シャリヤ
翠
うわ、いきなり清楚系ヒロインが言わなさそうなこと言い出した。
翠
シャリヤ
翠
というか、あれはツンデレてるから良いんだろ? しかも、時々ボソッとリパライン語でデレられても俺も読者も分からん。
テメーはダメだ。
翠
シャリヤ
……風邪によく聞くって、聞いてね
1 。それで最近、
どこぞの泥棒猫のせいで 体調が不安定で、食べてみたいなと思ったのよ!
翠
二郎食べる前に体調整えたほうが良いと思うんだがな……というか、ユエスレオネに二郎があるのか?
シャリヤ
第七部 で日本と接触してるでしょ! もちろんあるわよ!! しかも、レトラに!!
翠
※ ロシデレ以外にも「やたらと(中略)ぐいぐいいく 」とか「ガーリー・エアフォース 」とかでもラーメン食ってたような(曖昧な記憶)……食足りて礼節を知るという言葉もあるし、ラブコメ展開でラーメンを出すのは王道なんだろうか……? それでも二郎系はなさそうだが。
あ、そういえば、チェンナイ に行ったときは、是非「秋平」 に足をお寄せ下さい。私が行ったのは開店してからまもなくだったけど、シンプルな鶏白湯がインド生活で日本食に飢えたふぁふすを助けてくれました。ありがとう、秋平。しかし、今や、日本に住む私は逆にタミル料理に飢えている。ミックスレイスとは悲しき宿命なりや。
エレーナ
というわけで、今回は私が教師役をやることになったわけだけど。
フェリーサ
あはぁ、あんな理由で仕事投げられて受けるなんて、バカ真面目だねえ、エレ姉!
エレーナ
芋掘り当番をサボったときみたいに、こめかみをグリグリされたい?
フェリーサ
エレーナ
否定・疑問
エレーナ
さて、ヴェフィス語の動詞の否定からやっていくわよ。これについては、副詞の "
ne " を動詞に後置するだけで良いわ。
フェリーサ
なるほど、
リパライン語 によく似てるね。「私は理解できない」って言いたい場合は "Andaivas ne" って感じかな?
エレーナ
そのとおりね。ちなみに色々と例外があるヴェフィス語だけども、これに関しては例外は無いわね。
フェリーサ
ふむふむ、リパライン語の "
niv " は
NAAN だけど、ヴェフィス語の "ne" も前から掛かったりすることはあるの?
エレーナ
古い文章だと "ne" の前置が行われている場合もあるのだけども、現代語の規範的には後置が一般的ね。このあたりはリパライン語よりも厳密に後置が規範的とされているといえるわ
2 。
フェリーサ
エレーナ
基本的にはリパライン語と同じように "?" を文末において尻上がりに発音すれば良いのだけども、"saile" という語が語末に付く場合もあるわ。ニュアンス的には変わらないから簡単ね。
フェリーサ
それじゃあ、「(あなたは)分かった?」は "Nai andaivaide (saile)?" って感じだよね?
エレーナ
正しいわね。ちなみにリパライン語と同じように疑問の
相位詞 に相当する単語は複数あるから、注意ね。例えば "saily" は "saile" の砕けた形として出てくるわ。
時制
エレーナ
ヴェフィス語の時制表現は、副詞と名詞によって表されるわ。色々な表現の仕方があるのだけど……取り敢えずは関わっている要素を下に示すわね。
単語
概要
voi
名詞。"vai "「過去」の指格形、主に過去時制を示す。
jeaioul
名詞。"jeaies "「終わり」の向格形、主に過去~完了を指す。
welles
副詞。動詞の後に付いて、未来時制を表す。
aichiet
副詞。動詞の後に付いて、未来時制を表すことがある。本来はリパライン語の "jol " に似た意志を表す。
anvai
動詞。var節を取って、(過去)完了を表す。
フェリーサ
エレーナ
まあ、標準現代リパライン語くらいに整理されているわけではないからね……取り敢えず、過去は voi を文につければいいわね。例文を示すわ。
Nen kailes voi. 彼/彼女/それが来た。
フェリーサ
次の jeaioul ってのは完了も表すの? 動詞変化に既に完了があったような気もするけど?
エレーナ
ヴェフィス語の時制付き完了の表現の仕方は少し複雑なのよね。下の表で詳しく示すわ。
種類
示す時相
jeaioul(jeaies)+現在形
現在完了
jeaioul+完了形 voi+完了形
過去完了
jeaioul+行動存在形
完了存続(理語の liaxe )
jeaioul+起動形
向完了開始(~し終えるために始める)
フェリーサ
なるほど……取り敢えず、完了が関わるんだなあって理解で良い感じ?
