オ゛ェジュルニョェーッ語の表記で最もよく用いられる、「第二正書法」についてまとめてみたいと思います。
- そもそもオ゛ェジュルニョェーッ語ってなんだ?という方は、こちらにスライムさん(「スライムさん」か「スライムさんさん」か悩み)がトゥギャってくださっているのでご覧ください: https://togetter.com/li/1736467
- この記事では、「オ゛ェジュルニョェーッ」の通称「オエル」を多用しますのでご留意ください。
オエル語正書法の概要
まず、原作者のコロカさんによるオエル語の発端ツイでは、IPAを用いて表記されており、表音正書法という名前をつけています(が、大抵は「IPA表記」とか呼んでいる)。
第二正書法の源流は Ziphil さんのツイートで、音素追加などを経てこれをもとに改訂されていったものが、現在の第二正書法です。
なお、オエル世界の歴史において用いられている正書法は3つあります:
- 第一正書法: オエル民族の独自文字による正書法。下記のとおり第二正書法が最主流だが、民族復古運動により地位を絶賛取り戻し中。(なお制作未完)
- 第二正書法: 近隣国の支配を受けた際に制定された正書法で、ラテン文字とキリル文字を混用する。現在最もよく用いられる。
- 第三正書法: ソ連の支配を受けた際に用いられた正書法で、全てキリル文字によって表記する。
文字と発音
文字 | 発音 | 文字 | 発音 | 文字 | 発音 | 文字 | 発音 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
' | /ʔ/ | Kk | /q/ | Uu | /ɯ/ | Жж | /ʐ/ |
Aa | /ɶ/ | Ll | /ʁ/ | Vv | /ⱱ/ | Мм | /n̼/ |
Bb | /ʙ/ | Nn | /ɳ/ | Ww | /ɰ/ | Пп | /t̼/ |
Cc | /c/ | Oo | /ɤ/ | Xx | /x/ | Фф | /θ̼/ |
Dd | /ɖ/ | Pp | /ʙ̥/ | Yy | /ɥ/ | Чч | /t͡ɬʼ/ |
Ee | /ø/ | /ɟ/ | Zz | /ɮ/ | Шш | /ʂ/ | |
Gg | /ɢ/ | Rr | /r/ | Бб | /d̼/ | Ъъ | /qʼ/ |
Hh | /ħ/ | Ss | /ɬ/ | Гг | /ð̼/ | Ƣƣ | /ʕ/ |
Ii | /y/ | Tt | /ʈ/ | Дд | /tʼ/ |
基本ラテン 26 字から f, j, m を除いた 23 字に加え、「'」、キリル 10 字、そして "ƣ" の 35 字を用います。
Ƣƣ ってだれ
"Ƣƣ" とは何者かというと、いくつかの言語で歴史的に使われていたラテン文字です。我々が生きている世界では、現在は廃止されているようですね。。。
Ƣは、ラテン文字(アルファベット)だった文字。アゼリ語やタタール語のヤカ゚リフ正書法など、主にトルコ語のさまざまな言語のラテン語の正書法で使用されていたアルファベットである。通常、有声軟口蓋摩擦音[ɣ]を表すが、有声口蓋垂摩擦音[ʁ]に使用されることもある。これを使用するすべての綴りは段階的に廃止されており、フォントは十分にサポートされていない。だが、中華人民共和国によって出版された1983年以前の書籍でも引き続き見ることができる。歴史的には、1900年頃の小さなラテン文字qの筆記体から派生している。 [ɣ]の使用は、そのような音(および同様の音)をトルコ語のqで、アラビア語またはペルシャ語の転写(kafとqafを比較)で表すという言語学的な伝統に由来している。
Ƣeznē'bix (/ʕøɮɳøːʔʙyx/)「オエル語」の頭文字であることから、オエル語を象徴する文字ともなっています。
m がなく м がある…?
/n̼/ を表す文字が、ラテン m ではなくキリル м となっています。基本的にラテン文字を使っているのに、なぜここでキリルが出てくるのでしょうか? …ちゃんと理由があります。
歴史上、第二正書法の制定時に採用されたのは、実は м ではなく m でした。
第二正書法で使われる文字には ш もありますが、素早く筆記すると ɯ のようになります。あまり速く書きすぎると、m と区別がつきづらくなってしまいますね。
そうして、それを回避するため意図的に м のような字形を使っていたところ、いつの間にかキリル文字として定着していたという事情です。
(制作上は、舌唇音追加の際にまとめてキリルにしたということで、上記の設定は後付けだったりします)
ƣ は f ?
オエル語 = "Ƣeznē'bix" の ISO 639 コードは fez
という設定になっています。
実際のところ、基本ラテンのみによる転写で ƣ = ff
としているから、という理由なのですが(先に白状)、オエル世界史における合理的理由もちゃんと用意してあります。
まず前提として、一人称コピュラの接辞 ƣi- や、疑問詞の語頭、ƣaqē'「人」、Brxōdƣez?!「こんにちは!」等々、ƣ はオエル語において非常に出現頻度が高い文字となっています。
あるとき、オエル語タイプライターが、普通のキー配列をもとに作られました。基本ラテンにない Ƣ をどこに置くかということになりますが、こう出現頻度が高いと、打ちやすい位置が良いわけです。…なんと F が空いています!!! かくして Ƣ は F 相当の位置に配置されました。
さて、オエル語タイプライターは、まあ非オエル語圏ではマイナーです。とはいえ非オエル語圏でオエル語を打つ需要も、皆無というわけでもありません。そこで、普通に出回っているタイプライターで打てるよう、代替表記方法が出現しました。Ƣ の代わりには、キー位置の同じ F が用いられました。
…あとは、まあそういうことです。
第二正書法を入力したい!
一応、オエル語第二正書法の変換ができるページを作っております: オ゛ェジュルニョェーッ語キーボード β
β版であり動作の保証はできませんが、ある程度使える…はずです。(余裕ができたら改善したいこと山積み…)
オエル国より、Xirdiм-Tшtāsalozotnic Шweчeфīrƣez Edalg /xyrɖyn̼ ʈʂʈɶːɬɶʁɤɮɤʈɳyc ʂɰøt͡ɬʼøθ̼yːrʕøɮ øɖɶʁɢ/(僕のオエル語名; 自分でも相当発音きつい)がお届けしました。
古い順のコメント(1)
これ、というかこの定型構文(?)、非常によさがある。ものすごくすき。僕自身も是非とも使っていきたい。
ということで、Gucū'diм Ƣeznē'ic(オ゛ェジュルニョェーッ合同首長国)北部オ゛ェジュルニョェーッ連邦より、Haruka-B. Grм. GWƢ Kaiƣ u'eug' Ƣez-Ugwisшic-dƣac-Būk-e-EvƢzがお届けしました。