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第15回人工言語コンペの個人的感想

 どうも、friedriceです。
 今回も出題者ではないですが、勝手ながら参加者の皆さんの言語について講評(ほぼ感想)を書かせていただきました。講評の特殊性は出題者のかめりぁさんに丸投げするつもりなので前回の講評とやり方はほぼ変わりないですが、見ていってくださると嬉しいです。

目次

  • お題 by 出題者
  • 全作品の講評
  • 出題者賞発表後の感想

個人制作者名について、(基本的に)DiscordまたはMigdalのユーザー名に敬称有で表示しております。どちらかに統一してはおりません。ご了承ください。

お題

「無」の持つ性質を文法に組み込んだ言語を作ってください
以下が審査要件です(満たしてなくても出していいよ!)
1.言語体系
2.その言語のどこに「無」が組み込まれているか
3.簡単な例文いくつか(文法の性質が活きているとなおよい)
以下は出来ればで提出してくれると私がうれしいものです
ex1.その言語を話す主体の特徴と居住地域
ex2.その主体たちの間での今年の流行語

講評

A.シンラン語 by 舞孫弗たつきん。さん

 今回の一番乗りは舞孫弗さんでした!おめでとう!!(小さな拍手)
 さて茶番はこのあたりにして、本題に入りましょう。今回の講評はテーマにもある通り「無」の要素を中心にしながら見ていきます。
 音韻が難しくなく、単語の曲用に関してもシンプルなので、世界共通語としてあり得ます。その中で、「人間と吸血鬼が共存する世界」という舞孫弗さんが好きな設定をうまく活かして、削れる部分を削っています。
 例えば、「人を表す特別な単語が無い」や「晴れと曇りの区別が無い」などですね。本当にその世界で発展した言語、という感じがします。「フォーマル単語・敬語などが無い」というのはもしかして、「出会ったら血を吸うから一期一会」ということなのでしょうか?だとしたら怖いですねぇ。
 一番乗りでこれ出されてプレッシャーが大きくなりました。シンプルさと美しさを重視しながら、お題も綺麗に回収する、エレガントな作品だと思いました。

B.ムボイン語 by slaimsanさん

「聞き取りやすいか」「聞き間違いが発生しやすくないか」は私がよく検討してるポイントですね。(by スレでの製作者さんのコメント)

 これをすごく重視しているのが伝わってきました。子音しかないからこその分かりにくい子音連続への対応が親切です。
 途中のBNF表記はよくわからないので触れないとして対象の語を省略することで様々な意味の否定文にする、という発想は流石です。「人間が水ではないものを飲む」というのと「人間が水を飲まない」という文のどちらもをコンパクトな文法で書けるのは良いなと感じました。前置詞などが無いので複雑な文章に対応しにくいという部分はあるようですが、かなり十分だと個人的に思ってます。それくらい完成度が高いです。
 単語を生成する機構についての記事(?)も読んでおこうと思います。直球だけど芯がちゃんとある作品でした。

C.セレニッタ語 by チーム 炒飯定食

 私とせんちゃ!さんによるチーム「炒飯定食」の作品です。
 設定がごちゃごちゃしていますし、文法もお題にかすり程度でしかない気がしますが、ぜひ講評をお願いします!
 …ちょっと尺がありそうなので少し余談をば。
 前回の作品「靴屋語」では有名な童話を元に作ったものなのですが、今回は完全に自分で考えた設定です。キモ発音が最後まで残ったのは、簡単だったらどんどん使えるじゃんとなって世界が書きたい方向に行かなくなると思ったからです。おかげで、単語作りの時にnの異音を出すことを意識に置かなければならなかったので大変でした。ZpDICは校正してませんので間違いがあったら提出した記事のコメント欄にて指摘してもらえると嬉しいです。
 今回の記事は一万文字あります。長いと思いますがぜひ最後までお読みください。

