coi rodo mi'e .slaimsan.
毎度おなじみスライムさんです。人工言語コンペの講評を書いていきます。回を重ねる毎に参加人数が増えておりまして、今回は投票対象としては14作品でしたが、その他対象外の作品も3作品ありまして、全部で17作品となっております。そろそろ講評を書くのも大変な規模になってきましたね。なので今回も前後編に分けます。
01: Red_camellia52さんの niemai語
音を拾う生体ブラックホールが突如として現れて音声での会話ができなくなり、踊りで会話するようになったという国の言語です。場所はリッスンブールですね。非音声系の言語です。研究があまり進んでいない分野なので注目しています。
上半身、下半身の各部位をどの方向に動かすかが文字と対応しているとのことです。では例文に出てきている "tesma" という単語を踊りで表現してみましょう。
右肘を前に振って "t"
右足を右に振って "e"
右手を左に振って "s"
左肘を左に振って "m"
右手を前に振って "a"
…パソコンの前でクネクネしてました。難っ。これは習得するのがなかなかに大変そうです。
さて、動作を使うタイプの言語なので、手話と比較して考えたい部分があります。この言語では左右の区別をして「音素」を割り当てているのですが、手話では右手、左手どちらで動作をやっても意味は変わらないです。利き手の方で動作を行うことが多いようです。動作系の人工言語は研究が少ないので確定的なことは言えないのですが、手話の例を見るに左右の区別はない方が実用的なのかなと思いました。
02: シラミィさんの 雷の街
雷が多発している環境の言語を、対話文の中で説明している作品です。言い回しの中に雷関係の表現があるという設定を考えていただきました。「雷を食べる」がその意味になるのは割と理解しやすいですが、「雷で遊ぶ」がその意味になるのは、文化的背景が絡んでくる表現だなと思いました。
人工言語を作り始めると、まず発音や文法に目が行ってしまうのですが、こういう表現の部分にも注目して欲しいなという思いがあります。独自の表現があると言語のリアリティが高まると思っています。
03: slaimsanの 作品
自分の作品なので講評ではなく解説になります。まずは、いつもの構想段階のメモを表示します。
ケッペン区分があまり分からないので、どの区分にするかはサイコロで決めました。コンペは時間との勝負の面があるので、あまり詳しくない分野については「エイヤ!」で決めてしまうのも手だと思っています。
ただ今回は気候的には全然厳しくない所を引き当ててしまったので、そこからどうやって今回のお題に合わせていくかを考えるところが難しかったです。(その分、つじつま合わせに創造性を発揮することができたかなと思います。)
また、言語の特性も同じようにランダムに決定してみました。モユネ分類のタロットカードを作りまして、ランダムに3枚引いてその特性を反映させようと思いました。でも、引いたタグが普通のタグだったので、あまり特徴は出なかったです。
04: せんちゃさんの Aiaoaの世界
雷が多発している地域の言語です。(2つ目。なんとネタ被りが発生しました。エネルギーで第一に思いつくのが電気で、直接エネルギーを取ろうと思うと雷になってしまうということですかね。)
爆音が鳴っているため音が通じにくく、口の形で会話するという言語です。口の形だけなので、母音のみとのことです。母音の無い言語は、過去に私も検討したことがあります。ただ、あくまで言語の形式的な部分のみで、なぜ母音のみなのかの背景までは考えたことがなかったです。なのでこの設定は上手いなと思いました。また、「口の形」が重要で音声は使っていないので、手話などと同じ「動作で伝える」タイプの言語とも言えます。これも盲点でした。個人的にはポイントが高かった作品となります。
05: 美夢 (bí-bāng)さんの ロディラウ共和国
現実世界における架空の国家と歴史を作ってそこの言語を考えたというものになります。(この手の架空世界の作成の手法に名前付いていないのでしょうか。分類して命名してみたいですね。)その架空国家を紹介する文章スタイルの作品となっております。『地球の歩き方』的な文章でしょうか。そのため、現地の文化の説明や現地で使えるフレーズ、歌もあったりで大分充実した説明となっております。現地で使えるフレーズは、今後もコンペで使える手法なのではないかと思います。こういう挨拶的なフレーズは言語の雰囲気を手っ取り早く伝えられるので、良いと思います。
