この記事は架空世界・架空国家創作 Advent Calendar 2025 2日目向けの記事となります。
そして、語学・言語学・言語創作 Advent Calendar 2025 6日目向けの記事と対となる記事になります。合わせてお読みいただければ幸いです。
coi rodo mi'e .slaimsan.
こんにちは。スライムさんです。架空世界・世界創作の方は初めましてになるかもしれません。私は人工言語を見たり作ったりするのが好きな一般人です。人工言語が応用できる場として、架空世界や架空国家の創作に顔を出すこともあります。
0. 前提事項
今回は、「架空世界向け人工言語作成の依頼の仕方」というテーマで記事を書いていきます。想定読者は、主に架空世界創作をしている人で、特に言語に関してあまり詳しくない人を想定しています。
架空世界創作において、架空の言語を作りたくなるケースがあるかと思います。しかし、言語に詳しくないので詳しい誰かにお願いしたい。そんな時にどのような点に注意して依頼をすると良いだろうか、というのを考えをまとめたものになります。
あくまで案であり、この方法で上手くいったという実績があるわけではないので、もしこれで上手くいった、上手くいかなかったという話があればコメントで教えてください。
1. 成果物の定義
作ってもらいたいものを定義しましょう。おそらくなのですが、架空世界の言語を作ってやりたいことは、「人名や地名の命名」なのではないでしょうか?
いや、人によっては文字の方が先に作りたくなるかもしれないですね。確かに文字は異世界感や異国感がビジュアル的に示せるので良いのですが、どのようなタイプの文字が適しているのかを考えるには、まずは言語の構造の方から考えたいのが言語作成者の考え方のような気がします。なので、文字を作りたいという場合でも、まずは言語の構造の方から考えることをお勧めします。
話を戻します。言語を作ってやることは、おそらく命名でしょう。これは私が参加している亜空世界の中での経験からそうだと考えています。大抵、地名を付けるのが言語としての作業の大半で、憲法の前文を翻訳するような行為はほとんどないでしょう。というわけで、成果物は人名や地名の作成に絞ってしまいましょう。
2. 響きのイメージを伝える
人工言語を作っている人が最初に着手するのが、どういう音にするかという部分です。専門用語を使うなら「音素」を決めるということです。音の種類はいっぱいあり、これを全部指定するのは、知識がない場合は難しいでしょう。しかしここで上手い伝え方がいくつか考えられます。
2-1. 既存の言語で伝える
「xxx語風な感じで」と伝えるという方法です。英語のような響きなのか、中国語風なのか、アラビア語風なのか、そういう既存の言語でイメージを伝えてみましょう。
何も考えないと英語風な響きを想定してしまいがちなのですが、それ以外にも言語はいっぱいあるので、これを機に気に入った響きの言語を探してみるのはどうでしょうか。GeoGuesserの言語版である languageguessr というゲームがあるので参考にしてみてください。
2-2. キーとなる固有名詞を提示する
固有名詞というのは、人名や地名のことです。既に国の名前が決まっていたり、重要人物の名前が決まっているなら、それが響きの大きな手掛かりになります。慣れている人なら「この母音と子音が有って、この音の並びが許容されているんだな」と考え始めます。
3. 語順 - 形容詞が先か名詞が先か
文章を翻訳するようなことはしないので文法はほとんど考える必要はないのですが、命名規則を作るにあたってどうしても決めておきたい事項があります。それは、「赤いリンゴ」というのか「リンゴで赤いの」と言うのかという規則です。専門用語で言うならAN語順なのかNA語順なのかを決めようという話です。
これは命名するときに広範囲に渡って影響を及ぼします。例えば日本語では「富士山」は、その地名のカテゴリを表す「山」という言葉が後に来ます。でも英語では "Mt. Fuji"のように、カテゴリを表す Mt. が先に来ることがあります。これが地名を命名するとき全般に渡って出てくることになります。
また、人の名前も家族名が先になるのか後になるのかというところに影響することがあります。家族名はどちらかと言うと修飾的な要素なので、形容詞が前に来るルールなら、家族名が先になりがちです。もっとも、人名の並べ方にルールがあるようなら、同時にそれを伝えた方が良いです。
4. 前置詞を使うか後置詞を使うか
これも文法部分になってしまうのですが、文法関連はこれで最後です。
前置詞は英語でお馴染みかと思いますが of とか in とかのやつです。後置詞は日本語の「てにをは」のタイプの単語です。これらは二つの単語を結びつける要素なのですが、それが単語の前に付くのか後ろに付くのかで命名が変わってくることがあるので、なるべく決めておきたい事項になります。
例を挙げると、フランス語の地名 "Côte d'Azur" があります。「紺碧の海岸」という意味なのですがこの d(原型はde) の部分が前置詞になります。Azurの前にくっ付いて発音が短くなって d'Azur となっています。このような発音の変化や単語の並べ方に関わるので、この部分はイメージがあるようなら、伝えておいた方が良さそうです。
5. 周辺情報の提示
架空世界の言語なので、その架空の社会の情報は伝えておいた方が良いでしょう。例えば国家なら、どういう地形の国で、人口がこれくらいで、文化はこんな感じでという基礎的な情報です。言語に直接影響することはないかもしれませんが、イメージを膨らませるのに役に立ちます。
後は、周辺国の情報も必要かもしれません。場合によっては、他国の言語の名前が借用されている地名なども考えられます。手を出し始めると沼にはまるのですが、参考レベルで周辺国の言語情報はあった方が良いかもしれません。
さらに、歴史的に祖先となる言語があるようなら、それも伝えた方が良いでしょう。これもやりすぎると沼にはまりますが、歴史言語学的におかしくないような設定を考えるのに役立ちます。
6. 文化的な概念
特殊な概念の単語が存在すると面白いかもしれません。
例えば、日本語では「足」と「脚」は区別しないですね。言語によって何と何を区別する/区別しないというのが異なります。何も考えないと日本語の考え方に引っ張られてしまうのですが、ちょっと立ち止まって考えてみると面白いです。「海も湖も池もこの言語では区別しないです」となれば、地名の付け方にも影響がでてきますし。
7. 終わりに
上記に書いたやり方は提案レベルになります。やってみて上手く行った上手く行かなかったがあればご連絡いただけると助かります。みんなでやり方をブラッシュアップしていけたらと思っております。
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