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ΚΥΑΝΟΦΑΝΕΣ
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名もなき者達の言葉(第10回人工言語コンペ)

お題

邪神、悪魔、亡霊、悪鬼…この世に存在する邪悪な者たち。
その邪悪な存在と交信し、召喚するのに使われるのはある特別な言語。
さて、それはどんな言語でしょうか?邪悪な存在に関する神話や伝説の体系と、交信や呪文に使われる言語を作り解説してください。
ただし、もし「本物」を召喚してしまった場合は自己責任となりますのでご注意を…

どうも、Cyanophanēsです。
今回は初めて人工言語コンペに参加してみようと思います。

名もなき者達について

名もなき者達

どんなに掘っても辿り着けない程地下深く、名もなき者達が住んでいた
どんなに古き者達も、神々さえもほとんど知らぬ
いつ生まれたか、何から生まれたかも誰も分からぬ
ただ分かるのは、力持つ者達ということのみ

-「創世の歌」より
「創世の歌」はドワーフによって書かれたかなり昔の文献ですが、それにおいても彼等が何なのかはほとんど分かっていません。彼等は神々の支配の及ばぬ、邪悪な者達と考えられていて、何らかの特別な力を持っているとされています。

交信の始まり

上で書いた通り名もなき者達のことはほとんど分かっていなかった上、時間も経ちただでさえ少なかったその存在を知るものがほとんどいなくなったある時、彼らとの交信が始まりました。
ある若い男が放棄されたドワーフ館(ドワーフが山を開拓して作った住処)にあった穴に落ちてしまいました。
そして気付けば少し街のような場所に居ましたが、明らかに人の作った都市ではありませんでした。空気は重く湿っていて、薄くもやがかかっていました。天にはただ暗闇だけが広がっていました。異質な雰囲気漂う街を進めば、そこには人ならざる者がいました。それこそが名もなき者達です。
彼等は男を洗礼し、自分達の言語と呪文の力を習得させました。
男はその呪文の力で地上へと戻り、地下での体験を人々に話しました。
それを聞いて力を欲する者や、何かを強く欲する者達はその言語を習得し、名もなき者達との交信を始めました。

名もなき者達の詳細

あの者達は、そうだな、とても形容し難い姿であったよ……
とにかく、こう、様々であったのだ。
我々みたいな人型のものもいれば、もっと、異形というに相応しい者もいた。
人や動物のような手足を持つ者もいれば、触手を持つ者もいた。
目の有無や、口の有無など、様々な違いがあった。
あの者達の言語はとても不気味でありながら、歌のような抑揚があり美しかったよ。全く、どこからあんな声を出すのだろうな。特に、口の無いのは。

-「地下伝」より
地下伝は上で書いた男の話を記録したもので、それによれば名もなき者達の姿は様々で、言語は歌のようであったといいます。
彼等との交信を記録した「交信録」によれば、彼等はいくつもの氏族がいて、氏族によって姿が様々なのだといいます。
基本的にはその姿などが詳細に語られることはないが、「地下伝」には一人だ他より詳細に説明されている者がいます。

司祭と呼ばれていた者は特によく覚えている。
何百もの目を持ち、7本指の手を持ち、10本指の足を持っていた。
そして、左右にそれぞれ4本の触手を肩から生やしていた。
顔には鼻はなく、大きい口と、そこから垂れる長い三叉の舌を持っていた。
背は高く、とても威厳と威圧感があり、肌の色は赤紫だった。
そうそう、彼等も服のようなものを着ていたよ。ただ、人間のとはやはり違う気がしたな。草を編み込んだようなものもあれば、毛皮っぽかったり、布っぽかったりするものがあった。模様もこっちでは見たことないものであったな…………司祭もいかにも司祭って感じのを着ていた…………
それでだ、彼のあの目は…………凄いものであった。何百もの目が、私の心の底までを見透かすようにこちらを見てくるわけだ。彼の前では隠し事なんて一切できないと思った。彼は、私がここの者達は気持ち悪い者達だ、早くここを出たいと思っているのをすぐに見透かしたよ。てっきりその時は殺されるとでも思っていたが、かなり寛大な対応をしてくれたのを覚えている。洗礼をし、言語や呪文の力を実際に教えてくれたのは彼であったよ。
彼は、とても深く深く威厳のあり、何か不気味さと同時に心地よささえ感じてしまう声で、あの歌のような言語を喋るのだ。
彼はいつも祈りを捧げていた。両手を合わせ、触手で弦楽器のようなものを弾きながら、何かを唱えていた。彼によれば自分達の多くは天よりも上に眠る神々によって作られ、その力を与えられたというので、神々にその感謝を捧げているのだという。