D.エゼブガンボ語 by Tatsukiさん

 初参加の方の作品です。でも個人的に「負けたなぁ~」と思いました。それくらい発想が強い作品です。
 設定は3~4mmくらいでしかないですが私の作品と似てます(世界統一国家が存在すること)。「人類の全ての言語が活用できる」って結構すごいですよね。脳内チップが悪用されないことを願わんばかりです。
 その単語が文において何の役割を果たすか、ということさえ分かればいいので、固定語彙を無くすということでお題を達成しているのが自然です。今回私は、一旦言語を作ってそこから「無」に寄せる感じで変えていったので結構不自然です。構成って大事ですね。
 流行語も面白いです。日本語での「てにおは」が流行語になっているのとほぼ同じですから、その世界での暮らしや人々の心情が目立った言葉だと思います。
 記事の文字数は(画像に入っている物を除くと)800文字ですが、それでも内容が沢山詰まった作品でした。私s Thankvpr!

E. by Lilith ⊂Ꮮıïᔨさん(リンク無し)

 全て無だから講評も無で、という冗談は置いておいて、感じたことをつらつら書いていきます。
 まず、「どこまでが言語か」という点ですね。これは言語学また人工言語界隈において重要な問いだと私は思います。
 少し話が逸れますが、「4分33秒」という曲が存在します。これは4分33秒間演奏が一切ない曲です。

「沈黙とは無音ではなく『意図しない音が起きている状態』を指し、楽音と非楽音には違いがない」という作曲者の主張が表れている。
(Wikipediaより、多少の編纂有)

 この考えのように、言語によるコミュニケーションと非言語的で不規則なコミュニケーションの境目は存在しない、と私は主張します。悪魔の証明にはなりますが、それが「不規則だ」と決めつけることはできないからです。
 この言語も、私たちが理解できる何かしらの規則的なコミュニケーションが無いというだけで、我々の認知し得ない規則性(たとえばテレパシーなど)がある可能性があります。もしそれが設定において「全てにおいて完全な無」であると定義されていなければ、ですけどね。
 お題に完全に応えているわけではないですが、正しくはある、そんな作品でした。この言語を使用する人々の文明が少しでも前進することをお祈りします。

F.「nsi"pa"?」語 by 降雨急行さん

 新しすぎてついて行けません。敢えて言います。助けてください。
 不思議な民族(生物?)が話す言語ということで、一気に自然言語みが増しました。中々異質ではありますけれど。Migdalメンテナンス直前に降雨急行さんが投稿された「青肌」の言語となにかしら関連があるのでしょうか。ぜひ教えてください。
 「無」要素は無音化・見せない(?)・名詞無し・形容詞の曲用無しの四つですね。最後に関しては普通話などで見られることがありますが、前3つはかなり特殊です。特に無音化・(?)に関してはその性質をうまく活かしています。例えば、括って無音化したり消したりする、というややこしい部分が、「秘密を守る」という目的に合っていますね。それで主語や目的語の表示も達成できるのがかっこいいです。
 流石前回の出題者といった感じです。難しさはありましたが学びの多い作品でした。

G.アビカ語 by 糸利さん

 今回の作品の中で、設定が一番綺麗だと個人的に思った作品です。早速見ていきましょう。
 子音を歯茎音だけで完成させてるのが面白いです。不自然な当て字もなくて良いです。
 品詞の中に、「不在詞」という特殊なものがあります。これが文中に常に存在している(現在形の文では基本省略)ため、何かしら特別なことをしない限り、その文は否定文になるようです。つまり、肯定文にするにはまた否定を入れる必要があるということです。いわゆる二重否定ですね。「文法に『無』を入れる」というお題を見事に達成しています。
 私が見逃しているだけかもしれませんが、流行語がないですね。「無」の世界という設定なので、無い方が理にかなっているかもしれません。世界観にとても惹かれる作品でした。

H.未来口語 by チーム DLISTOLON=MALS

 いももちさんとnove022さんによるチーム「DLISTOLON=MALS」(意味:インフルエンザ,第12回コンペとほぼ同じ)の作品です。またしても意味の分からないチーム名です(人のこと言えない)。
 「未来文語で書かれた、後近世日本語と未来口語の差異についての論文」という設定の記事だそうです。もう日本語が日本語じゃなくなってるんですよね。
 この人たちの言語最近音韻変化が主だからどこ評価すればいいのか分からないという本音はドブにでも捨てて、まずその音韻を見ていきましょう。色々欠落したり母音に挟まれた子音が変化しているあたり、なぜ文語と乖離していったのかが気になります。海面上昇があったせいで、識字率が急激に下がった、ということなのでしょうか?
 さて、お待ちかねの文法です。

