Red_camellia52です。
講評します。
特殊な講評要素が欲しいといわれたので、この講評では「言語再解釈ポイント」を導入します。
これは、その言語が「どれだけ言語というものの概念を拡張しているか」というポイントです。
なぜこのような評価かというと、個人的に現実の言語を再解釈して言語の概念を拡張する試みが好きだからです。
今回では、「無」を利用してどれだけ言語の可能性を拡張しているかで測ります
C'est parti!
A.シンラン語
親鸞ではなくドラキュラらしいです。
無の要素は、「人」を意味する単語がなかったり、婉曲表現がなかったりします。
かなり細かい部分まで文法が練られていて、ちゃんと努力して作られた言語という感じがします。
コピュラ文でコピュラがない場合があったり、関係節の標識がðatだったりと、自然言語の文法をグローバルにちりばめている感じがします。
個人的には、無を取り込んだ文法が、どのように発生したのか知りたいですね。
「種としての「吸血鬼」」という一節からも「吸血鬼という概念が生物学的に確立しているのかな?」とか色々と考察ができて面白いです。
言語再解釈ポイントは1点です。語学初心者も学びやすいですね。
B.ムボイン語
母音がないんでしょうね。名は体を表すとはこのことです。
連続して存在しづらい子音の間に他の子音を挟んで発音・聞き取りを容易にするというのは面白い発想だな。と思いました。チェコ語もこの言語を見習え
さて、無を取り込んでいるのは母音だけでなく、バッカスナウア記法を取り入れた部分もあります。
私の大脳皮質では理解不能だったのでChatGPTに聞いたところ、pythonの文字列で言うところの「””」らしいです。う~ん理解。
さて、これを利用して、εを主語か目的語に持ってくることで、その分を否定文にできるというものです。
これを聞いて、英語のnothingやnobodyと同じ働きをしているなぁ~と思いました。よく考えると英語のそれも無をテーマにしていますね。
人工言語と自然言語が収斂進化したみたいです。
言語再解釈ポイントは1点です。英語と同じに見えることもあってちょっと弱いかな~?と思いました。
とはいえ、言語とコンピュータを融合させようとする思想は個人的には好きです。
C.セレニッタ語
無を「使う」のではなく、無「そのものを対象」として言語を作っている点に惹かれました。
背景情報によると、セレニッタ語はいわゆる言霊のようなものを持っており、否定文を発話すると物が消えるそうです。
この世界線では政府も立ち上がってセレニッタ語弾圧に乗り出しており、敵対的な視線を感じます。
この背景情報は面白いなと思いました。
もう少し受容的であれば、セレニッタ語が軍事転用されたり産業に活用されたりしたのかな~とも思います。
さて、無以外にも主語に関する規則がありますが、これは「Sがワニに食べられる」みたいな文を作れないようにしたのかな?と思うなど。
言霊の科学的解析とか見てみたいな~と思いました。
言語再解釈ポイントは1点です。世界観ありきではありますが、世界観も含めてみると面白い言語でした。
D.エゼブガンボ語
初投稿らしいですが、そこらのベテラン人工言語作家の言語より面白いなぁと思いました。
語彙が存在せず、好きな自然言語の単語を持ってきて使えるという言語です。
他に思ったこととして、自然言語には借用語という概念がありまして、それは一応「その言語の」語彙として扱われます。しかしここではそう扱われていないということで、この言語は借用語とはまた違う新概念があるのかなぁ、とも思いました
言語再解釈ポイントは2点です。単語に無を取り込んでいますが、そこからの拡張が素晴らしいので加点です。
E.
まんまアラズ語ですね。
言語再解釈ポイントは3点です。言語そのものに取り込んでいるので
F.nsi"pa"?
音韻と単語に無を置いている言語です。
声を出さない音と、口の動きを隠す音の2種類が追加されています。
さて、韓国語には無声化音がありまして、これは促音のように聞こえます。すると、この言語も韓国語のように聞こえるのかなぁ、とも思ったりします。
文法に関してはすいません私の大脳皮質が及ばず…
ちなみに、私は理解できない文法ほど良い文法と思っているので、この言語の文法はかなり高く評価しています。
この複雑な文法が自然言語らしさを生み出していて、非常に学んでみたい言語だと思いました。
言語再解釈ポイントは2点です。音韻に含めているのに加え、そのレベルが高かったので加点です。
G.アビカ語
一部の音素がなく、また「不在詞」という、またしてもnothing的な単語があります。
両唇化子音とか軟口蓋化子音があったりして、少々独特ですね。
言語再解釈ポイントは1点です。拡張の基礎となるような拡張でした。
H.未来口語
意味が不定に近いため、実質的に意味が「無い」といえる言語です。
シュレーディンガーの猫を感じますね。
さて、意味が実質的に不定というものでいうと、anyoneという単語が英語にあり、これは一般的には「誰か」という意味を持ちます。
今回もそれに近いように感じますが、この言語では実質的に意味はないとしています。
この点はかなり意味論的に興味深いなぁ、と思います。
言語再解釈ポイントは3点です。「意味」という概念を再解釈する、良い言語でした。
I.1音節あたりの情報密度が最も高い口頭言語
同時調音の長さに制限が無い言語です。
例文を見てみると、大体5音素ぐらいが同時調音されてるのかな?
最初「うわぁ…」と思いましたが、よく見てみるとかなり面白い発想をしていて、認識が変わりました。
言語再解釈ポイントは3点です。音韻論の常識を覆す良い言語でした。
J.シャボロ語
現実世界に存在しないものが単語として存在する言語です。
これも世界観を突き詰めると面白くなりそうです。
言語再解釈ポイントは1点です。これも言語初心者は学びやすいですね。
α.Ðésexister語
私の言語です。
正直一番いい言語だと思ってるくらいには愛娘です。
3日で作りました(自慢)
β.ʻHʽlle
文法が明示されていないため、定義されるその時まで文法が存在しないという言語です。
さて、シュレーディンガーによると、認識の外の状態は「確定しない」といえます。つまり、存在するか否かが「わからない」という状態なわけです。
対してこの言語では「わからない」のではなく「無い」となっています。このあたりに細かな違いがありそうで、突き詰めていくと面白そうです。
言語再解釈ポイントは3点です。言語と認識論をつなぐ面白いアプローチでした。
γ.M2m2m2lM2l
無を「他のものとの関係で定義される」と解釈し、共通点を持つ「音程」を組み込んだ言語です。
某言語に音楽言語的なやつがありましたが、今回は絶対音階ではなく音程、つまり相対的なものという面で、進化を遂げています。
もっと行けば音色で表語言語が作れそうですね。
言語再解釈ポイントは1点です。拡張性がありますね。
終章
講評書いてから出題者賞を決めたら、順位が変わっていたかもしれません。
それほどまでに凝った言語があり、皆さまよく頑張ってくれたな。と思います。
一応私なりの模範解答をÐésexister語として提示したつもりですが、皆さん理解はできましたでしょうか?
ミニマル言語や架空の民族に基づいた言語もいいですが、たまにはこういう完全な実験言語を作ってみても面白いと思います。
それでは次のコンペにて会いましょう。
人気順のコメント(0)