-「地下伝」より
地下には司祭という者がいるようで、どうやらお祈りや洗礼をしたり、言語や呪文を教える教師のような役割のようです。
他にも、交信録などの情報を見ると、彼等は理由は不明ですが、比較的人間に対して友好的に接してくれることが多いようです。

言語について

概要

この言語は、上で書いた通り名もなき者達の話していた言葉でした。
会話や呪文、神との交信や祈りにこの言語を使っていましたが、ある男にこの言語を教えてから人類との交信としても使われています。
基本的には歌うように喋らなければならず、特に交信や呪文などにおいては完全に歌っています。
また、文法としては膠着語で語順はSOVです。ただ、あくまでSOVというのは基本の語順であり、格などがあるので入れ替えることも可能です。

音韻

子音 両唇 舌尖 舌端 反り舌 硬口蓋 軟口蓋 口蓋垂 咽頭 声門
破裂音 p ʈ c k q
無声摩擦音 ɸ ʂ ç x χ ħ h
有声摩擦音 β ʐ ʝ ɣ ʁ ɦ
側面摩擦音 ɬ,ɮ
鼻音 m ɳ ɲ ŋ ɴ
ふるえ音 ʙ r
接近音 w ɻ j
側面接近音 l ɭ ʎ ʟ

スペル上CwVとなっているものはCʷV、CjVとなっているものはCʲV、CħとなっているものはCˤ、ChとなっているものはCʰ、CɦとなっているものはCʱと発音します。
また、破裂音は、有声音に囲まれている、あるいは直後にɦがある場合は有声音として発音します。

母音は基本的には単母音ə、長母音əː、超長母音əːː、息漏れ音ə̤、鼻母音ə̃ですが、子音が母音化することがあり、例えばwやjはその後に母音が続かない場合は母音i,uになります。
また、əは人間の発音では、硬口蓋音や口蓋化音の後ではeとして、wやħや咽頭化音の後ではoとして、それ以外でɑとして発音することがあります。
また、この言語では母音に
ə̂超高5
ə́高4
ə中3
ə̀低2
ə̌超低1
の5つの高さがあり、長母音はə́ə̀という風に表し、これは高さが4から2へと下がることを表し、ə̀ə́であれば2から4に上がることを表します。
また、ə́ə̀ə́であれば4から2に下がり、そこから4にまた上がることを表します。
また、超長母音の場合はə́ə̠̀という風に最後の母音に◌̠を付けます。

文法

名詞類

代名詞 単数 双数 複数
一人称 wəx pəʂ、ɸəʂ pəə、ɸəə
親称二人称 jəx cəʂ cəə
敬称二人称 pt̻ə̂ pt̻ə̂ŋʂ pt̻ə̤̂ɦɴ
有生 çəx çəʂ çəə
無生 xəx xəʂ xəə
人工 n̺əx n̺əʂ n̺əə
これ ʈəx ʈəʂ ʈəə
それ qəx qəʂ qəə
あれ ʙəx ʙəʂ ʙəə
疑問 sħəx sħəʂ sħəə

一人称双数、複数においてpで始まるものは除外形、ɸで始まるものは包括形

名詞語尾
格語尾

絶対格kj̀j
能格kẃw
分格ɡə̌
与格rpə
所有属格səə̂
位置属格ɴww
奪格ʂwŋ
具格ʈn̺
様格ʂɲ̀
位格jrŕ
方格pxɭ
為格χət̻
共格ħə̌ə̂
呼格ə̠̂