 この言語の無は究極の恣意性にあると言いましたが、これのどこが「無」なのでしょうか。その核心は、単語の表すところが著しく主観に委ねられる点です。その語の価値が実質的に無限ならば、客観的には全く意味がわからず、これは意味を持たないに等しいと言えるでしょう。(記事からの引用)

 なるほど、主観性が強すぎて意味を持たないことが文法になっているんですね。確かに言語としては成り立っていますが、作品Eで述べた私の持論からすると、コミュニケーションとしての意味をなさないことになります。コミュニケーション用ではないの言語なら良いのですが、これは「口語」ですので…
 まあ何にせよ、設定は良い作品だと思いました。未来文語の逆に昔に戻ったような不思議な感じも相まって、です。
 いももちへ。何をレスバしていたのかまた教えてください。

I.1音節あたりの情報密度が最も高い口頭言語 by やみせふぇさん

 ンアッーーーーー!「一音節」の意味が広すぎます!
 そんなに音韻論詳しくないのでさらっと行きます。「無」の要素は「子音長の制限が無い」だそうです。逆に私は子音長制限とかを一度も気にしたことがないので逆に新鮮でした。それ以外に言いたいところは、いとこ(父方の叔父の息子で"私"より年上)という意味の単語を作れてしまっている点です。細かすぎて意味が分かりません。
 ちなみに、この言語を話す主体はホモサピエンスだそうです。あ ほ く さやみせふぇさんの特技をまたしても最大解放した作品でした。

J.シャボロ語 by Cyanōさん

 審査対象最後の作品です。最近のこの人のコンペ提出作品によく出てきた、「ニャーメリ語族」というものとは関係なさそうです。
 この言語を話している「シャブフ」という人々は「ドナク(Donaq)」という4次元空間に存在する場所に住んでいるらしいです。もしかしてw=0?
 4次元なので一般の人間には発音できない音も発音できる、実質拡張IPAですね。
 フィン・ウゴル語族並みに多い格の上に、能格言語のようです。かなり特殊ですね。また、無標な数詞は全部虚数、という斜め上の面白さもあります。動詞活用・接辞なども豊富で良いと思います。実在性を表す接辞がある部分も「無」要素に近いかもしれません。
 毎回響きのいい(人間に発音できるかどうかは別として)言語を作ってくれるCyanōさんはすごいと思います。お題に飲まれることなくお題と対等な位置に上手く立った作品だと思います。

α.Ðésexister語 by かめりぁさん

 ここからは審査対象外の作品を講評していきます(3作品)。ちなみに、この作品は出題者さんの作品です。
 先に全体の感想から言わせてもらうと、ちょっとずるい言語です。「無」要素として空集合を使うとかずるすぎます!空集合は全部等しいという性質を使ってるのもずるすぎます!ずるいずるいずるいずるい(呪詛)
 はい(沈静化)。ところで、この「無」の要素が文法においてなぜそこまで重要なのか分かりません。何か具体的に使える例が欲しいなぁ、と思いました。
 「出題者だからって何してもいいわけじゃないんですよ!」と言いたいところですが、もし自分が出題者になったらそういうことをしてしまいそうなので言わないことにします。かめりぁさんも良い講評お願いします。また、超絶難しいお題をありがとうございました!

β.ʻHʽlle by かばやなぎ/S.

