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Fafs F. Sashimi
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ヴェフィス人名のリパライン語化について

この記事は、語学・言語学・言語創作 Advent Calendar 2025の17日目の記事として書かれたものです。

現代標準リパライン語は、単一民族の単一国家で話されているわけではない。
もっとも話者数が多いユエスレオネ連邦においても、リパラオネ人だけでなくラネーメ人、リナエスト人ユーゲ人クラナの諸民族、デュイン先住民族など、枚挙にいとまがない。リパラオネ人と言っても、その下位分類にはいくつもの民族が連なる。ユナ人、ヴェフィス人フラッドシャー人……ラネーメ人もリナエスト人も細かい下位分類があり、前者は少なくともアイル人、パイグ人、タカン人、バート人に分けられ、リナエスト人はユシュコプロイヤ、メニョイシア、イスケツィヤ、リパリェーツィアなどに分けられる。
彼らには彼らの継承語がある場合もある。もちろんのことだが、各々の名前の言語文化があるのであるわけだが、連邦では広く現代標準リパライン語が用いられており、ヴェフィス人コミュニティも連邦では都市部であるほど現代標準リパライン語に同化すること(ユナ化)が知られている。そのようなコミュニティでは彼らは現代標準リパライン語の形式の名前となりながら、ヴェフィス語の名前を継承している。今回はこの継承における変化の形を解説する。

ヴェフィス人名のリパライン語化

 ほとんどのヴェフィス人は、現代標準リパライン語と同じリパラオネ語族に属する言語であるヴェフィス語を話す。そして、そのほとんどがヴェフィス語による名前を持っている。
 例えば、哲学者のアンハルティア・ド・ヴェアン・アンヴェハル連邦参事会参事官のインファーニア・ド・スキュリオーティエ・インリニアなどが挙げられる。
これらの名前は個人名・家名・省略名称の順番になっており、家名・分家名・個人名の順番を基本とするリパライン語とは順番が異なるし、逆である。

家名の変化

変換をする場合、ヴェフィス語家名の「名詞の属格+ie」はユナ化すると「名詞+-enija」という形になる(もちろん、名詞は同根の単語となる)。

「スキュリオーティエ/スクーラヴェニヤ家」

ヴェフィス語家名:Skyliautie
リパライン語家名:Skurlavenija

ヴェフィス語根 "skylie"、リパライン語根 "skurla" の語源は古典リパライン語 "suhkl"「描く」である。

それ以外の家名の形式でも、慣例的に「単語+-enija」の形式を取る。以下のヴェフィス語家名は "liré"「使う」という動詞に由来するが、ユナ化では名詞と同様に語幹に "-enija" がついて "lusenija" となる。

「リーリエ/ルゼニヤ家」

ヴェフィス語家名:Lirie
リパライン語家名:Lusenija

ヴェフィス語根 "liré"、リパライン語根 "lus" の語源は古典リパライン語 "ljursu"「使う」である。

ラネーメ系ヴェフィス人やリナエスト系ヴェフィス人は本来の原語から直輸入した形の単語から派生したり、採用を行う場合がある。

「カギエ/クヮギー(クア)家」

ヴェフィス語家名:Qagie
リパライン語家名:Qagir (kua)

ヴェフィス語根 "qagé"、リパライン語根 "qagir" および kua の語源はパイグ語の "kua2"「筆」である。

「シャーシュ/カクザ家」

ヴェフィス語家名:Chachés
リパライン語家名:Kakusa

ヴェフィス語根 "Chachés"、リパライン語根 "kakusa" の語源はアイル語の "kakusa"「筆(2)」である。

分離動詞に由来する「動詞語幹+an(ie)」の形の家名では同根語で置き換えられず、直接家名(+-ija)が輸入される場合がある。

ヴェフィス語家名:Vaian
リパライン語家名:Vean

ヴェフィス語家名:Daivanie
リパライン語家名:Devanija

個人名の変化

ヴェフィス語の個人名も「語幹-ia」の形式は、ユナ化において「語幹-ija」の形に変化する場合が多い。

「ユフィア/ユーフェイヤ」

ヴェフィス語個人名:Yfia
リパライン語個人名:Jurfeija

「インファーニア/インファーナイヤ(インファーナヴィヤ)」

ヴェフィス語個人名:Infania
リパライン語個人名:Infarna(v)ija

分離動詞に由来する「動詞語幹+an」という名前はヴェフィス語固有の名前として輸入人名となっている場合がある。

「ハルタン/ハータン」

ヴェフィス語個人名:Hartan
リパライン語個人名:Hartan

省略名称の変化

ヴェフィス語の省略名称は、個人名の第一音節+家名の第ニ音節+個人名の第三音節という形式になっているが、リパライン語では変化後の家名の第一音節+個人名の第一音節になることが多い。ただし、ヴェフィス語の省略名称をそのまま使っている人間も少なくはない。

ヴェフィス語名:Yfia de Skyliautie ylia
リパライン語名:Skurlavenija jurfheija fon skurjur

その他の変化

ヴェフィス語における封土(ats ◯◯)や称号の扱いは二つのパターンに分かれる。

  1. 分家名として扱う(名前の二つ目の要素≒個人名の前の要素としてそのまま輸入する)
  2. 称号(フォーメ)として扱う(for以下に付く語として訳す)

まとめ

ヴェフィス人はユエスレオネ連邦のみならず、ヴェフィス共和国リナエスト・オルス共和国、アイル共和国などの東諸島共和国連合諸国にも居住している。それぞれの国家で、それぞれのエクリチュールの影響を受けながら生活している彼らはユエスレオネ連邦において現代標準リパライン語という共通語を使い、他の民族と共に生活しており、そのルールに沿って自らの名前を表すためにリパライン語の名前を持っている。しかしながら、その借り物の名前であっても自らの出自や伝統を継承するために出来る限り、その言語的文化・伝統を継承する変化を独自にもっていることは彼らが独立した民族であることを示す明らかな証明の一つと言えるだろう。

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