エレーナ
……あまり正確な理解では無いけれど、今のところはそれでいいわよ。過去完了の表現は voi を含めた二種類あることには注意してね。下にそれぞれの例文を示すわ。
Nen kailes jeaioul / jeaies. 彼/彼女/それが(今)来た。
Nen kailaidén jeaioul / voi. 彼/彼女/それは来た。
Nen kaileous jeaioul. 彼/彼女/それはもう来ている。
Nen kailameis jeaioul. 彼/彼女/それが来ようとし始めた。
フェリーサ
エレーナ
"welles" のほうは未来時制のみを表す副詞ね。"aichiet" のほうはむしろ「~をしよう(かな)」というくらいの意志を示す副詞なのだけど、時制的に未来を指すこともあるわね。
Nen kailes welles. 彼/彼女/それは来るだろう。
Nen kailes aiciet. 彼/彼女/それは来ようとしている。
フェリーサ
なるほどね、ここは簡単だ。でも "anvai" の「var節を取って……」ってのがよくわからないな。これはまだやってない文法項目だよね?
エレーナ
そうね、取り敢えずは "anvai" の後に "var 動詞..." ときて、(過去)完了を表すことがあるという認識で大丈夫よ。先で示したようにほとんどの過去は "voi" で表されて、過去完了は "jeaioul/voi+動詞の完了形" で表されるから、これは例外に当たるわ。
Nen veus var kailes an. 彼/彼女/それは来た。
フェリーサ
エレーナ
まあ、現代標準リパライン語でもそうであるように、これらの時相表現は多用されるわけじゃないから、あまり気にしなくてもいいかなとは思うわ。
フェリーサ
なぁるほど、リパライン語の "
edicy " が無限に出て来ないみたいに、そんなに気にしなくてもいいってわけね。
エレーナ
……まあ、そうだけど "edicy" なら「いせにほ」に既に出てるわよ(
S3#165 )。
フェリーサ
受動、使役
エレーナ
受動表現は "
vailies " を使うわ。行為を受ける人はF(主格)、行為はE(対格)か動詞原形、行為を行う人はle G(前置格)で表されるわ。
Nen vailiaisé valeéile le sets. 彼はあの人に縦入りされる3 。
フェリーサ
ふむふむ、動詞は原形でとるんだね。よく見たら "vailies" ってリパライン語の "
veles " に似てるね。
エレーナ
そうね、どちらも中期リパライン語の vel と es が合成語になったものに由来するわ。
フェリーサ
それじゃあ "
celes "に相当するものもあるのかな?
エレーナ
それが、何故か *cailies みたいな動詞は無いのよね……そもそも、ヴェフィス語に使役を表す表現は継承されてなかったみたいで、現代ヴェフィス語で使役表現を表す "jeaies+var 動詞" という表現は
パイグ語のtui2(与) の翻訳借用なの。ちなみに使役する者はle G(前置格)で、使役される者はF(主格)で表現されるわ。
Nen jeaiaisé var chanceunt le sets. 彼にあの人は知らされる。
フェリーサ
うーん、似てるような、似てないような……とにかく別の動詞を使うのはわかった。でもどこかでこの単語見たような……?
エレーナ
そうね、時制付き完了を表す単語だったわね。一人称使役文の現在完了を書くときは "jeaies jeaies" になっちゃうのよね……。まあ、リパライン語と同じようにヴェフィス語では使役文があまり使われないから、この形が実際に出てくることは殆どないんだけどね……
ムードの副詞
エレーナ
最後にリパライン語の
ムードの助動詞 にあたる副詞を紹介するわね。
副詞
意味
cieny
可能(~できる)
ficats
推測(~であろう)
filies
必然(~なはずだ)
jailen
一人称、二人称:希望(~したい) 三人称:様相・伝聞(~みたいだ)
laieché
推奨(~しましょう)
pelé
義務(~すべきだ)
フェリーサ
"
jailen " だけ人称による意味の違いがあるんだね?
エレーナ
そうね。三人称の希望表現は動詞の "jailen" を使って "jailen var 動詞"の形で表現するわ。それも含めて例文を示すわね。
Nen kailes cieny. 彼/彼女/それは来れる。
Nen kailes ficats. 彼/彼女/それは来るだろう。
Nen kailes filies. 彼/彼女/それは来るに違いない。
Fa kailes jailen. 私は来たい。
Nen kailes jailen. 彼/彼女/それは来るみたいだ。
Nen jailes var kaile. 彼/彼女/それは来たい。
Nen kailes laieché. 彼/彼女/それは来ましょう。
Nen kailes pelé. 彼/彼女/それは来るべきだ。
フェリーサ
"jailen" が出てきたときは主動詞が何なのかとか、その人称がどうなっているかに気をつけたほうが良さそうだね。
標準化されたリパライン語、ワイルドなヴェフィス語
エレーナ
ここまで動詞に関する表現を取り扱ってきたけど、どうだった?