 これも想像を超えすぎていますね。「ばれなかったら犯罪じゃないんですよ」論みたいな雰囲気を感じます。
 せっかくなので解読チャレンジしてこの言語の「無」を悉く破壊してみようと思います。言オリみたいなのだったらいいなぁ(小並感)。ネタバレになるので自分で解きたい人は注意してください。

言語解読チャレンジ!
 表記ルールについてです。数字は「例文の上から何番目か」を表しています。
 まずは一旦全部の文を読んで単語っぽいのを認識します。/ʔ/と/ə/が違う文字に代わっているのでほんのり分かりにくいです。発音関係ない可能性もあるんですけどね。
 全ての文をざっと見ると、SVOっぽい雰囲気が漂ってます。この直感を信じて突き進んでみます。
 また全ての文を見ると、主格接辞が-ʽʻだということが分かります。時々ʻʽʻになっているのは、何かしらの二重母音が生じないように/ʔ/を挟んでいる可能性があります。2と4の比較から、ʻhʽが近形指示語に近い役割かも、という推察をします。2と3の比較で、soyoは「場所」的な単語と分かります。3と4と6から、yoosは「人」辺りでしょうか。meは疑問形もしくはwhateverのwhat的な意味を果たすものと見受けられます。
 …と、うんぬんかんぬんやっていたのですが、本当に行き詰まってしまったので、Geminiを使いました。許してください。
 これが私たちのアンサーだ!!(個人の回答です)
 Meyoosʻhʽĉo Laovʽĉo lovaʻʽʻ cʽçeso ʻeʻʽ jabloĉo soloċʻe?
 かばやなぎさん良ければジャッジをお願いします。

 もの凄い時間がかかりました(結局自力でできてないし)。無理です。何とか期限に間に合わせようとして覚醒した発想力が見え隠れする作品でした。

γ.M2m2m2lM2l by みうこねさん

 審査対象外組の中で一番まともなのかな…と思っていたらこの人もぶっ飛んでます。油断してました。お題の文章にある、「無の持つ性質」を使っています。「無」は入ってなさそうです。
 「無」は「他との関係でしか定義できない」ことから、その性質を持つ「音程」を使った言語です。音素は基本的に/ʔ/だけで、その高低で表現するようです。お題に合っているかどうかは別として、言語としては大きな可能性を持っていると思います。
 講評の最後を飾る、ぶっ飛んだ作品でした。最後らへんは講評が雑になってしまいましたが、頑張ったので許してください。

コンペ全体の感想

 なんと!私が所属するチーム「炒飯定食」が出題者賞をいただきました!!!(?????)
 (競争数が少なかったことも理由かもしれませんが)これはせんちゃさんパワーだと確信しています。個人プレイだと入れる単語とか例文のセンスが53ってたので助かりました。ここでもう一度最大限の感謝をしようと思います。せんちゃ!さん、本当にありがとうございました。
 さて、またしても余談になりますが、今回の提出作品は前回の3倍くらい頭を捻っています。理由としては、前回が初参加だったので、一旦自分の色を70%くらい脱色して癖があまりないものを出そうとした、ということと、お題が簡単めだったのでそこに甘えてしまった、ということがあり、思考をあまりせずに作ってしまったものが前回の作品であるからです。それに比べて今回は、お題難しい・予定が多い・Migdalメンテの三重苦だったので、相当ドMプレイになっていますこれは甘えてはいられないと思ったわけでございます。
 「無」を入れる、というお題に一旦逆張りして、全部「有」の世界観・設定を考えて、そこから「無」要素へ引っ張っていきました。気づいたら歴史に加えて短いストーリーまで爆誕させています。もうほんっとにびっくり!そして、この作品がかめりぁさんに刺さったらしいということです。(…ほんとに良いんですか?)
 ここからは他の人の作品についての感想です。個人的には、降雨急行さんや糸利さんの作品が一番良いなと思いました。世界観も美しいし、新しい発想や既存言語の良さをうまく活かしている部分など、二人とも完成度が高くて、甲乙つけがたいです。今回私は設定だけで走ってしまった部分が少しあるので、ここから糧を得て、次の創作にも取り組んでいこうと思います。(もちろん、ネタ枠の作品にも沢山笑わせていただいています。)
 色々なアクシデントがありましたが、このイベントが15回目も無事に走り切ったことは凄いことだと思います。期間延長などをしてくださった運営の皆さんの努力があってこそ存続しているというということがよく分かりました。賞を獲っても特に賞品は無いのが少し寂しいですが、次回には良いお題を出した上で出題者になれるよう頑張ろうと思います。では、ここまで読んでいただきありがとうございました!
 2026年5月29日 friedrice

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