ユエスレオネ連邦の構成主体にデュイン総合府というところがある。ユエスレオネ連邦が最初に得た別ウェルフィセルの領土である。
デュインでは、デュイン・リパライン語(DL)が話されている。DLは標準化がなされておらず下位の変種が多く、多様性に富んでいる。
そんななかでも今回は、イェテザル自治区(
jetesal poltXarl
)で話されているイェテザル変種にある接置詞格について取り扱う。
接置詞格?
接置詞というのは、リパライン語文法では前置詞と後置詞のことを指す。すなわち、接置詞格はそれらの支配する格のことを指している。
現代標準リパライン語では接置詞が取る名詞は特定の格が付与されない(=接置詞格がない)。
mi lkurf lineparine fal fqa. 私はここでリパライン語を話す
上の例文では "
fal
" が前置詞で "
fqa
" を取っているが、後者には格が付いていない。
だが、DLイェテザル変種には接置詞格を要求する接置詞が存在している。
mi lkurf lineparine blojn fqe. 私はここでリパライン語を話す
※ fqe は fqax である場合もある。
格を支配する接置詞の由来
このような接置詞格を要求する接置詞は、動詞派生副詞(現代標準リパライン語だとV-on)に由来する。
つまるところ、上の例文は元々こういう文だった。
mi lkurf lineparine molonj fqa('c) i. 私はここでリパライン語を話す
抽象的な構造は、以下の通りになる。
後置詞:(y1)+名詞+(動詞の支配格)+動副詞
前置詞:後置動副詞+名詞+(後置動詞の支配格)+(y)
DLイェテザル変種では、ここでの動副詞が前置詞となり、後置詞がなら「(y1)+名詞+(動詞の支配格)」、前置詞なら「後置動副詞+名詞+(後置動詞の支配格)」のセットが単語の変化形として一つになることで接置詞格となっている。
なお、動詞の支配格には歴史的に段階的な省略がされていくため、接置詞格には接置詞格A、接置詞格Bの二つが存在する。
先の例文の場合は、以下のような変遷を辿ったとされる。
1.mi lkurf molonj fqa'c i.
2.mi lkurf blojn fqa'c i. (前置詞化)
3.mi lkurf blojn fqe. (前置格B)
接置詞格A、B
前回の記事でもやったが、現代リパライン語は歴史的に主格、対格、与格の標識が退化してきた。このため、接置詞格は省略される格の有無でAとBに分かれる。
現代のイェテザル変種では多くがBであり、Aが出てくることは殆どない。
《前置詞格A》
省略されない主格(-'s)や向格(-'l)に由来。膠着するだけ。
由来する格 | 変化 | 例 |
---|---|---|
主格-y-1(-'s y) | -dz | fqa → fqadz, darf → darfadz |
主格-y-2(-'st y) | -sch | fqa → fqasch, darf → darfasch |
向格-y-1(-'l y) | -ly | fqa → fqaly, darf → darfaly |
向格-y-2(-'lt y) | -lch | fqa → fqalch, darf → darfalch |
属格-y(-'d y) | -di | fqa → fqadi, darf → darfadi |
la xeji tydiest slojn mily. ボールが孤を描いて私の方に来る
slojnはcolojに由来する前置詞、「~に孤を描いて動いて」という意味。
《前置詞格B》
一般動詞の対格(-'i)、mol型の与格(-'c)などの省略に由来。屈折する。
語尾パターン | 変化 | 例 |
---|---|---|
a-y | e | fqa → fqe |
i-y | ir | mi → mir |
u-y | y | gustu → gusty |
e-y | ey | valgante → valgantey |
o-y | e | duxieno → duxiene |
C-y | Cy | darf → darfy |
jynut mol nojn fqe. 本はその中にある。
nojnはenに由来する前置詞、「~の中に」という意味。
-
現代標準リパライン語の節を閉じる “i” に相当。 ↩
古い順のコメント(2)
語中の太字について、Markdownエンジンの機能不足で未対応かと思っていましたが、元アプリが意図的にオフにしていたようでしたので、このサイトでは機能をオンにしました。お確かめください。
ありがとうございます! 助かります!!