フェリーサ
リパライン語と比べるとやっぱり整理されている感覚が無くて、色々と分かりづらいなとは思ったね。
エレーナ
ヴェフィス共和国 でもヴェフィス語の標準化は行われているんだけど、
大災害 以前の旧領土の正統後継者を自認するリネパリニア派とヴェフィス共和国がある父島が
PMCF から独立すべきとするカーキア派の間で論争になっちゃって、規範が複数あるのよね。この講座ではより標準的なものを取り上げているけど、実際には両者の規範の中では使われないようなものもあるの。
フェリーサ
政治問題は複雑だねえ。まあ、私達ユエスレオネ人には関係ないんだけど。
フェリーサ
なるほど、ところでシャリ姉はまだ帰ってこないのかな?
エレーナ
レトラだからそこまで遠くには行ってないはずだけど……
シャリヤ
来てから二時間が経過……やっと行列を超えることができたわね……
翠
席について、お冷を降ろして……と、あ、もうコールしてオッケーなんですね。じゃあ、
ヤサイマシマシカラメマシアブラスクナメニンニク で。
シャリヤ
シャリヤ
(今の呪文は一体……? 私の知らない言語かしら……それとも
ウェールフープ の詠唱……? いやいや、ラーメン屋で使うウェールフープって何よ……)
翠
シャリヤ? コールしないの? 店員さん、困ってるよ??
シャリヤ
え、あ、うっ……(なんか言わなきゃだけど、何を言えば………………はっ、そうだ。呪文と言えばあれがあるじゃない!)
シャリヤ
翠
シャリヤ
シャリヤ
シャリヤ
翠
それコールじゃなくて、バンミスやないかーい(適当)
シャリヤ
翠
シャリヤ
クッ……ボケに回るのは失敗だったようね。どうせいつもツッコミは私に回ってくるのよ……
練習問題
1.「あなたは分かりませんでしたか?」という文を訳してみましょう。
答え
動詞が完了形を取るとき、ヴェフィス語では人称代名詞が出てきます。なので、基礎となる「あなたは分かりました」は "Nai andaivaide." になります。これに否定を付けた「あなたは分かりませんでした」は副詞 "ne" を動詞に後置して "Nai andaivaide ne." になり、それの疑問表現は文末に "(saile)?" を置くと作れるため "Nai andaivaide ne (saile)?" が答えになります。
2.過去完了には二つの表現方法があります。"jeaioul" を使わない過去完了の作り方はどのようなものでしょうか?
答え
"jeaioul+動詞の完了形" は過去完了を表す表現の一つですが "voi+動詞の完了形" も使うことができます。
3.受動表現に使う動詞は "vailies" ですが、使役表現に使う動詞は何でしょうか?
答え
リパライン語の "celes" のようにCから始まる動詞ではないことに気をつけましょう。使役表現に使う動詞は "jeaies" です。また、この動詞は "vailies" のように動詞を直接取ることはできないため、注意が必要です。
まとめ
・否定は "ne" を動詞に後置して表す。
・疑問は "saile" を文末に置くか "?" を文末において表す。
・時制の表現には名詞・副詞を用いる。
・ "voi" は過去時制を示す "vai"「過去」の指格形である。
・ "jeaioul" は過去~完了を示す "jeaies"「終わり」の向格形である。
・ "welles" は未来時制を表す。動詞の後ろに置かれる副詞。
・ "aichiet" は未来時制を表すことがある。動詞の後ろに置かれる副詞。
・ "anvai" は動詞であり、var節を取って(過去)完了を表す。
・ "jeaioul" は動詞の相変化と伴って完了に関する表現を表す。
・過去完了には "jeaioul" と "voi" を用いる二つの表現がある。
・受動・使役には動詞 "vailies" と "jeaies var 動詞"という形を用いる。
・ムードの副詞のうち "jailen" は人称によって意味が変わるので注意が必要。
・シャリヤちゃんは無事ソノママで注文できたようです。
初出は分からないが、今回参照したのはJ-castニュースが2016年に取り上げた記事 。なお、ラーメン二郎仙台店は2018年にtwitterで「体調が悪い時は消化の良いものを食べてお家で寝てた方が早く治ると思います!」 と述べている。 ↩
古い文章における単純命令は、リパライン語と同じように動詞を文頭に置くだけでも実現されていたので、"Andaivaide ne"のような単純な否定文において命令文として誤認されることを防ぐために "ne" が前に出ていたと考えられている。 ↩
「縦入り」とはケートニアーが上空から列に割り込むこと。z軸方向の割り込み。 ↩
古い順のコメント(2)
jeaioulのよくばり母音字連続セットと縦入りの解説に笑ってしまいました…!
読んでくれて、ありがとうです!
発音は[(d)ʒəɛuw]みたいな感じなんですけど、確かにそのまま見ると、「これでもか!」みたいな感じの母音字連続ですねw
縦入りに関しては、実は神奈川の方言で「割り込み」のことを「横入り」と言うので、和訳はそれに由来してたりします。
普通の人間は空飛べないけど、ケートニアーなら……(?)