副語尾

主題qħə̀
双数ŋʂ
複数◌̤ɦɴ
~の上n̻ẃẃs̺
~の上の辺りtwə́ə̂
~の下ɲə̤̀j̀
~の下の辺りɣwə̀ə̌
~の横pət̺
~の中mjə̀ə̠́
~を通ってkjɭʈ
~についてŋəjk
~までs̻wə̂ə̀
~もpħəɻ
など
格語尾は少なくとも必ず1つは名詞節の最後の単語に付ける必要があり、
副語尾は付ける必要はありません。
また、形容詞で名詞を修飾するときは名詞+形容詞の順が基本で、上にも書いた通り最後に来た単語に格語尾をつけます。単数や複数も最後の単語に付けます。~のを付けるときは一番最初に付けます。
例)ɳəʎə́ qhə̂ə̠̂jrŕ大きな家に(家 大きい 位格)
wəxsəə̂ n̻ħə́ ŋəħə̤́ɦɴχət̻私の良き友たちの為に(私 所有属格 友 良い 複数 為格)

名詞のタイプ 有生 無生 人工
動物 死んだもの、体の部位、自然由来の動物以外のもの(植物など) 人工的なもの、眷属など)
形容詞語尾 çʟ n̺ʟ

名詞のタイプは、形容詞で修飾するときや、代名詞にするときや、動詞に人称語尾を付ける際に使います。

動詞

動詞のほとんどは基本的に分詞、動名詞しか持たず、単体で使うことができません。なので、コピュラ動詞であるəməcを共に用います。

基本動詞の形

現在分詞形(辞書形)ʂəj
完了分詞形ɲjj́
未来分詞形rħə̀
動名詞形khə́
動形容詞形ʂəjn̺

əməcは基本的には
条件法接辞-主語語尾-əm-法-時制-態-直接目的語語尾-間接目的語語尾-否定
の順で接辞をくっ付けます。

人称接辞 主語 直接目的語 間接目的語
一人称 w ə̃w
除外双数 pʂɳ ə̃pʂ
除外複数 p ə̃p
包括双数 ɸʂ ɸʂɳ ə̃ɸʂ
包括複数ɸ ɸɳ ə̃ɸ
二人称 j ə̃j
二人称双数 cʂɳ ə̃cʂ
二人称複数 c ə̃c
有生 ç çɳ ə̃ç
無生 x ə̃x
人工 ɳɳ ə̃ɳ

三人称双数、複数形には語尾の前にʂ、ɴɴを付けます。
また、敬称二人称は三人称有生扱いです。

人称以外の語尾など

条件法kʎ-
命令法-hj-
接続法-ŋj-
希求法-χʟ-
過去-ʟʟ̌-
逆受動態-wt̺-
否定-rə̀
不定形-əc

命令法を使うときは主語語尾を単数ならjə、双数ならcʂə、複数ならcəにします。
また、直接目的語や間接目的語を使わない命令においては、əməcを使わなくても動詞の語幹をそのまま使うことで命令にできます。

現在分詞 完了分詞 未来分詞
直説法現在 今すること、していること し終わったこと これからするであろうこと
直説法過去 過去していたこと 過去したこと 過去したかもしれないこと
条件法現在 仮定 仮定と推定
条件法過去 反実仮想
接続法現在 願望、丁寧なお願い、勧誘、提案 確認 強い願望~であれ!!あるいは仮定の~するだろうという部分に用いる
接続法過去 ~だったら良かったなぁ 反実仮想の~だったろうにという部分に使う
希求法現在 今軽い呪文を実行する 強い呪文を時間をかけて実行する
希求法過去 強い後悔や怨念を表し、呪文の力を増幅する

上の表の通り、希求法は基本的に呪文や交信のための法です。

yes,no疑問文

動詞の末尾にʙə̤を付ける。yesはʁə̠̂、noはmə̂ə̌ə̠̀

接続

動詞のある名詞節

「あなたが人間である"と"知っている」や「あなたは神に祈る"と"おっしゃられた」の"と"はəməcの一番最後にçəkħを付けます。
「~のとき」というのはəməcの一番最後にʝəmを付けます。
「~だから」のからはçəkħの後にə̀ɻə́を付けます。

