Pitabam! こんにちは、ンソピハです。
今回は、自己分離型形態論(self-segregating morphology)、ミニマリストな統語論、トポロジカルな語彙構造を持つ言語「Letanis」を紹介します。
(自己分離型形態論というのは、解釈が一意に定まる形態論のことです。たとえば「ここではきものを脱いで下さい」という文は自己分離的ではありません。)
典拠
https://web.archive.org/web/20250522033009/https://tmh.conlang.org/letanis/
公式サイトにアクセスできなくなっていたので、Weyback Machineの2025年の魚拓を確認しました。
残念ながら、辞書はもう中身を見ることができませんでした……
発音
子音目録はこんな感じ:
| 子音 | 両唇音 | 歯茎音 | 軟口蓋音 |
|---|---|---|---|
| 破裂音 | p/b | t/d | k/g |
| 鼻音 | m | n | |
| 摩擦音 | s | ||
| 側面接近音 | l |
比較的シンプルですね!
母音は/a, e, i, o, u/の5つ、他に音素はありません。
音節構造はCV(C)で、音節末に来れる子音は/m/と/s/だけのようです。
名詞が必ず-s、それ以外の語が必ず-mで終わるので、これら2つの音の使用頻度がめちゃくちゃ高くなっています!
文字
ローマ字です。特に変わったところはありません。
文法
この言語は非常に制限が多い統語論を持っています。統語論を「ミニマル」にした代償でしょう。たとえば、「緑色の草がここにある」というのに、文を3つに分ける必要があるのです。
- Kas tam. Tas nikam. Tas kakem.
- 草 a:a v:a 緑色な v:a 近くにある
- '緑色の草がここにある。'
直訳すると、「草がこうだ。これは緑色だ。これは近くにある」みたいな感じでしょうか。a:a, v:a というのは「可変代名詞」(variable pronouns)というレタニス特有の機能語です。
さて、この言語は文法の随所が非常に面白い言語です。
個人的に感銘を受けたのが、疑問文の作り方です。諾否疑問文(答えが「はい」か「いいえ」になるもの)はnagemナゲム(〜かどうか考える)という動詞を使って表現するようです。
- Des nagem dos nenam galem dos las pidem?
- SG.1 かどうか考える SG.2 満足な (のあとで) SG.2 家 見る
- '家を見て、満足でしょうか?'
(nagemの訳として原文だと「I wonder if...」が挙げられているんですが、この訳語のニュアンスを日本語訳するのがちょっと悩ましい……)
否定文の作り方も興味深いです。……というか、否定文がありません。たとえば先の質問に対して、「いいえ、満足していません」と答えたいときは、こう答えます:
- Netom.
- 悲しい
- '悲しいです。'
レタニスの哲学 (The philosophy of Letanis) では、「真実だったら言うし、真実じゃなかったら言わない」ということになっているため、否定文の代わりにこう別の言葉を使って表現するらしいです。
別の例文も紹介します。「食べ物がない」と言いたいときは、たとえばこう言うこともできます:
- Des nas negetom.
- SG.1 食べ物 恋しい
- '食べ物が恋しいです。'
否定文の他にも無いものでいうと、指示代名詞もないようです。たとえば赤い家のことを「それ」と指示したくなったら、単に lasラス(家)と言うみたいですね。指示対象の種類が全く分からない場合は、たとえばそれが3次元の物体なら pasパス(3次元の形)と言うそうです。
普通の言語だったら接置詞で表すようなことを接続詞で表しているのも面白いです。たとえば、「私は山へ歩いていった」を「私は歩いたあとに山にいた」のように言うのです!
あとは、語順がSOVなのですが、これについて「動詞が終わりであることで文末がどこかわかりやすくする」と理由付けしているのが興味深かったです。
そのほかでは、peペという形態素も面白いですね。これを使うと、記数法を変換することができるらしいです。
一通り見てみて、統語論はたしかに相当ミニマルな部類だと思います。その分の工夫が面白かったですね。
語彙
先に述べたように残念ながら辞書が見れなくなってしまっているんですよね……。もっと早くチェックしておけばよかったと悔やんでいます。
「トポロジカルな語彙構造を持つ」と言っていましたが、例文などの単語をいくつか見てみる限り、確かにそのようです。たとえば Example Texts に出てきた dukabusドゥカブス(タール)という語を分解してみると、du(素材)、ka(植物)、bu(地理)、-s(名詞)となります。一方モルタルはdubilasドゥビラスで、du(素材)、bi(水)、la(建物)、-s(名詞)です。
タールやモルタルが造語されているので、おそらく語彙はミニマルを志向していなかったのでしょう。
話者
話者コミュニティーのようなものは特になさそうです。レタニスのテキストは、公式サイトの魚拓にあるバベルの塔の説話の翻訳以外確認できませんでした。
レビュー
では、各部門ごとにレビューします。
かわいさ:個人的な感想ですが、かわいいというよりかっこいい言語だったなと思いました。暫定3位とします。
おもしろさ:拝読して、文法が非常に興味深かったです。新たな言語の可能性を感じたので、高得点をあげたいところ。暫定2位とします。
シンプルさ:語彙はミニマルではなかったようです。このレビューでは特に語彙に重きを置きたいと思いますので、低得点になります。統語論のミニマルさも考慮して、暫定5位にしておきます。
使いやすさ:かなり実験的な言語なので、未知数です。特に否定文が作れないのはとても前衛的です。自分でも学んでみたかったところですが……。ひとまず暫定4位としておきます。
学びやすさ:辞書が非公開になってしまったので、語彙が学べません! 作者の方がまた復帰してくださる可能性を考慮して、暫定5位としておきます。
| 順位 | かわいさ | おもしろさ | シンプルさ | 使いやすさ | 学びやすさ | 得点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | パニパニ | ダミン語 | アラズ語 | ダミン語 | アラズ語 | 7 |
| 2 | ニョンペルミュ | レタニス | パニパニ | ニョンペルミュ | パニパニ | 6 |
| 3 | レタニス | アラズ語 | 真ウーンラング | ビアムイン | ニョンペルミュ | 5 |
| 4 | ビアムイン | ニョンペルミュ | ダミン語 | レタニス | ビアムイン | 4 |
| 5 | アラズ語 | パニパニ | レタニス | パニパニ | レタニス | 3 |
| 6 | 真ウーンラング | ビアムイン | ニョンペルミュ | アラズ語 | ダミン語 | 2 |
| 7 | ダミン語 | 真ウーンラング | ビアムイン | 真ウーンラング | 真ウーンラング | 1 |
総合得点は21、暫定4位です! おめでとうございます!
| 言語名 | 総合得点 | 総合ランク |
|---|---|---|
| パニパニ | 25点 | 1位 |
| アラズ語 | 24点 | 2位 |
| ニョンペルミュ | 23点 | 3位 |
| ダミン語 | 21点 | 4位 |
| レタニス | 21点 | 4位 |
| ビアムイン | 14点 | 6位 |
| 真ウーンラング | 9点 | 7位 |
(パニパニが、前回同率1位だったアラズ語より1点高くなりました!)
次回予告
次回は、国際補助語として1988年から設計が始められ、1992年に雑誌『アドア』にてその原案が発表された、70の字母と20の記号からなる視覚言語「地球語」を紹介する予定です!
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