今回用いるのは架空世界「ハツプ・レング」内のトレア・カ語。ジクナという国のギレン地方に存在する宗教、クレアサ教で使われる儀式用言語である。
特徴
トレア・カ語の最大の特徴は、5人が同時に発話する事で一つの言語となることである。
クレアサ教の祀る神・クリオ神は、5つの巨大な耳を持ち、世界のあらゆる声を聞くとされる。このため、クリオ神に奉納する儀式・トレアでは、5人の信者がクリオ神に捧げる言葉を言う。ジクナ語ギレン方言において、トレア・カのトレアは儀式、カは5という意味である。
また、クリオ神に対して特別な言葉であるため、それぞれの言葉は単体では意味をなさない。あくまで5つで1つの言語である。
なお、儀式用言語であるため、定められているのはほとんどが定型文であり、その他にはジクナ語ギレン方言の単語をトレア・カ語に訳すためのルールのみが定まっている。このルールはトレアの中で得られる。
発音
ジクナ語ギレン方言に含まれる音のみで構成される。すなわち、母音はa,e,i,o,u、子音はb,c,d,f,g,h,j,k,l,m,n,p,r,s,t,v,w,x,y,z。
ただし、音節単位で5人が互いの音節を交換し合うことが許される。実際、どの音節を誰が言うかは示されておらず、儀式で担当する5人があらかじめ言いやすいように分担を決めることになる。
母音
a, e, i, u, oの五つ。ただし、5人が同時に発音するのは互いに異なる母音でなければならない。このため、基本的に1人1つの母音を担当するが、1人2つにしたり、母音を一つずつずらしていく(1音節目:{a,e,i,o,u}→2音節目{e,i,o,u,a}→3音節目{i,o,u,a,e}……)こともある。
文法
VSO/NA。ただし、基本的に使われる文章はクリオ神に信仰を告白するものと加護を求めるものである。このため主語はdaga/geje/kiki/mono/ruzu(我々、信仰者などと訳される)、動詞はdabaca/fecege/higipi/noroso/wutuyu(告白する)またはaba/ehe/ili/opo/uxu(願う)で固定される。
訳ルール
まず、その後のジクナ語ギレン方言での単語の音節に応じて、音節数が決まる。
続いて、前回のトレアで得られた変換ルールに応じて、子音の変換ルールが決まる。
どの場合でも、各音節ごとに、元の語に含まれる子音は必ず含まれる。他の4人が発音する子音は前回のトレアで得られた変換ルールで決める。なお、元の語に含まれる子音と、変換ルールで得られた子音が重複する事もある。
トレアの変換ルールを授かる時には、背中に各子音の文字の刺青をした20人の担当者(キンサラと呼ばれる)がクリオ神の像を囲むように並び、各子音ごとに定められた文言を唱える。約12分経過すると、このうち4人が突然同じ文言を唱え始める。この文言はトレアごとに異なり、しかも唱えている4人は自分が何を言っていたのか覚えていないという。ここで第一音節の変換ルールが決まる。すなわち、この4人の子音が第一音節の子音である。これを5回繰り返し、第五音節までの子音の変換ルールが得られる。六音節以上ある単語では、第一音節の変換ルールから順に再び適用する。
例文
dabaca daga abaka ka
fecege geje edeme me
higipi kiki ikini ni
noroso mono opono ro
wutuyu ruzu uvuru zu
告白する-我々-信仰-神
我々は神への信仰を告白する。
儀式の「告白」パートで最初に述べられる文。この後に個別の「信仰」が述べられる。
dabaca daga abaka caa fa
fecege geje edeme gee ji
higipi kiki ikini lii mi
noroso mono opono moo po
wutuyu ruzu uvuru puu ru
告白する-我々-信仰-祈り-朝
我々は朝の祈りによる信仰を告白する。
毎朝に行われる「祈り」による信仰を告白する文章。
aba daga fala ka gaga
ehe geje jene me jeke
ili kiki kipi ni kipi
opo mono toro ro noro
uxu ruzu yuwu zu sutu
願う-我々-恵み-神-すべて
我々は全てに対する神の恵みを願う。
儀式の「求め」パートで最初に述べられる文。この後に個別の「求め」が述べられる。
aba daga fala cacakela afaba
ehe geje jene gejememe egece
ili kiki kipi himiniri imiki
opo mono toro joroposo orolo
uxu ruzu yuwu vuxuzutu uxutu
願う-我々-恵み-ガラナラ-地震
我々は地震が起きたガラナラへの恵みを願う。
11986年3月のトレアで述べられた文章。前月、ガラナラという場所で大地震が発生した。ジクナ語ギレン方言でガラナラは「garanala」、地震は「ereka」である。
新しい順のコメント(0)