Migdal

スライムさん
スライムさん

投稿

人工言語コンペ 2024年秋(第9回) まとめ

coi rodo mi'e .slaimsan.
どうもこんにちは、スライムさんです。明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

気が付いたら去年のMigdalの記事は、ほとんどが人工言語コンペ関連の記事になっていることに気づいてしまいました。そんな人工言語コンペ2024年秋開催のまとめです。

1. お題

一般に言語には「上下」「東西南北」といった方向を表す語彙があります。このような概念は、重力と地軸が存在する地球上での生活に特有のものと考えられます。
では、もし「地球外の無重力空間で生活する人々」が存在するとしたら、どのように方向を表すでしょうか? 彼らの話す言語を作り、方向を表す語彙を使って道案内する文章を作ってください。

色々と想像力が働きそうなお題です。私も含めて7名の方にご参加いただきました。ありがとうございました。

2. 提出作品一覧

3. 講評

3-1. レスターヴ語

人類が絶滅を逃れるため地球から脱出して他の惑星に移住したという設定で、その人々が話している言葉という設定です。
今回のお題は皆さん共通で、方向をどのように表すかという観点が必ず入っています。レスターヴ語においては、XYZの直交座標系を採用しているようでした。どの軸でどれくらい回転するかを示すことで道案内を指定ました。

レスターヴ語で私が良いなと思ったのは、空間に関する概念が文法要素にも取り込まれていることです。例えば、格の中に「内格」「外格」「近格」「周格」など、空間に関する文法格が用意されていたり、指示代名詞が誰から近いものを指すのかという概念で分類されているなどです。このように生活環境の条件が文法にも影響を及ぼすというのは、考えると楽しいですね。

3-2. シラミィさんの言語

方向の表示方法は、進行方向を前(z軸)として、上(x軸)、右(y軸)の直交座標系を採用していますが、回転方向を示す極座標を採用した体系となっています。宇宙船を基準に軸を取るとのことで、宇宙船の「上」が存在するようです。重力発生装置がある世界のようです。
角度と距離の単位系が独自のものを採用しているというのも、SF的にありそうな話ですね。

3-3. 国際宇宙ステーション共通語

自分の作品です。近未来で国際宇宙ステーションに多くの人が住むようになった世界を想定しています。座標の表示方法は、宇宙ステーションの構造を基準にした言い回しを採用しました。宇宙ステーションが独楽のように緩やかに回転しているという設定で、回転方向、軸に平行な方向、軸に近づく方向の3軸で表現するようにしました。

今回、作品を書く前にブレインストーミングをした時のメモが出てきたので、貼り付けておきます。
Image description
個人的に一番の目玉は、言語オリンピック的な要素を取り込んだことです。記事の冒頭、文法の説明をせずに、いきなり言語が使われている場面の描写から始めて、道の言語について推測してもらおうと思いました。(メモにも「言語オリンピック問題!」ってありますね。あっ、四元数とかいう文字も見える。これは今回採用している人が居ませんでしたね。)

3-4. 8a65語

今回の優勝作品です。知性を感じる見た目の彼らの姿が非常に印象的です。いろいろな宇宙人と接触して調査が行われている世界、色んな言語が見つかってる中で、マイクロ波でコミュニケーションをする宇宙人の言語という設定です。
方向の表示は、話をしている2人が対面する方向を軸として座標を設定しています。(2人いない場合は、恒星の方向と公転の方向をベースにしています。)
個人的には好みの要素が多かったです。マイクロ波の波長が音素になる点、パルスの間隔が相対的な時間で決まる点、文の開始マーカーがあるなど、自分が人工言語を作るときに考慮しがちな点がでてきていたので、かなり好みです。

3-5. <-語(s語)

人工言語としては珍しい、音声ではなく動作、手話で表すタイプの言語です。モユネ分類では KIN のタグが付くやつです。宇宙空間には空気がないから音声では伝わらないということで、手話言語を考えたようです。確かにその視点忘れてたわー
方向の表し方は、人の向いてる向きと(重力があるためか)上下、左右で表す基本的な形となっています。
手話と方向表現の相性は良く、指示した方向と表現が一致していて直観通りで良いと思いました。

3-6. Azuula語

私の設定と同様、ジャイロが設置されている環境で暮らしている設定での言語です。そのため軸の取り方の考え方は私のものと類似しています。(回転軸に平行な方向を地球からのアナロジーで「南北」と呼ぶ発想は私は抜けてました。なるほど、その手があったか。)あと、円筒座標を採用するのも、シラミィさんの極座標と同様です。
方向の表現で「あなたから見て上」のような、誰から見ての方向なのかという表現が出てくるのは、確かに重要な表現だと思いました。演劇に詳しい方はご存じかと思いますが、舞台で「右」といった場合、客席から見て右なのか、役者が舞台に立って客席を見ている場合の右なのかで方向が逆になってしまいます。そのため「誰から見ての方向なのか」は表現として重要なのです。(ちなみに、演劇では絶対的な方向を表す表現として「上手(かみて)」と「下手(しもて)」という言葉を使います。)
無線のノイズがある環境下で使われる想定のようで、聞こえ度の高い音が採用される設定のようですが、今回のテーマからはズレるため深堀はしなかったとのことです。時間が限られているコンペにおいては、このように時間をかける部分と掛けない部分の切り分けが非常に重要です。とは言え、聞こえ度の問題は個人的に好きな部分なので、別の機会で考察されるのを楽しみにしています。

3-7. ヤーグゼルド語

人工惑星で使われているという設定の言語です。惑星の中央が空洞で無重力空間という構造になっているそうです。人々は球体のロボットに意識を移して生活している設定とのこと。(ところで、この設定を見て昔、子供のころに見た『21エモン』というアニメの話を思い出しました。若干恐怖を感じる内容で30年以上前の話なのに何となく覚えている話になります……)
方向の表現の考え方は、惑星の中心方向、恒星(厳密には違う)に向かう方向、公転の方向、惑星の南北などの軸があります。この辺りは他の方と同様です。

4. 終わりに

まとめが大分遅くなってしまいました。すみません。(最近、仕事が本当に忙しくて……) それはそうとして、今回のコンペは色々な考察が見られて面白い回でした。
さて興味を持ったそこのあなた。そんなあなたに朗報です。なんと次の人工言語コンペ 2025年冬(第10回)は1/31(金)にお題発表予定です。ご興味ある方はDiscordサーバーまでお越し下さい。投票だけ参加もありなのでぜひ覗いて見てください。

人気順のコメント(0)