接続詞

○○と○○ zə́
○○や○○ ɴqə́
そして ɲəɲɦ

呪文や交信の仕方

呪文、交信とは

まず、呪文というのは名もなき者達が使っていたもので、自身の願いを叶えたり、門番や何らかの仕事をさせる為の眷属を作るものです。
交信は名もなき者達が神に祈ったり、交信する為に使われていたものです。
これらは基本的に自分でメロディーに載せて歌うことが必要になります。

呪文や交信の方法

呪文の方法

呪文をするには、まず名もなき者達の言語を覚える必要があります。
そして彼等と交信をし、呪文を行えるようにしてもらう必要があります。
それができたら呪文の準備は完了です。
呪文は希求法を使うことで行うことができ、また、上にも書いた通り希求法過去+過去分詞を使うことで力を増幅させることができます。
物を作ったり開かずの扉を開いたりなどの簡単な呪文には、希求法現在と現在分詞を使います。
例えば、お金が欲しかったらこう歌いましょう。

cʎə̀ɴ qhə́əʂəj wəmχʟɳɳ!!

「私がお金を持っていればなぁ」という意味です。
召喚などのより難しい呪文は希求法現在と未来分詞を使います。
ちなみに名もなき者達は自分達の姿を地上の人に見せるのは好まないので、あくまで呼び出せるのはその眷属だけです。
眷属も大体は地上の人にとって、より馴染みある姿(羊や馬など地上の動物の姿、あるいはそれらを合わせたもの)になっていたりします。
それでは、召喚してみましょう!

ʁə́ə́rə̠̂!wəxjrŕ ŋrrrħə jəmχʟ!!

「眷属よ!お前が私の所に来ればなぁ!」という意味です。

交信の方法

交信をするには、まず名もなき者達の言語を覚える必要があります。
そうしたら特別な草とキノコを混ぜたスープであるLogrrと呼ばれるものを飲み、特別な弦楽器であるkrrəを弾きながら希求法で交信のための歌を歌いましょう!!
呪文を習得するのにもこれが必要で、このときは司祭と交信する必要があります。
ちなみに呪文も交信も割とすんなりやらせてくれるので安心してください!

終わりに

こんな感じで割と便利な言語がこの言語です。
習得までは少々時間がかかりますが、周りの交信師や呪文師が優しく教えてくれるでしょう!!
皆さんも使ってみてはいかがでしょうか。

そういえば、大事なことを書き忘れていました。
上で書いた男の最後についてです。人間ですから、彼も終わりというのは免れることが出来ません。
ただ、交信や呪文を大量に行ってきた彼の最後は、少々奇妙なものでした。
ある晩も、彼は交信をしていました。そして彼はいきなり村中を走り回り、このよう叫びました。

全て分かった!!全てだ!!交信はするな!!呪文もするな!!全て燃やしてしまえ!!!この記録は残していてはいけないのだ!!!!
なぜ彼等に名前がないか分かるか?彼等には名前などあるべきじゃない!!
彼等のことを、頭の中に入れておくべきじゃないんだ!!
なぜ彼等は我々に優しくしてくれたか分かるか?供物を捧げさせもせず!!
彼等は我々のことを利用しているだけだ!!我々こそが供物なのだよ!!
愚か者どもめ!!
あのドワーフ館が放棄されていた理由が分かった…………あれは温床だった………
あの司祭め…………!!!
私にはすべきことがある!!行かねばならぬ!!!
最後に言っておくが、彼等のことは全て忘れよ!!!

そうして彼は腕を広げ、目をつぶり、空を見上げながら遥か向こうへと歩いていきました。それ以降彼を見た者はいないと言います。
まぁ、あくまで彼の精神がおかしくなっただけで、今もこの言語を使っても良いと言っている人も居ますから、安心してください。
ただ、使うならばこのことを留意しておく必要があるかもしれませんね…………

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