後は、食べられる魚と食べられない魚の区別がある辺りが、文化的な背景を感じられるところで良いなと思います。
06: AmeAgari_風斗さんの Daltas語
架空の元素を考えて架空の化学反応のある世界を構築していただきました。化学反応によってプラスチックのような物質や伝導性のある物質が作られて、電子機器の作成がされるようになり産業革命が起きたという設定のようです。
既に別の設定を考えていて、ただルール的に流用してよいか分からなかったため新たに世界を構築したとのことですが、ルール的には流用するのは問題ないです。自然言語から派生させてアポステリオリに言語を構築しても良いので、既に作っているものを利用しても問題はありません。
言語の方は、割と素直な感じの構成に見えます。時制は動詞の前に要素を付けて、法を表す部分は動詞の後ろに付ける形にしていて上手く分散されているなと思います。例文には見当たらないのですが、時制と法の組み合わせも理論的にはできるのではないかと思いました。文法要素を付ける位置を前後に分散させるのは、自分の言語を作る時にも応用できそうなので、参考にさせていただきます。
07: U川さんの ペルベの言語
『小説家になろう』からの投稿です。このプラットフォームを利用しての投稿は初めてです。空間の繋がりがめちゃくちゃになっている異世界という設定です。
言語としては、日本語から変化した言語という設定です。このタイプの言語は『星界の紋章』のアーヴ語があります。アーヴ語は日本語から変化してヨーロッパ語のような変化をするようになった形ですが、ペルベ語は元々異世界に居た原住民の言葉と混ざっているようで、見るからに日本語の語源が分かるものとそうでない語彙が混じるピジン言語のような雰囲気になっています。
個人的に注目したのは、名詞に順序と性を表す接辞を付けるシステムです。右手が男性の1つ目、左手が女性の2つ目、右足が男性の2つ目、左足が女性の2つ目といった具合で接辞を付けるというものです。この仕組みは応用ができそうな感じがしています。例えば右手の親指から男性の1つ目の指、男性の2つ目の指…と命名することができるので、順序構造の入っているものに一気に命名することができ、生産性が高いのではないかと思います。順序性がないものでも、文化的に順序を決めてあげれば、そのシリーズの単語はひとまとめにして覚えられるようになるのではと思います。研究する価値がありそうなシステムだと思いました。
08: 矛盾と混沌さんの كباش وكانت
アラビア語圏の砂漠の真ん中に穴があり、そこに住んでいる人の言語という設定です。アラビア語などの近隣の言語とは系統が違うとのことです。近隣がアラビア文字を使用するので、接触した人が記録を残したときにアラビア文字で記述したので母音が不明確であったりで面白いです。
人称変化は接周辞の様な形になっています。すなわち語幹の前後に接辞が付いて人称変化となる形です。接周辞は私もそんなに研究できていないので、参考にしようと思います。また接辞の付け方のパターンも三人称単数が無標識であったりで、言語としてありそうな形になっています。このまま発展させていけば、大分自然な言語として成立しそうな気がします。
09: 夕向奏さんの ヴァラール語
架空の星で架空の気候区分を作っている世界になります。地球よりも大分寒いようで、オオカミのような見た目の人が住んでいるとのことです。魔法のようなことができる物質があるのですが、生物の魂を使用して工業化したりしていて、なかなかにディストピア感が溢れております。
文法の方で注目したのは、「詛呪法」という法です。詳しい説明はないので詳細は不明ですが、名前からして相手を呪う時に使うのではないかと思われます。こういう案は今まで思いつかなかったですが、魔法があるような世界であればあり得る法になるので、良いなと思いました。
文字と音素の対応の部分が表になっておらず、構造化した方が良いかなと思いました。発音の規則ももう少し構造化して記載すると見やすいかなと思いました。
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