第 2 回は名詞の性と定性について触れた後に、「A は B である」という繋辞文の作り方を説明します。なんか語学書の最初って感じがしますね。
性
フェンナ語の名詞は、全て「赤性」か「青性」かに分けられます。この区別を「性」といいます。
フランス語やロシア語などをやったことがある人には、全ての名詞が男性か女性 (言語によってはさらに中性) に分類されているという状況に馴染みがあるでしょう。フェンナ語の性もそれと同じです。ただし、フェンナ語の性は、動物の生物学的な性別とは全く関係がありません。
赤性の名詞は、基本的に子音で終わるか е で終わります。一方で青性の名詞は、基本的に о で終わります。語尾を見ればその名詞の性が分かるということですね。例えば、фе̄ссар「リンゴ」は р で終わっているので赤性名詞で、дозе̄ско「図書館」は о で終わっているので青性名詞です。
ただ、一部の単語は長母音で終わることがあり、そのような単語については語末の短母音から性を判断することができません。残念ですが、そのような単語の性は個別に覚えましょう1。
人間の性
フェンナ語話者は皆、自分が赤性なのか青性なのかを決めています。すでに述べたようにフェンナ語の性というのは生物学的な性別とは無関係なので、これは性別から決めるわけではありません。自分に対するイメージが赤性の名詞の雰囲気に近いか青性の名詞の雰囲気に近いかで決めます。
したがって、これを読んでいる皆さんも自分が赤性なのか青性なのかを決めなければなりません。そうはいっても、今の時点では赤性や青性の雰囲気など分からないと思うので、直感で決めてしまいましょう。一度決めたら一生変えられないというわけではないので、フェンナ語に慣れてきた頃にもう一度考え直せば良いです。
人を表す名詞には、赤性のものと青性のものの両方がある場合があります。例えば「教師」を意味する単語には、赤性名詞の чӣҕҕас と青性名詞の чӣҕҕасо があります。これは、対象となるその教師が自分を赤性だと思っているか青性だと思っているかに応じて使い分けます。
定性
名詞が指す対象が具体的に何なのか聞き手が文脈から判断できるとき、その名詞は「定」であるといいます。そうでないときは、その名詞は「不定」です。この定と不定の区別は「定性」といいます。
フェンナ語では定か不定かによって適切に名詞の形を変えないといけないので、この違いには気をつけないといけません。
名詞が定のときは、名詞の前に ле- か ло- が付きます。英語の定冠詞のようなものですね。どちらが付くかは単語によりますが、その名詞に含まれる長母音が е̄ なら ле- が付き、長母音が о̄ なら ло- が付きがちです。例えば、фе̄ссар「リンゴ」なら лефе̄ссар になり、ко̄шар「太陽」なら локо̄шар になります。
長母音が複数あったり、長母音が е̄ でも о̄ でもなかったりする場合は、ле- か ло- のどちらを付けるかは単語ごとに覚えるしかありません。
固有名詞はそもそも指す対象が具体的なので、常に定として扱われて ле- や ло- が付きます。特に人名も固有名詞の一種なので、常に ле- や ло- が付きます。
なお、名詞が不定のときは、特に何も付けません。
繋辞文
〈名詞 A + е̄к + 名詞 B〉で「A は B である」という文になります。A が青性名詞の場合は、е̄к を е̄ко にします。
Лезе̄бацце е̄к ме̄ре̄е.
لزيبڅّ ييک ميريي.
🞂 その動物は猫です。
зе̄бацце「動物」 · ме̄ре̄е [定: леме̄ре̄е]2「猫」Лефӣхто е̄ко чӣҕҕасо.
لفيخط ييک چيغّس.
🞂 フィーフトは教師です。
фӣхто [定: лефӣхто] 「フィーフト (人名)」 · чӣҕҕасо [定: лочӣҕҕасо]「青性の教師」
〈名詞 A + е̄к + 名詞 B〉の形において A を省略すると、文脈で前に出てきたものを受けて、「それは B である」や「彼/彼女は B である」の意味になります。
Е̄к тӣӯал.
ييک طيووال.
🞂 彼は学生です。
тӣӯал [定: лотӣӯал]「赤性の学生」Е̄ко дозе̄ско.
ييک دزيسک.
🞂 それは図書館です。
дозе̄ско「図書館」
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不規則性があるような言い回しをしましたが、実は厳密にはフェンナ語に不規則なものはほとんどありません。長母音で終わる単語についても、(由来さえわかれば) 性を理論的に導き出すことができます。ただ、その理論というものが結構複雑なので、実用を考えるなら単語ごとに暗記する方が早いです。そのため、ここでは不規則であるかのように説明しました。 ↩
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この ме̄ре̄е や後に出てくる тӣӯал のように、母音字が 2 個以上連続する単語は珍しくありません。このような単語が発音されるときは、実際には母音と母音の間に /j/ や /w/ が挿入されることが多いです。е や и の前では /j/ が挿入され、о や у の前では /w/ が挿入されます。 ↩
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