概要
この記事では五感に関する語彙やその派生語を概観します。
動作/感覚器
グロバサでは、原則として動詞用法のある語彙は名詞としても使用できます1。五感に対応する動詞の場合、名詞用法は感覚を受け取る身体器官を表すことになります:
- oko「見る」「目」
- ore 「聴く」「耳」
- nasa「嗅ぐ」「鼻」
- pifu 「触る」「肌、皮膚」
- xeto 「味わう」「舌」
どちらかといえば、感覚器を表す名詞が感受する動作を表す動詞を兼ねる、というふうに言ったほうが語源的には正確かもしれません。たとえば、pifu は日本語の「皮膚」に相当する漢字語が由来ですし、xeto は日本語の「舌(した)」と中国語の「舌头(shétou)」の中間を取った語形です2。
五感
五感そのものを表す語彙は抽象化の接尾辞である -ya によってつくられます3。
- okoya「視覚」
- oreya 「聴覚」
- nasaya「嗅覚」
- pifuya 「触覚」
- xetoya 「味覚」
-cu との併用
「光が赤く見える」「音楽が美しく聞こえる」のように、感受される対象を主語にとるような表現があります。グロバサでは、自動詞をつくる4接尾辞 -cu によってそのような表現をすることができます。
- okocu day「大きく見える」
- orecu meli 「美しく聞こえる」
- nasacu bur「匂いが悪い」
- pifucu sahte 「触感がごわごわする」
- xetocu bon 「味がよい」
グロバサでは、ほとんど全ての動詞に名詞用法があるのでした。-cu によって形成された動詞についても同様のことがいえて、「(具体的な)感覚」を指す名詞として転用することができます。
- okocu「見た目、外観」
- orecu「音声」
- nasacu「香り」
- pifucu「触感」
- xetocu「味」
所感
規則的な複合語を活用することによって、語形を暗記する負担を軽くしているといえます。また、複合語に頼ることで、自然言語では簡単には表現しづらい表現にもアクセスできるようになっています(たとえば、orecu にぴったり対応する日本語はなかなか見出しづらいのではないでしょうか)。
複合語に頼ると語形が長くなり、実用上の不便さにまで繋がる場合もありますが、今回は語根も接尾辞もあまり長くないので、それほど深刻な感じはありません5。
ただ、接尾辞の挙動が通常の複合語から若干逸脱しているという話はあります。とくに、-cu の名詞用法は記憶の限りでは類例がなく、かなり変則的であるといえそうです。
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助動詞または形容詞として使用される abil, musi, ingay を除く ↩
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二者には特に語源的繋がりはありませんが、類音性を鑑みて両者がともに語源であるということになっています。このような語形成による語彙を補助語界隈では blend(混成語)という風に呼んだりします。 ↩
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一例を挙げると、性質を表す名詞(「◯◯性」)などをつくることができます。細かく説明すると長くなるので、詳細はいずれ別の記事でまとめるつもりです。 ↩
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ただし、厳密にいえば、今回扱うような動詞は補語を取ることができるという(通常の自動詞にはない)特徴があり、したがって公式文法の上でも繋動詞(copular verb)に区分されています。なお、繋動詞には感覚を表す動詞のほか、sen(「〜である」)およびそれから派生した語彙の一部が含まれます。 ↩
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もっとも、グロバサは総じて複合語を優先する言語なので、他の部分ではこの問題が顕在化してきます。一例を挙げると、季節を表す mosem は termomosem「(熱の季節→)夏」などの語を作りますが、頻繁に使用する語彙の割には音節数が多く、やや扱いづらい感は否めません。 ↩
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