞の与格は不定形から類推で新しく作られる。
冠詞
後置定冠詞は次のようになる。
単数 | 複数 | |
---|---|---|
主格 | -u | -uj |
属格 | de -u | de -uj |
与格 | -ud | -ujd |
対格 | -un | -ujn |
奪格 | -øl | -øj |
具格 | -um | -uj |
入格 | -ɨnnǝm | -ɨnnǝs |
名詞
第一変化
不定単数 | 不定複数 | 定単数 | 定複数 | |
---|---|---|---|---|
主格 | -a | -æ | -au | -æuj |
属格 | -aehs | -æehs | de -au | de -æuj |
与格 | -iːnnad | -æd | -iːnnud | -æujd |
対格 | -an | -æn | -aun | -æujn |
奪格 | ɛl -a | ɛl -æ | -aøl | -æøj |
具格 | -iːnnǝ | -æ | -iːnnum | -æj |
入格 | -aɨn | -æɨn | -iːnnɨnnǝm | -aɨnnǝs |
第二変化
後置定冠詞の影響で複数主格が-ǝjとなる。
不定単数 | 不定複数 | 定単数 | 定複数 | |
---|---|---|---|---|
主格 | -ǝ | -ǝj | -u | -uj |
属格 | -ehs | -ehs | de -u | de -uj |
与格 | -ad | -ǝjd | -ud | -ujd |
対格 | -ǝn | -ǝjn | -un | -ujn |
奪格 | ɛl -ǝ | ɛl -ǝj | -øl | -øj |
具格 | -ǝm | -ǝj | -um | -uj |
入格 | -ɨn | -ǝjɨn | -ɨnnǝm | -ɨnnǝs |
中性変化
複数が第二変化と同じになる。
不定単数 | 不定複数 | 定単数 | 定複数 | |
---|---|---|---|---|
主格 | -ǝm | -ǝj | -u | -uj |
属格 | -ehs | -ehs | de -u | de -uj |
与格 | -ad | -ǝjd | -ud | -ujd |
対格 | -ǝn | -ǝjn | -un | -ujn |
奪格 | ɛl -ǝ | ɛl -ǝj | -øl | -øj |
具格 | -ǝm | -ǝj | -um | -uj |
入格 | -ɨn | -ǝjɨn | -ɨnnǝm | -ɨnnǝs |
形容詞
形容詞は祖語の与格後置定冠詞に由来する。
与格が別の形で表されるようになり、形容詞に格の一致が生まれる。al>aːの変化により長音となっている。複数主格は類推により長音となる。もともと奪格も形容詞機能を持っていた影響で、属格と奪格にそれぞれの形が受け継がれる。また、与格後置定冠詞の形容詞的用法の原義が「~への」「~のための」という方向を持った意味のため、同じく方向の意味を持つ入格は意味が重複してしまうため名詞と同じ活用形となる。
単数 | 複数 | |
---|---|---|
主格 | -aːm | -aːj |
属格 | -ehs | -ehs |
与格 | -aːd | -aːjd |
対格 | -aːn | -aːjn |
奪格 | -øl | -øj |
具格 | -aːm | -aːj |
入格 | -ɨnnǝm | -ɨnnǝs |
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